絵:千尋様 文:フロ

 

 

 

「清四郎、顔色悪いよ?」

「・・・・おまえのように、気楽には過ごせないもんでね。」

 

彼女の言葉が神経に障った。おそらくは、心から案じてくれた言葉が。

余裕のなさを、指摘されたようで。

あの時と同じ過ちを犯しかねない、自分を。

 

悠理は頬を膨らませ、涙目。

さすがに気が咎めて、声をかけようとしたが、そんな僕を拒絶するように、彼女はベッドにもぐりこんで布団を頭から被った。

 

「・・・悠理?」

応えはない。

ネクタイを緩めつつ、小さく息を吐く。

悪いのは自分だとわかっていたが。

累積した疲労と、彼女の子供っぽい拗ね方にため息が漏れた。

 

しばらくして覗き込むと、不貞寝してしまったらしい彼女はしかめっ面のまま寝息を立てていた。

 

「・・・ごめん。」

遅すぎる謝罪の言葉。

 

何度も同じ過ちを、繰り返し続けてる。

それでも、あの頃とは違い、眠る彼女の顔に安らぎを見出した。

 

余裕のない優しさを忘れた男のそばでも、天使が眠る。

 

それが、あの頃の僕にはなかった、大きな幸福。

それが幸福なのだと、気づくことの出来た幸運。

 

過ちは正せばいい。

二度と、見失わない。

 

翌朝、目覚めて最初に彼女へかける謝罪の言葉を考えながら、僕はベッドの空いた空間にもぐりこんだ。

引き寄せ抱きしめた温もりに、胸の詰まるほどの愛しさを感じながら。

 

 

 

剣菱家の事情のちょっと未来。清四郎くんはリベンジ中。

 

 

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