温泉欲情

BY カパパ様

旅行の好きな有閑倶楽部だが、今回は海に面した温泉に来ている。

露天風呂は、まるで海とつながっているかのような錯覚を与えてくれる。

雄大だ。

地平線まで、見渡す限りの海と空。朝の光を反射してきらめいている。

ところどころに見える岩々も風情がある。

 

(爽快、ですねえ・・・)

 

未成年のくせに、などという野暮はご法度だ。

昨夜の飲み会では珍しく少し酔ってしまった。

いつも朝の早い野梨子も、まだ眠っているだろう。

 

この旅館では、「真のくつろぎ」を客に提供するため、一日に数組しか客を取らない。

僕たちを除く客は昼頃に到着する見込みだと聞いたから、まだあと数時間は独占状態だ。

 

今この時、露天風呂は僕の独り占め、というわけだ。

 

タオル一枚で、外に出る興奮。

早朝の空気は冷えるが、湯に浸かっているとかえってその冷たさが心地よい。

この海も空も、見える景色すべてが僕のものだという気になってくる。

贅沢な高揚感だ。

あいつらが眠っていてくれて良かった。

今だけは魅録にも美童にも邪魔されたくない。

 

タオルを肩にかけ、仁王立ちする。

日本海に向かい深呼吸。

なんて気持ちが良いんだろう・・・!!

 

この瞬間、僕は「菊正宗清四郎」ではなく、ただの一個の人間なのだ。

狩猟と採集で食を賄っていた頃の原始の記憶が、身体にうずく。

服も、肩書きも、何もない。

 

この絶対的な開放感。

「誰かに見られるかもしれない」というほんの少しのスリル。そのスリルは羞恥心であり、かつ興奮を与えてくれるスパイスでもある。

 

(ふぅ・・・たまらないな・・・)

 

快感だ。

恍惚として、大自然に僕の身体を拝ませる。神にも見てもらいたいくらいだ。

 

爽快な気分のまま、海に背を向ける。

そろそろ部屋に戻ろうか。

肩にかけたタオルを右手で取る。

形式上だが一応、股間にあてようとしたところで朝日の眩しさに目を細める。

 

(今日も良い天気になりそうですね・・・)

 

悠理が喜ぶだろう。

「明日は何して遊ぼっか♪テニスかなっ、乗馬かなっ、どうしましょ♪」

妙な節をつけて歌っていた彼女を思い出すと、どうも口が綻ぶ。

驚天動地のバカだが、あの表情と単純な思考回路に、ほんの少しだけ癒されていると思えなくもない。

 

テニスも乗馬も、美童の得意なスポーツだ。いつになく美童が

「乗馬なら負ける気はしないね、僕と競争する?」

なんて強気で勝負をふっかけていた。

テニスはともかく、乗馬は悠理の方が不利だろう。

何しろあいつは自分自身が「ドーブツ」なのだ。天下無敵の運動神経で何とかなると思っているのだろうが、やはり経験の差は大きいだろう。

 

(馬じゃなくて僕に乗ればいいものを・・・)

 

 

・・・・はっ!

どうした、僕?

今、何を思った!?

(僕だったら美童なんかメじゃないぞ!)と考えなかったか?

いや確かに僕だって乗馬をこなせるが、問題はそこではない。

馬じゃなくて僕に乗れば・・・!?僕が「ドーブツ」になる・・・!?

 

 

ふっ、どうやらまだ昨日の酔いが残っているらしい。

僕らしくもないな。

まあ車の運転は魅録だし、朝食を摂れば平気だろう。

・・・「原始の記憶が身体にうずく」なんて詩的だと思ったが、それこそ僕ではなく悠理のことじゃないか。

バカで単純で食欲しか頭にない野生児。そして・・・・・友達思いの泣き虫なお嬢様。

 

(・・・可愛いんですよねえ・・・)

 

 

・・・はっ!

誰が可愛いだって!?

・・・・どうも思ったよりも酔っていたらしいな。

 

 

部屋に戻ることにする。

先ほどの考え事の間、ずっとタオルは股間ではなく中途半端な位置だった。

 

前を向いた僕が見たものは・・・寒さで全身が鳥肌になっている魅録だった。

顔色は赤く、表情は暗い。暗いだけならまだしも、僕を汚物でも見るかのように眺め、そのまま視線が固定されている。

固定されている先は・・・僕が男性である証。

健康な青少年であれば、朝にそれが屹立するのは極めて自然な現象だ。男性の生理であるから、意思で何とかすることの出来ない現象である。どんなに理性のある人間でも、それを抑える事はできない。・・・たとえ僕でも。

 

さり気なくタオルで隠し、彼に挨拶をする。

ずっと見られていたのだろうか。僕が大自然に裸体で向き合っている様も、自分でも理解に苦しむ思考を取っていた事も・・・。

 

「おはようございます。魅録も朝風呂ですか、珍しいですな。」

「お、おう・・・。清四郎も朝から上機嫌じゃねえか・・・。じゃ、じゃあっオレもう行くから・・!」

 

脱兎のごとく逃げ出した彼のピンク頭が揺れる。

魅録はまだ温泉に浸かっていない。

「酔いが一気に醒めました」といわんばかりにダッシュしてゆく彼は、短距離走の高校記録を塗り替えられそうな勢いだった。

 

 

・・・魅録はその日から、明らかに僕と距離を置くようになった・・・

 

 

 

END?


フロ様から頂いた萌え絵で一気に妄想が広がり、気がついたらこんなんが出来ていました。清四郎、素っ裸、露天風呂・・・と来れば仁王立ちしかありませんね。どういう訳か清四郎にはプチ(?)変態でいてほしい私。これも歪んだ愛の形でしょうか?いえ、ある意味純愛ですな。ひぃっ、石が飛んできそう!!

  

フロです。萌え絵ってナニ?ん?清四郎のすっぱ仁王立ち絵?

そんな発禁物、描くわけないじゃありませんか〜!ははははは・・・(白々)

産業廃棄物から、こんなSSをいただけるたぁ、私は幸せものです!

このSSの続きを読みたい方は、煩悩アミーゴへGO!

 

 

 

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