金色の日差しが、トラックに影を作る。ゆっくりと、夕暮れが空の色を変えてゆく。
放課後の校庭を一人走る彼女。
抑えきれない感嘆の言葉。 素直な、気持ちだったのだ。
汚れた体操着のまま地団太踏む彼女は、リレーでの完敗がよほど悔しかったらしい。 僕は笑顔で手を振って答えた。
ま、悠理の馬鹿は死ぬまで治りそうにないから、卒業しても楽しませてくれそうだ。 目を細めたのは、眩しかったから。 夕日が――――悠理が。
「笑ってられるのも、いまのうちだ〜!」 悠理の怒鳴り声も、耳に心地良い。真横でがなりたてられるよりは。
グランド上の悠理と、校舎の中の僕。 声は聴こえるものの、隔たった距離。 埃まみれのグラウンドで、負けず嫌いの馬鹿の相手をする気はないけれど。 今あの単細胞の頭の中を占めているのは、僕のことだ。
ま、どんなことでも、悠理に負けてやる気はない。それこそ、初めて出逢った時以来。
夕刻の風が窓から廊下を吹き抜ける。砂埃を避けて、僕は悠理に背を向けて歩き出した。 悠理の視線が背中に突き刺さる。僕は、ほくそ笑んだ。
毎度おなじみ、優越感。心地良い、この距離感。
そんな想いがどこから来るのか、まだ認める気はないのだけれど。
2006.7.25 改稿 タイトルはもちろんお歌「初恋」からでーすv ん?若い方は知らない? 携帯操作の練習でポチポチ外出中に打った短文を、改稿いたしました。ですので、初出は携帯BBS。 これのせいで、パケ代定額に変えました。(笑) ネット環境にない帰省中など、またチャレンジしてみます。 |