「ハロウィンの奇跡」のちょびっと続き♪




去年までは楽しかったはずの、ハロウィン。
それが、やっかいな霊感体質のせいで、恐怖の一夜に変わってしまった。
お盆のときのように、本物のオバケがやって来たらどうしよう・・・

――――清四郎、今夜は一緒にいてくれ〜〜!

と、たしかに言ったのはあたいだけれど。
あれは、言葉のアヤというか、恐怖のあまり、というか。

「・・・重くない?もちっと、離れてくれてもいいよ?」
そんな、なにも、ずっと膝に乗っけてくれなくても。
あたいの部屋のソファは大きいんだから、十分隣に座ることができるのに。
一晩中、こうしているつもりか?
そりゃ、清四郎のセーターをつかんで離せないのもあたいだけど。

「嫌ですか?でも、まだ震えてますよ?」
清四郎はあたいの顔を覗き込む。
膝の上のあたいとはいつもと違って視線の高さが同じ。
強い瞳に真っ直ぐ見つめられ、あたいはなぜだか動けない。
回された腕はゆるやかなのに。

「・・・だって、なんか・・・」
近すぎる距離。清四郎の匂いに包まれ。ぬくもりが服越しに肌に伝わる。
トクトク聴こえるのは心臓の音。
気づけば体の震えが止まっていた。

「たまには、彼氏らしいことをさせてください」
「ふぇっ?!」
あれ?そーいや、彼氏だったっけ?


――――悠理、付き合ってもらいますよ!
と、有無を言わさぬ勢いでたしかに告げられたけれど。

「脳足りんは僕の頭脳でフォローできても、霊感体質ばかりは時にこちらも命がけなんですからね」
む・・・”ノータリン”を漢字で発音しただろ、おまえ!
いつだって、清四郎はこの調子で罵詈雑言。甘い雰囲気なんてナシ。

「このぐらいの役得は、認めて欲しいもんですな」
清四郎はそう言って、腰に回した腕に力を込めた。
ぐ、と近づく顔に、あたいはのけぞる。
なんだよ、その尖らせた唇は!タコか、おまえはっ!
反射的に逃げようとしたあたいを制するように、清四郎は叫んだ。

「悠理、トリック オア トリート!」

・・・・・・へ?
いきなりの台詞にあたいの目は点。

「お菓子をくれなきゃ、イタズラするぞ!」
清四郎はそう言ってニヤリと笑う。
そのまま、硬直したあたいの頬を、かぷりと齧った。



「お、お菓子じゃねーっ!」
「でも、甘いですよ?」

オチはそれかいっ!


イタズラってなに?と訊いてみたい気がしたけれど、
本能がヤブヘビだと告げたので、やめた。

気づけば、あれほど怖かったハロウィンの夜が怖くなくなっていた。
あの台詞もね。

トリック オア トリート!




(2006.10.25)


web拍手にハロウィン限定でアップした小ネタです。「ハロウィンの奇跡」の一年ぶりの続編。続きはまた来年?(爆)

 

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