「・・・僕は、おまえに恋しています」
悠理にそう告げる清四郎の声を、俺は背中で聞いていた。
トライアングル―恋してるのかも知れない―SIDE:M
振り返らなくてもわかる。 悠理は、あいつから目を逸らしている。きっと、顔も上げられず。 臆病で、愚かな女。 いつでも清四郎のことを、泣き出しそうな目で見ているくせに。 自分の恋から、目を逸らし続けてきた。
そんな彼女の気持ちに気づかず。
振り返らなくてもわかる。 清四郎は、悲壮な決意で想いを告げる。哀しげな目をして。 愚図で、愚かな男。 たとえ叶わなくても、諦めることなんてできやしないくせに。 高いプライドが邪魔をしたのか。 自分で自分に目隠しをし続けた。 いつもは気に障るほど自信家なのに。 恋に不器用な、鈍感男。
俺も、馬鹿だ。
俺がやつらの恋に気づいたのは、もちろん偶然じゃない。 いつの間にか、見つめていた。 一挙手一投足、目が離せなかった。 その目に誰がいつも映っているのか。 だから、すぐに気がついた。 隠そうとしている想いまでも。
「あたい、あたい・・・」 悠理の嗚咽。 目を逸らし続けてきた押し殺し続けてきた自分の気持ちに直面し、震える声。 悠理は、きっと言葉では伝えられない。 そんな器用な女じゃない。
「ごめん、おまえを困らせるつもりじゃない。ただ、伝えたかったんだ」 清四郎の動揺は、いつもの敬語でないからわかる。 奴には悠理の涙の意味などきっとわからない。 恋には不器用な男だから。
ドン、と鈍い音。 「悠理?!」 清四郎の驚く声。 悠理の嗚咽がくぐもった音に変わる。
振り返らなくてもわかる。 きっと、悠理が清四郎に抱きついたのだ。 奴の胸に顔を押し付け泣きじゃくる悠理の姿は、見なくてもわかった。 子供みたいに、真っ直ぐに。 あいつは、そういう女だから。
二人に背を向け大股で歩く。 仲間達とすれ違う。 可憐と野梨子は、俺を同情に満ちた表情で見送った。 俺の失恋は明白だから。
美童は、少し複雑な表情をしていた。 同情はたしかに、青い目にも浮かんでいたのだけど。 きっと、美童にはお見通しだったのだろう。 奴らの恋も、俺の恋も。
すれ違いざま。 俺は、美童に口の端で笑みを作った。 上手く笑えたとは思えないけれど。 男の友情。 奴は、わかっているよ、と睫毛を伏せた。
俺は、馬鹿だ。
俺が自分の想いに気づいたのは、奴らの恋を知ってから。 いつの間にか、惹かれていた。 これが、恋だなんて、気づかなかった。
友情だと思ってたんだ。
気づいたときに、破れた恋。 あいつとどうにかなりたかったわけじゃない。 叶うはずもない、恋なのだ。
それでも、告白は本心。 ただ、溢れ出した想いをぶつけちまっただけ。 そうしなければ、前に進めないから。
『宣戦布告』 ――――なんて。
当の本人には、ライバルだなんて思われているけどな。
end
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ごめん、ミロちん・・・そう。実はこんな話だったんです。ずっとやってみたかった、魅→清ネタでした〜(汗)
アミーゴ(BLサイト)に入れるほどじゃ、ないでしょ?え?ダメ?