だりあ編


「あっ・・・んんんー・・・」

ドアを隔てても聞こえる悩ましい声に、清四郎は耐え切れずに

ドアを開けた。

眉間にしわを寄せ上気した顔の悠理が、目を見開いて叫んだ。

「なっ何すんだよ?入るなって言っただろ?見るなって!」

顔を真っ赤にした悠理が捲くし立てた。

 

「どうして・・・一人でしようとするんですか・・・」

清四郎は眉間にしわを寄せる。

「だって・・・恥ずかしいじゃないか!」

「お前がこういうことに興味があるとは思いませんでした」

「い、いいだろ、別に」

「自分でしなくても、僕がしてあげますよ」

「は、初めてだし・・・」

「だったら尚更、僕がした方がいいでしょう?」

悠理はもじもじとしながら俯いた。

 

「こんなものを見せられては我慢できません」

悠理が右手に持ったモノを清四郎が奪う。

「あっ、だめだって」

「大丈夫。僕の方が絶対にうまいから、安心してくれていい」

「で、でも・・・」

「ほら、もっと開いて」

「やっぱ、やだぁ」

「大丈夫だから、力を抜いて」

 

「ここか?」

「うん。あ、でももうちょっと左」

「ここならいいか?」

「ん・・・」

 

「あ・・・すごい。すごいよ、清四郎」

「ほら、もっと開いて」

「ん。清四郎の言ったとおりだ。自分でするよりもいい・・・」

悠理はうっとりと目を細めた。

 

 

 

 

「よし、できたぞ!」

水色のネイルカラーを手に持った清四郎が、悠理の爪を満足げ

に見つめる。

「やっぱすごいな。お前って、何でもできるんだぁ」

「当たり前です」

「だって、ネイルアートだぞ?」

「可憐が部室でやってるのを、よく見てますからね」

「ふうん。あたいもやってみたかったんだけど、やっぱ難しい

よなぁ」

「そうですね。お前の場合、足の指をきちんと開かないから隣

の爪とくっついてしまうんですよ。まあ、それ以前にラメパウ

ダーはばら撒くし、ラインストーンの類も転がってましたが」

「だって、こんな細かい作業、めんどくさいじゃないか!」

悠理はぷーっと頬を膨らませた。

「じゃあ、次からは僕がやりますよ」

清四郎は破顔一笑。

 

以来、悠理の爪に凝った細工のネイルアートを施す清四郎がい

ましたとさ。

 

 


チャンチャン♪


次、行ってみよー!
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こりゃダメだ、脱出!