とある、うららかな春の朝。 同居中のふたりが、和やかに朝食を食べている。 「ああそうだ。もうアレが無くなりそうだから、コンビニで買ってきますね。」 アレ?一瞬考えて、悠理はぽんと手を打つ。 「ああ、アレか。あたい、コンビニのはヤだな。ちゃんと薬局で買ってきてよ。」 「薬局は遠いでしょ。コンビニので充分じゃないですか。」 「ええ〜。だって、コンビニに売ってあるの、ゴムが擦れて痛いんだもん。薬局に売ってあるヤツのほうが痛くなくてイイよぉ。」 「薬局のは僕にはキツイんですよ。伸びも悪いですし、嵌めるのに面倒だから嫌です。」 「やだ。お前が何と言おうと、あたいは痛くないのがイイ!」 「じゃあ、お前が買ってきてくださいよ。どうせ、暇でしょ?」 「やだよ!お前が買ってこいよ!」 「無いと困るのはお前のほうでしょう。」 「お前だって、無いと駄目じゃないか。この間だって、寸前になって無いのに気づいて、青くなってたじゃん。」 「あれは悠理が悪いんですよ。悠理がふざけて破いたせいで無くなったんじゃないですか。」 「だって、どこまで伸びるか試したかったんだもん。アレって、思ったより伸びるんだな。」 「アレは身に付けるものですよ。遊んで破くなんて、もったいないでしょうが。お陰であの後は大変だったんですよ。気がつかないうちに漏れて垂れないか心配で・・・」 「それは謝るけどさあ。やっぱ、アレは必要だよ。だって、最近は特にスゴいじゃん。あたい、もう辛くて・・・」 「まあ、確かにスゴイのは認めます。僕もここのところ身体がだるくて、仕事になかなか集中できないんですよね。」 「じゃ、やっぱりお前が買ってこいよ。」 「妥協案として、二人で一緒に行くのはどうです?」 「そうだな。一緒に行こうか。やっぱり予備があったほうが安心だし・・・」 「今度は遊んで破かないでくださいね。アレは二人にとって必需品ですから。」 「まあな。アレ、やっぱり必要だもんな。」 二人が言う、アレ、とは? 「ふえっくしょん!!」 悠理が盛大なくしゃみをする。 清四郎、ティッシュボックスを差し出しながら、溜息混じりに呟く。 「本当に、嫌な季節ですよね。マスク無しじゃ外も歩けないんですから。」 そう。二人は花粉症。 今年のスギ花粉飛散量は例年の20倍。 使い捨てマスクが何枚あっても足りないのだ。 マスクが無いと鼻水が漏れて垂れる清四郎。 耳に掛けるマスクのゴムの柔らかさに拘る悠理。 そんな二人は、今日もお揃いのマスクをして、仲良く出かけるのであった・・・ つか、マスクくらい、実家から貰ってこいよ!清四郎!! |