フロ編




どういう手段を使ったのか、本当に5分で飛んできた魅録。
ほう酸ダンゴと知って、脱力する魅録に苦笑する清四郎。
「僕を危険人物あつかいしないで下さいよ」
「・・・イロイロ知ってるからなー、おまえの悪行は」
「失礼な」
「そう言えば、最近はあやしい研究だの薬品いじりだのやってないのか?」
このふたりの新居にはそういうスペースがありそうにない。
「悠理のいるところで、そんな危ないマネできますか。第一、時間もありませんし ね」
「そうだよな、清四郎って、睡眠時間あたいの半分くらいじゃねー?」
「僕だって夜はもっと早く寝たいんですよ。おまえが寝かせてくれないから」
「・・・・だって」
苦笑しながら悠理の頭を小突く清四郎。赤面してモジモジする悠理。
「・・・だって・・・好きなんだもん」
悠理はペタンと清四郎の膝になつく。
「以前では考えられなかったですね。ちょっと教えたら、悠理はすっかり夢中になっ て」
清四郎は悠理の髪を撫でている。
なんだか密着度の増したふたりの様子に、魅録は首を傾げた。
「・・・なに?ゲームにでも嵌まってんのか?」
このふたりが”同居人”以上になってくれるならもろ手を挙げて祝福するが。
「そうだったら、僕も先に寝てるんですけどね。まだ放っておけません。寝てる間に 勝手にいじられて僕の 大事なモノをエッチなことに使いかねない」
「エ、エッチなことって、なんだよぉ!」
「おや、昨夜のことを忘れたんですか?悠理がまさか、あんなに大胆なことをすると はね。ウブな顔をして」
「う、うるさいやいっ」
悠理は真っ赤になってイヤイヤと首を振った。
「・・・・・・エッチ・・・・・・・・」
魅録はよもやまさかと耳を疑った。



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悠理の指が清四郎の思いもつかない場所に触れた。
「・・・あ、悠理、いきなり何するんですか」
「ナニって・・・こうすれば良くなるって教えてくれたのは清四郎じゃないか」
「こんないきなり・・・手順ってものがあるでしょう」
「することは一緒だろ」
悠理の指先は容赦なく強くその場所をたどり、押された。
まだ、ぎこちない動き。
それでも清四郎のモノは彼女に反応した。
「あああ、僕のは繊細なんだ、そんないじりかたをするな!」
「・・・壊れる?」
「あっ、無理やり終わらせるな、まだ・・・」
「あ・・・うん、まだイケる?」
小さな掌が包み込むそれを、弄ぶように動かす悠理。
じょじょに下に降ろされる視線。
撫でるようにうごめく指。
次々に変化する彼女の興味に、清四郎が追いつけなくなる。
「・・・もう固まっちゃった?ここ?こうすればいい?」
「あ、ダメだ、悠理!そ。そこは・・・!」
清四郎が焦った声を出す。
しかし、悠理の指は思考より先に動く。
彼女は禁じられたその場所に侵入してしまった。
新しい、世界の窓を。
「やだっ・・・エ、エッチだよぉ」
「どの口でそんなことを。おまえが無理やり・・・」
「お、男の体って、こんなふうになってんだ・・・」
悠理の顔が赤く染まる。いやいやと首を振る。
清四郎の喉がごくりと鳴った。
「もういいだろう、悠理、さぁ・・・」

清四郎のその声を合図に。
間もなく、部屋の明かりが消えた。
夜は静かに、ふたりを包み込む――――。



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「・・・僕は以前から表明しているように、ゲイの気はまったくないんです。それを ・・・」
赤面して悠理を睨む清四郎に、魅録は目を白黒させる。
「大体ね、悠理にはまだ入りきらないんですよ。それなのに無理にしようとするか ら」
「入りきらないって。あんなの慣れだって言ったのは清四郎だろ」
「おまえは、ひとより狭いから。脳内キャパが。僕が変態だと思われるだろう」
「金は払うよ!」
「金の問題じゃない!」
まだ膝枕をしたまま言い争い出したふたりに、魅録はいやいや割って入った。
「−−−−いまひとつ話が見えないんだが?悠理は何に嵌まってるって?」
「「ネットサーフィン」」
そんなこったろうと思っていたものの魅録はガクリと脱力した。
「・・・なんだ、そんなことか」
「そんなこと、とは言いますがね。昨夜なんて、有料アダルトサイトまで覗くんです よ。しかもホモ!僕のIPアドレスで!」
清四郎は憤慨している。
「ちょっとした間違いじゃないか〜」
「すぐに強制終了しまくるし、目を離すと僕のPCを壊しかねない」
「わかったよぉ。自分の買いに行くよ。そうだ、魅録、今日秋葉原につきあってよ」
「い、いいけど」
清四郎の膝から顔をあげて、魅録に向き直りきゃいきゃい喜ぶ悠理の頭を、清四郎は ぐり、と自分の方に向けた。
「ダメです!」
「な、なんで?」
清四郎は、こほん、と咳きついた。
「・・・買いに行くなら僕と行きましょう。どうせ接続も設定も今後僕がするんだか ら」


魅録は無言で席を立った。
「じゃ、オレはもう帰るわ」
やってらんねーよ、と魅録がつぶやいたかどうかは知らない――――。



チャンチャン♪


次、行ってみよー!
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こりゃダメだ、脱出!