清四郎くんのためになるウンチク講座その後 ~ロッテ優勝(・・・)記念編~
TVでアナウンサーが絶叫するその時、ライトスタンドで呆然と佇む清四郎と悠理の姿があった。 ぼこぼこと投げ入れられるメガホンを前にして、清四郎は力なく、 「帰りましょうか…」 と呟いた。
人の波に揉まれ、梅田に着いた時には、11時をまわっていたろうか。 悠理は非常に空腹だったが、それを口に出せる状況ではない。 それほど、清四郎の落ち込みは見るに耐えられないものだった。
リッツカールトンのスィートに戻った二人は、ベッドに腰掛けた。 「…悠理、お腹空いたでしょ。なにか、ルームサービスでも取ってください」 「うん…おまえは何食べる?」 「…僕はいりません…」 清四郎は力なく呟くと、バスルームに消えた。
シャワーを浴びてさっぱりした清四郎は少し元気が出た。 悠理はたくさんの食べ物が並ぶワゴンの前で、じっと待っていた。 「食べなかったんですか?」 「お前と食べようと思って…」 清四郎は微笑むと、悠理とともに少しのサラダとビールを口にした。
悠理がバスルームから出ると、清四郎がバスローブ姿のままでぼんやりとTVを眺めていた。 バレンタイン監督の胴上げが映し出されている。 「せ、清四郎」 悠理は、思わず清四郎に抱きつこうと、一歩足を前に出した。 その時…
「なんで四連敗なんやねん」 「岡田のボケ。もう少し、作戦にいうもんがあるやろが」 「ロッテのくそボケガキがナメ腐りやがって」 「おまえら草野球か!毎試合舞試合、10点も取られやがって」 「セリーグチャンピオンの恥を知れ、カス!」 と、どっかのおっちゃんのような大阪弁で口汚く罵り始めた。
「せ、清四郎?」 悠理の言葉に振り向いた清四郎は… 目が据わっていた。 野生の勘で危険を察知した悠理は、一歩、後ろへ下がった。 清四郎は、にっこりといつもの知的な笑みを浮かべると、 「さあ、悠理。夜の日本シリーズはこれから開幕ですよ。僕はタイガースと違って、勝ちに行きますから…」 清四郎は悠理の肩をがしっと掴むと、 「覚悟してくださいね」 と、悪魔のような顔で笑った。
悠理が夜の日本シリーズで四連敗を喫したのは言うまでもない…
涙のチャンチャン♪
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