ラブラブシチュエーション〜家庭教師と生徒編〜 「お待たせしました」 そう言って部屋に入って来た清四郎は、何故か眼鏡を掛け、トレンチコートを着ている。 背が高く、筋肉質の均整の取れた身体にそれはとても似合っていて、悠理はそんの少しの間、彼に見惚れていた。 そんな彼女の様子に気が付いた清四郎は、ニヤリと笑ってこう告げた。 「今日は国語のお勉強です」 そんな彼の声にハッと我に返った悠理は慌てて言葉を発し、ぷうと頬を膨らませた。 「えー、あたい、勉強なんてヤダ!」 そんな悠理に眼鏡をくいっと持ち上げ、清四郎は軽く睨んだ。 「僕が先生、お前が生徒、今日はそういうシュチュだって決めただろう?」 どうやら先生という設定に、眼鏡を用いたらしい。 そういうところには、抜け目のない清四郎だった。 お前が勝手に決めたくせに、とぶちぶち言いながらも悠理は惚れた弱みか、仕方なく頷いた。 「……うん、解った」 ちなみに悠理はというと、清四郎がどこぞで調達してきたセーラー服姿、足もきっちり三つ折ソックス。 彼の希望としてはお下げにして欲しかったのだが、さすがに悠理の髪では難しいので、そこは断念した。 何れその願いは叶えてみせる!と清四郎はぐっと拳を握りしめた。 「センセー、何呆けてるんですかー」 悠理の冷たい視線に気が付いた清四郎は、コホンと咳を一つし、気を取り直す。 「では、早速問題に取り掛かります」 瞬間、まるでこれから試合に臨むレスラーの如く、バッとコートを脱ぎ捨てた。 その姿を目にした悠理の目が、すうっと細くなった。 「お前、馬鹿だろ?」 何故悠理のこの発言になったのか、皆様も想像して欲しい。 彼がコートの下に着ていたものは、白いTシャツに白いショートパンツそして白いソックス。 そんな白尽くめの清四郎は腕を組み、椅子に座っている悠理を見下ろしつつ、強い口調で述べた。 「お前じゃなくて、先生と呼びなさい!」 再びくいっと眼鏡を持ち上げ、清四郎は早速問題を出した。 「問一、これは何と読みますか?」 清四郎がTシャツを指差す。 そこには黒文字で書かれた漢字が一文字、『波』。 「あたいでも解るじょ。『なみ』」 悠理がそう答えると、清四郎はにっこりと微笑んだ。 「正解です」 清四郎は嬉しそうに、Tシャツを脱いだ。 ちなみに、Tシャツの下にアンダーシャツも着ているところが彼らしい。 おまけに、ちらりと見えたのだが、パンツの中にアンダーシャツをきっちり入れているようだ。 「お前、パンツの中にシャツを入れているのか?」 キャハハハと笑いながら指差す悠理に、清四郎は顔を赤くしながら声を上げた。 「母からそう躾けられたんです!おなかが冷えると悪いから、と言って。それに、先生と呼びなさいと言ったでしょう!これ以上言ったら、お仕置きですからね」 ニヤリと笑う清四郎に、悠理がぶるぶると顔を左右に振った。 「では、二問目にいきましょう。これは?」 清四郎がアンダーシャツに書かれた、『舟』という漢字を指差した。 「はい、『ふね』!」 「正解!まぁ、小学生レベルですからね、これで間違えたら先生はとても悲しいです」 まるで本物のような話し方で完璧に教師になりきりながらも、清四郎はアンダーシャツを脱ぎ、上半身裸となった。 悠理は彼の無駄な脂肪の無い、彫刻ように美しい身体が好きだった。 その身体に唇を這わせ、強く吸い、爪を立て、自分のものだという所有の証を残したい、そんな願望さえ沸き起こってくる。 悠理は頬を染め、ほぅ、と甘い溜息を漏らした。 自分の肢体に見惚れている悠理に満足げに笑みを浮かべながらも、清四郎は次の問題へと取り掛かる。 「では、次に参りましょう。問三、これは何と読みますか?」 そう言い終えた後、清四郎はくるっと後ろを振り返り、ぷりんと尻を突き出した。 そして、尻にも大きく書かれた漢字が一文字、『鱒』。 「なんだ、一瞬『穴』だと思ったぜ」 悠理がケラケラと笑うと、先生は同じ体制のまま顔だけ振り返り、キッと悠理を睨んだ。 「無駄口は叩かない!おまけに下品な発想もいけません!」 やっているお前はいいのか?と突っ込みそうになった悠理だったが、そこはお仕置きが怖いので、ぐっと我慢する。 「うーん、魚が入っているってことは、魚の名前だよなぁ?『まぐろ』?『ぶり』?」 「残念、違います。ヒントは、調理方法はムニエルが多いですね。日本酒もこれで飲むことがあります」 「ムニエルは『さけ』とか『ます』が多いよな。日本酒を飲むもの?『銚子』、『コップ』、あと、『升酒』なんかも……解った!『ます』だぁー!」 悠理は嬉しさのあまり答えを叫んだのだが、又しても清四郎からチェックが入る。 「はい、正解!!ただ、先生が語尾を延ばしたりするのが嫌いですので、語尾は短くはっきりと!解りましたか?」 「はい、先生」 唇を尖らす悠理の前で、清四郎はショートパンツを脱ぐ……かと思ったが、彼はくるりと正面を向いただけだった。 「次、問四。これは何と読みますか?」 清四郎は靴を脱ぎ、靴下を履いた足を悠理の目の高さに突き出した。 そして悠理が見つけたそれは、足の裏の漢字一文字、『鰹』。 「えっと、何だっけ?『たい』でも『さば』でもないし…」 悠理が悩んでいると、先生が悲鳴を上げた。 「ゆ、悠理、早く…して…下さい…」 どうやら足を上げたままでいるのが辛いらしく、問題もプルプルと震えている。 でも、解らないのは仕方がないので、もう少し先生には頑張ってもらう。 ―――そういえば昨日、可憐ちへ遊びに行った時、腹減ったあたいに、おかかのおむすび作ってくれたよなぁ。そん時に確か鰹節のパックに書いてあった…… 「解った!『かつお』だ!」 「せ、正解です」 清四郎はふぅと息を吐いた後、座り込んで右の靴下を脱いだ。 「次……は、もう少し早く答えて下さいね。問五!」 今度は左足を上げる。 右利きのせいか、左足は右よりも上がらず、悠理は少し屈んで覗き見る。 すると、そこにあったのは、『若布』。 「えーっ、わかんないよこんなの!」 「ゆ、悠理、お願い…早く…ヒントは味噌汁の具です!」 再び足をプルプルさせながら、ヒントを出す清四郎。 「先生、下がって見えないよぉ!」 己を叱咤激励し、清四郎は再び気合を入れた。 「ふむっ!!」 「何だろ?味噌汁の具で、布っていう字が見えたなぁ…解った!『こんぶ』!」 「お、惜しい!」 ぷるぷるが右足どころか左足まで襲ってきたものの、ここは精神統一で踏ん張る。 「じゃ、『わかめ』!」 「正解!」 はぁ、と溜息と共に足を下ろし、再び座り込んで清四郎は靴下を脱いだ。 「では、問六!」 とうとう唯一残っていたショートパンツをするりと落とし、そして現れたのは何と悠理のタマパンツ。 いくら細身とはいえ筋肉質の清四郎にタマパンツは勿論合うはずもなく、タマの顔はびよーんと横に広がり、何とも情けない顔になっていた。 ―――あたいの大好きなタマパンツが…… 悲惨な状態になっているその姿をじっと見つめ、やがて伸びきったタマに絶えられなくなった悠理が絶叫した。 「タマ――っ!!」 「正解!!」 悠理の絶叫に対し、清四郎は嬉しそうにビシッと人差し指を差し向けた。 「はぁ?」 「答えは『たま』です」 「??」 ニコニコとタマパンツ一丁で微笑んでいる清四郎と、訳の解らない顔の悠理。 そんな中でも清四郎の先生ぶりは納まらず、三度眼鏡をくいっと持ち上げて口を開いた。 「最終問題です。さて、問一から問六までの答えから連想するものは何でしょう?」 「えっと、『なみ』、『ふね』、『かつお』、『ます』、『わかめ』、『かつお』、それと『たま』?……解った!!サザエさんだ!!」 「ピンポン、ピンポン、大正解!!磯野家の一族、タマまで入れた所がミソです」 ぱあっと顔を輝かせて答える悠理に清四郎先生も共に喜び、フフンと鼻を鳴らした。 しかし、そんな得意顔の清四郎とは反対に、悠理の顔から喜びはあっという間に去っていき、今や腕を組んで目を細くしている。 どうやら、かなりご立腹の様子だ。 「どうしたんですか、悠理?嬉しくないんですか?」 不思議そうに顔を覗き込む清四郎に、悠理は冷たい声でゆっくりと口を開いた。 「清四郎にしちゃ、良く頑張ったよなぁ。磯野家で、サザエさんとタラちゃんを入れなかったことを褒めてやるよ。二人は『ふぐた』だもんな」 「でしょう?なのに、何で怒っているんですか?」 何に対して怒っているのか、まるっきり検討のつかない清四郎は、眉根を寄せて首を傾げる。 そんな彼に、悠理はこう問い掛けた。 「『ますお』さんは?」 「えっ?」 一段と眉根に皺を寄せる清四郎に、悠理は鼻息も声も荒げて言い放った。 「磯野家に『ます』を入れただろ?マスオさんこそ正式な『ふぐた』だ。サザエさんは『磯野』から『ふぐた』へ嫁に行ったんだよ!」 「そうでした!僕としたことが、何という間違いを!!」 両手で頭を抱え、うおんうおんと左右に振って嘆いている清四郎に、悠理は口の端に嫌な笑いを浮かべた。 「センセーは間違っちゃいけないよなぁ」 「そ、そんな!先生だって人間ですもの、間違うことだって……」 清四郎は許しを請う為に悠理にすがったものの、彼女は容赦なく彼を払いのけ、こう告げた。 「お仕置きだな」 瞬時にして清四郎の顔が血の気を失ったように、真っ青になった。 「そ、そんな……」 「ダメだ、許さない!ほら、そこで正座しろっ!!」 悠理は、タマパンツ一丁の清四郎に向かってニヤリと笑い、一歩、また一歩と近づいていく。 ズリッ、ズリッと後ずさる彼の目は恐怖で見開かれ、瞬きさえしない。 「お願い、止めて、きゃーっ!……あっ……」 パンツも脱がされ、全裸のまま正座させられた清四郎は表情を歪め、思わず声を漏らしてしまった。 「つ、冷たい……」 「まだまだぁ!」 とくとくとくと音を立て、悠理は溢れんばかりに注ぎ入れる。 「もう……ダメです……」 「ほら!力を抜くなよ!漏れるじゃないか!」 くっと、清四郎は更に力を込める。 悠理はクスクス笑いながら、歓喜の声を上げた。 「さあ、わかめ酒、行ってみよう!!」 |