「せ、清四郎・・・ ま・・だ・・・」 「 ・・・まだ、ですよ・・・・」 「 だって・・・ もう ・・・・・」 「 悠理 もう 我慢できなくなったんですか・・・」 笑いを含む声でそう話す彼の視線に悠理の頬が染まる。 「そ、そんなこと ・・・ 」 「 ・・ ないっていえるんですか?」 そんな彼の言葉に黙ってしまう。 悠理はそんな男から視線を反らせた。 その間も、彼の手は止まることなく動き続ける。 激しさを増しながら。 2人の間に透明な糸ができる。 清四郎はそれを彼女の目の前に出した。 彼女に見せ付けるように。 悠理がそれに釘付けとなる。 「なぁ・・・せいしろ ・・・もう・・・」 「・・・ もう、なんですか。」 「 ・・・もう、ぃ・・・ 入れて ・・・」 くくくっと笑う声が聞こえた。 「我慢できなくなりましたか?」 「 ・・・・ うん ・・・・・」 その声に清四郎がピッと何かを破く音がした。 悠理の顔が不安に歪む。 「 ・・・・・ ヒリヒリしない?」 「少しはするかもしれませんが・・・、大丈夫ですよ。」 「悠理も嫌いじゃないでしょ。」 その言葉に彼女はその白い首を縦に振った。 「それでは・・・」 ドンっとテーブルの上に大き目のお皿が置かれた。 その中には、納豆が・・・。 そう、『納豆が食べたい』といった悠理に清四郎が作ってやっていたのだ。 財閥令嬢である彼女はパックに入ったそれをどうして作ればいいか、この年まで知らなかったというのだ。 「器に移して、先に納豆だけをよく粘りが出るまで混ぜ、それからタレやからしを入れればいいんです。」 「からしも入れんのか?」 「そうですよ。剣菱ではいれないんですか?」 「うぅ〜ん、わかんない。だって、食べるときはもう全部混ざってるし・・・・」 「僕も少し入れたほうが好きですよ。」 そう話をしていても、悠理が自分で作ろうという気配は一向にしない。 仕方なく、溜息をつきながら清四郎が言った。 「今回は2人分、僕が作りますから、よく見てるんですよ。」 そういった彼に大きく頷いた悠理だが、他のおかずも並ぶテーブルで、我慢が出来なくなったようだ。 そう、激しさを増していたのは納豆を混ぜる清四郎の手。 ヒリヒリしないか心配したのは、からしのこと。 早速テーブルに置かれたできあがりを、彼女は嬉しそうに見ている。 パンっと手を合わす音がした。 「清四郎、早く食おうぜ、な!いただきます!!」 悠理の嬉しそうな声が響き、2人の楽しい食事タイムが始まった。 |