「清四郎・・・アレがない・・・」
悠理が眉をよせ、一点を見つめながらそう言った。 マンションから移って数日。 家具は新しいものを揃えたが、悠理の為に買った冷蔵庫はそのまま持って来ていた。 冷蔵庫にはお互いの予定を書き込んだカレンダーが貼ってある。 今、二人はその冷蔵庫の前に立っていた。 アレがない、とは? 「アレがないって・・・外に出したし、ちゃんと拭き取りましたから大丈夫ですよ」 清四郎は落ち着いた声で返した。 それでも悠理は不安な声で何かを言いよどんでいる。 「でも・・・それだけじゃ確実じゃないし・・・」 「悠理、アレがないとそんなに心配なんですか」 言いながら彼女の肩に手を置こうとしたその時、清四郎は悠理が震えているのに気がついた。 目にはうっすら涙を浮かべている。 「・・・馬鹿ですな。そんなに心配なら今日一緒に行きましょう。まずはきちんと調べてからです。これから優秀なやつを探しておきますから悠理も出かける準備をしてください」 清四郎は安心させるように頭をポンポンとすると、そっと微笑んだ。 「せーしろー、出来たかぁ?」 「悠理こそ、出来たんですか?」 悠理はリビングの机で、清四郎はキッチンでそれぞれに作業をしている。 悠理の手元には・・・・・@@@@@ 清四郎の手元には・・・・@@@@@ 「悠理、ちょっと実家に行ってきます」 「はぁ?なんで?」 「ホウ酸とグリセリンだけでは効果が薄い気がするんですよね。家に戻って薬品と試験管持ってきます」 清四郎は出かける準備をしてリビングに戻った。 悠理は携帯を手に持ち、ボタンを押している。 「悠理、どこに電話してるんです?」 「ん?魅録。・・・だってもっと高度な仕掛けがほしいなーって」 「なるほど・・・じゃ魅録を呼んでいる間に僕も行ってきます」 「いってらっしゃ〜い・・・プルルル、あっ魅録?」 『なんだよ悠理、急用か?』 「実はさぁ、○×△*%で・・・」 『・・・・・・おまえんち、出るのかよ』 「うんにゃ。清四郎は“生ゴミは毎日密封して外に出してるし、シンクの水も拭き取ってるから大丈夫”って言うけどさぁ。出たら嫌じゃん」 『・・・悠理、清四郎を出せ!』 「え〜出かけちゃったよ。なんか硝酸とグリセリンじゃ足りないんだって」 『!!!!ダイナマイト作ってんのか!5分で行く♪』ブチッ ?????・・・・ダイナマイト? 清四郎が作っていたのはダンゴだよな。ダイナマイトじゃないぞ、魅録。 悠理くん・・・硝酸ではなくてホウ酸です。 by ポアンポアン |