越してきて数ヶ月。 二人はリビングで過ごすことが多い。 あんなことや、こんなことをしながら・・・ 「・・・熱いよ、清四郎」 「僕も、熱いですよ」 「悠理、もう少し広げて下さい」 「え〜〜もっと?」 「ええ、もう少しです」 「ねぇ、清四郎まだ?」 「まだですよ。ちゃんと濡らしてからでないと」 「早くぅ・・・・・」 「急かすな、ちゃんと濡らしおかないと後で泣くのは悠理ですよ」 「あ〜ん・・・」 「悠理、もうそろそろ、いいでしょう」 「いいの?」 「十分です」 「悠理、ここでいいか?」 「ん、もっと右」 「この辺?」 「ん〜〜〜、もっと・・・」 「悠理のいいところを言って下さい」 「あっ、そこ!」 「ここか?ここがいいのか?」 「うん♪」 「じゃ、いくぞ」 「ん、頼んだぞ、清四郎!」 ぐ、ぐ、ぐ。 「ね、清四郎ちゃん。そんなに力入れなくも」 「これくらいしないと、ダメなんですよ」 「ほんとに?」 「ええ、ほんとです」 ピンポ〜ン♪ ピポンピポンピポ〜ン♪ 「清四郎、悠理〜〜いないの〜?」 「可憐ったら、時間まちがえたんじゃありませんの?」 「まちがえてないわよ、失礼ね」 ピポ〜ン、ピポンピポンピポ〜ン!! 「変ねぇ、見せたいものがあるから11時に来いって言ったわよ」 「携帯に電話してみます?」 「そうね、野梨子、頼むわ。私ちょっと庭に回ってみる」 「なんで、あいつらこんな時に来るんだよ!」 「悠理・・・何時に来いって約束したんです?」 「11時・・・」 「11時って、もう時間じゃないですか!!」 密接する体と体、二人の額からしたたり落ちる汗。: あせる清四郎、あせる悠理。 「でも、今は手が離せないよな?」 「ええ、ここで手を離したら、今までの苦労が水の泡」 「だいたい、悠理が我侭なんです」 「なんでぇ!!」 「コレをやってほしければ、もう少し早く言えば良いものを」 「だって、初めてでももっと簡単にできると思ったんだよ」 「悠理がいつもTシャツの皺を伸ばして干さないのがいけないんです」 「皺なんかピ〜ンと伸ばしてやればいいじゃん」 「いいんですか?せっかくのタマとフクのアイロンプリント」 「うっ・・・」 「綿のものは、ちゃんと濡らしてからアイロンをかけないと綺麗にならないんです。皺皺のTシャツにアイロンプリントしてみろ。失敗して泣くのは悠理ですよ」 「清四郎ちゃん、許してっ」 「今度、僕の胴着に“東村寺 菊正宗清四郎”とプリントするのを手伝ってくれたら許しましょう」 「胴着にやるのは難しいと思うぞ」 「やるのが嫌なんでしょう?」 「んにゃ、厚手のものには無理って説明書に書いてあった」 リビングで、アイロンを押す清四郎。 Tシャツを広げて押さえ、プリントしやすい様手伝う悠理。 (可憐には、ソファに隠れて二人の頭しか見えない。故に、二人は可憐から発せられる憎悪の視線にまったく気づいていない) 「よし!これで出来たと思いますよ」 「はがしていい?」 「どうぞ。そっとですよ」 「うん、わかってる」 ぺら〜ん 「やったーー!出来たァ。清四郎ちゃん好きよ〜♪」 「悠理、首に抱きつくのはいいが終わりましたからアレいれて下さいよ」 清四郎が指差す先に・・・ まったく新しい家に越した途端、大型の家電製品買い込んで、あげく各部屋“電気つけっぱなし、コンセント入れっぱなし”エアコンとアイロン同時に使うとヒューズが飛ぶなんて。 来月から、契約アンペア変更しよう、と熱いくせに悠理を抱きしめながら考える清四郎であった。 (↑この時点で、二人は可憐と野梨子のことをすっかり忘れている。) 庭からリビングを覗き、わなわなと震える可憐。 野梨子も庭へとやって来る。 「可憐?二人とも携帯に出ないんですのよ、可憐?」 「・・・・・・・・」 「あんたたち、何やってんの!!」 新しく買った悠理のパソコンで、タマフクのアイロンプリントを作成したから見せてやると言われて来てみれば・・・ ソファの向こうで、汗だくになって抱き合う二人。 ああ、平和な日曜はこうして暮れてゆく。 真夏にエアコンなしでアイロン・・・そら、熱いわな byポアンポアン |