とある週末。珍しく早く帰宅し、悠理と夕食を共にした後 キレイに平らげられたお皿をシンクに運んでいた清四郎が呟いた。 「ああ、しまった!アレがもうなかったんだ。」 「ん?」 お先にぃ〜と、風呂場へ向かっていた悠理が足を止めて振り向く。 「どうしましょうかねぇ。もう薬局は閉まってるでしょうし…」 一瞬考えた悠理だったが、すぐにポンと手を打った。 「ああ、アレ。そういえばこの間一箱全部使っちゃったもんな。」 「困ったな…アレがないと。」 「コンビニで買って来れば?」 「コンビニのはフィット感がいまいちなんですよ。僕は普通の人に比べてサイズも大きいですし…」 「たいして変わんないと思うけどなぁ〜。」 「そりゃ、アレを着けるのは僕ですからね。」 「じゃあ、一回ぐらいアレ着けないですればいいじゃん。」 「さすがにそれはまずいでしょう。1回だけと言ってもねぇ。」 「何でいちいちアレ着けないといけないわけ?感覚鈍んないか?」 「そりゃ感覚は多少鈍りますけどね。」 「おまえちょっと敏感過ぎるからな〜。」 「(ムッ)…悠理に言われたくありませんね。…そうだ、たまには悠理がしてくれます?」 「ヤだよ。だって、ヌルヌルするじゃん。」 「ほら、悠理だってアレ無しじゃ嫌でしょ。外して捨てるだけですから、後始末も楽ですしね。」 「じゃあさ、今日は止めといて、明日買ってきてからする?」 「嫌ですよ。今日しないなんて、僕は我慢できません。」 「あたいはかまわないぞ。」 「どうしてお前はそうなんです?このままにしといて平気なのか!!」 「だって、皿洗いはお前がするって約束だろ〜!!」 そう、二人の言う「アレ」とは(敏感肌の)清四郎が皿洗いの時に愛用している 医療用ゴム手袋のことであった。 その後、新居には食器洗い機が購入されたとかされなかったとか。 |