あれから、二年が過ぎた。

 

 

 ***さくらんぼ***          

     BY れん様&フロ

 

 

 

「悠理?眠くなったのか?」

ふたりでソファに座りながらDVDを観ていたのは、かつての僕の部屋。

二年前に数週間だけ僕の部屋であったこの場所をふたたび手に入れてから、もう随分経つ。

 

ゆらゆら揺れる髪が、僕の頬に触れた。

僕の隣で小さく頭を揺らす悠理の前髪をかき上げる。

「うん…飲みすぎたかな?」

飲みすぎたと言っても、ワインを1本しか空けてない。

たかが1本ぐらいのワインで悠理が酔うとも思えず僕は思わず首を傾げた。

と、同時に悠理が僕の首に両手をまわして抱き付いてきた。

「ベッド、連れてって…」

悠理の言葉に思わず口元が緩む。

「甘えんぼの悠理も好きですよ」

悠理を抱き上げ寝室のベッドの上に悠理を優しく降ろした。

 

 

あの婚約騒動から、二年。

恋に気づいてから、二年。

順風だったわけではない。

僕はどうしようもなく傲慢な愚か者だったし、悠理も意地っ張りで頑なな子供だった。

彼女を振り向かせると決意してからも、他愛のない喧嘩を繰り返し何度も泣かせた。

 

だけど今、彼女は僕の腕の中にいる。

愛しい恋人として。

 

 

 お互いの目と目が重なり合う。

「んっ…」

僕は悠理の唇にキスを落とす。

そして悠理のシャツをゆっくりと脱がし始めた僕の目に飛び込んだものに

目を大きく見開いた。

悠理が上目遣いで「…どうした?」と聞いてきた。

「いや‥悠理が…珍しいなと思いまして」

「珍しい?何が?」

「…これですよ」

 

悠理の柔らかな丘を包んでいる白い布地に可愛いサクランボがふたつ。

「キ、キライか?」

 

サクランボ――――もう未熟な果実ではない。

僕はもう大切なものは何か知っている。

そして、悠理の果実も。

 

「いいえ、可愛いですよ」

「ばっ!」

照れているのか悠理がぷいっと横を向く。

くす、と笑いながら僕は悠理の首筋に熱を落とす。

 

「っ‥ぁ‥」

悠理の吐息が僕の耳元にかかる。

「‥せーしろ‥」

僕の名前を呼ぶ悠理に顔を近づけると悠理は何か言いたそうに僕を見つめた。

 

「…サクランボに、なりたかったんだ…」

小さく呟かれた言葉。

「え?」

聞き返すと、悠理はふるふる首を振った。

白い頬が、僕の腕の中で色づいた。

 

悠理の目は、潤んでいる。

瞳に宿るかつてはなかった艶。

 

 

「えっと、食べても…いいぞ」

 

その言葉に、ちらりと視線を下へ落とすと、そこにはお揃いの可愛いサクランボ。

サクランボのように真っ赤になった悠理の顔が、あまりにも愛おしくて。

 

 

「美味しくいただきますよ」

 

 

僕は可愛いサクランボの右の結び紐をそっと噛み解いた。

 

 

 

――――愛してる。

ふたり、これからもずっと繋がっていよう。

房で繋がる小さな果実のように。

 

今は熟した、甘く赤いサクランボ。

 

 

 

 

end

 


 「チェリー」を書いて詰まっていたとき、れん様から偶然にも「さくらんぼ」と題するラブラブSSをいただいてしましました。

そうよ、ここを到達地点に見定め、ラブラブにするのよー!と燃え上がった私。

我侭勝手にも、「さくらんぼ」を「チェリー」の続きとして、れん様の文に少々余計な駄文をくっつけたのがこれ↑でございます。(8割、れん様の文です。)

れん様、ずーずーしいお願いをこころよくご許可、ありがとうございます。おかげで、チェリーの方も書き上げることができました!

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