ららら*いつものハッピーニューイヤー

 

今年も、例年通り皆で初詣でに繰り出した後。

 

「逢えない時間が愛を育てる♪・・・・なんて」

振袖姿の可憐がため息をついた。

「歌にもあるくらいなんだからさ、あんたたちも、一度離れてみた方がいいんじゃない?」

 

「んあ?」

悠理は可憐を怪訝顔で振り返った。

その悠理の振袖をつかんだ清四郎も、片眉を上げる。

「どうして、僕と悠理が、」

「あたいと清四郎が、」

ふたりの声が重なった。

 

「「離れなければならないんだ?」」

 

 

 

 

のんびり正月を過ごすのは、元日のみ。これから、ふたりは剣菱デパートの初売りイベントに駆けつける予定だ。

大学入学後、学業のかたわら剣菱の仕事を始めた清四郎は、悠理と過ごす時間が格段に増えた。

なにしろ、清四郎の事業参画で、万作氏はすっかり楽隠居気分だ。その万作夫妻の代わりを勤め、公の場に出ることの多くなった悠理には、清四郎のフォローが不可欠。

 

「・・・・はっ」

悠理が珍しくも察しよく気がついた。

「突っ込むとこは、そこじゃないだろ、清四郎!」

悠理は餅を頬張った頬を、なおも膨らませた。清四郎を睨んだあと、可憐に向き直る。

 

「なんだってあたいたちが”愛を育て”なきゃなんないんだよ!」

 

 

この言葉には、可憐だけでなく、美童も野梨子も魅録も、ゲンナリと肩を落とした。

「・・・・また、婚約破棄しましたのね?」

野梨子の指摘に、悠理と清四郎は顔を見合わせた。

「あ、言ってなかったっけ。」

「そういえば、言ってませんでしたね。」

 

剣菱家の事情と清四郎の野望に端を発する彼らの婚約は、もう四度を数える。毎度毎度騒動の果てに、破棄。その原因は、恋愛感情の欠如、性格不一致、とは当人たちの弁であるのだが。

 

「悠理、時間が押して来た、急ぎましょう!」

清四郎は腕時計を見ながら悠理の手を取った。

「あちゃ、餅撒きに間に合うか?走るぞ、清四郎!」

悠理も清四郎の手を握り、着物の裾をからげる。

 

「では、皆さん、僕らは失礼しますよ。」

ふたりの声がまたもやハモった。

 

「「今年もよろしく!」」

 

着物姿のふたりは、そうしてドドドドドと駆け去って行った。手をしっかりと握りあい、二人三脚のごとき見事な走りっぷりで。

 

 

 

はぁぁ、と仲間たちはため息。

「今年もよろしく・・・ね。」

「今年は、何回婚約する気ですかしら?」

「いっそ、一度結婚してみた方がいいんじゃないか?」

「結婚しても、おんなじことを繰り返したりしてね。」

「あれはあれで、何か育むものがあると思うんだけど。」

 ここ数年来、まったく変わりばえしない友人達の関係に、仲間達も呆れ顔。

 

 

「それでも、あいつらの最初の反応が、真実なのかもよ?」

 

――――どうして、離れる必要が?

 

同時にそう言ったふたりの怪訝顔を思い出し、仲間達は吹き出した。

「あいつら、婚約破棄したらしいけど、」

「今年の内に、華燭の宴があっても驚きませんわ。」

 

 

離れられないふたり。

これからも、周囲を呆れさせる迷走を続けたとしても。

 

今年こそ、きっと。

 

特大のHappy New Year!

 

 

 

2007.1.3

 


もしかして初めてかな?ららら馬鹿夫婦の結婚前を書いたのは・・・。(笑) 正月帰省から戻り、構想執筆とも10分で書きました。これまでの最短記録!やっつけ仕事!(←自慢にならんだろ。)

 

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