禁断のおまけ

東村寺の就寝時間9時。皆鍛錬で疲れきっているので床に就くなり寝入ってしまう。
襖が開き赤外線スコープを持った人影が月明かりに浮かんでいた。

室内をスコープで見回すと口元にニヤリと微笑を浮かべ、音も無く 室内に入り込み襖を閉じる。
その人物は鍛えられただけではない、ある種訓練された動きを身にまとっていた。
普段ならば回りの気配に鋭い清四郎にも気付かれることなくそのかたわらに近づいて行く。
いや、早朝からの猛稽古で清四郎も疲れていたのだ。
その無防備な寝姿を見下ろしながら、人影はさらに清四郎に忍び寄る。
大柄な体躯の割に動きは俊敏だ。

手で清四郎の口を覆い、ひじで肩を抑え両足で跨るように手足を拘束する。
突然体に圧力を感じ清四郎は目が覚めた。 

(「誰だ!」)

女人禁制のこの合宿で願い下げたい視線を感じる事はあったが、雲海和尚の一番弟子を自認している清四郎に良からぬ事を企む輩はまずいない。
返り討ちにあうのが目に見えているからだ。

覆い被さる相手をはねのけようと、力を込める。
かなり不利な体制で抑えこまれてはいるが、払いのけられないはずは無い。
が、思いのほか力のある敵に苦戦を強いられる。
闇に目が慣れ相手を睨み付けた清四郎は自分の目を疑った。

そこには獰猛な肉食獣を思わせる目つきをしたモルダビア・パブロアがいたのだ。

(「えっ」)

あまりの事に呆然とする清四郎・・。そんな清四郎を見てクスリと笑いながら、耳に口を寄せモルダビアがささやく。
「勝負をしようじゃないか、清四郎。」
体が密着され筋肉質の胸が清四郎にのしかかる。
土のうを積まれでもしたかのようなその圧迫感に一瞬息がつまった。
モルダビアの右手が清四郎の前髪をすき上げ、指先が線を描くように耳に触れる。
あごのラインをたどり、のどをくすぐり、作務衣の襟元へと向かう。
清四郎の背筋が凍りつく。
無骨な手が作務衣の襟を割り、左右に押し広げると清四郎の胸を撫で回した。

我に返り逃れようと抵抗すると、左肩を右手で抑えつけられる。
抗おうとすればする程拘束は強くなる。
両手がふさがったモルダビアは開け広げた胸元に顔をよせた。
肉厚の唇が清四郎の肌を這い回り、時折ついばむように吸われる。
そのなんとも形容し難いおぞましさに、叫び声を上げそうになった。
が、こんな場面を他の門下生たちに知られるのは避けたい。

背中に脂汗がにじむ。
かつて悠理が蛇様の呪いの洞窟で味わったであろう恐怖を思いやる。しかし、ここで悠理のように気絶する訳にはいかない。
清四郎は叫び出したい衝動とも必死に戦っていた。

何時の間に上衣のひもをほどかれたのか、たくましい胸は肌蹴られ胸骨から鎖骨にかけてペロリと舐め上げられた。
清四郎は頭の中が真っ白になった。
まるで雪が降っているように・・。
カナダの雪中で投げ飛ばされた記憶がよみがえる。

やはり僕はモルダビアにはかなわないのだろうか、と。

いや、何の為になおさら厳しい修行に励んできたというのだ。
そうこうしている内にモルダビアの手が下衣をほどこうと伸びる。
拘束がほんの少し緩んだその時、右手を引き抜きモルダビアの肩をつかんで己の体から離した。
ほんの数秒間の睨み合いが長い時間に感じた。


・・・その時、暗闇の中でかすかな光と音が静寂を破った。
枕元に置かれた清四郎の携帯であった。就寝時にはマナーモードにするのが常であったが、疲れのためかそれを忘れていたらしい。

職業柄の条件反射かモルダビアの気が一瞬それた。
清四郎はすかさず体をひねりモルダビアの体の下から抜け出した。
素早く体勢を立て直し、対峙する二人。



・・・ガラッ・・

「な〜にをしておるんじゃ、お前さんらは」

この場にそぐわないのほほんとした口調。

雲海和尚が現われたことで、清四郎は安堵の表情を浮かべた。

溺れるものは藁をもつかむ。まさに、救い手。

しかし、モルダビアはそんな彼の油断を見過ごさなかった。和尚の前であっても、彼女は己の行動を抑えるつもりはなかったのだ。

何しろ、彼女にとっては、これは勝負であったのだから。

 

そして、第二ラウンドが・・・・・・・・

 

冗談ですってば!(笑)

妄想いちご様 作vv ラスト数行のみフロ。

 

実は、この文章をいちご様は、WEB拍手レスで一行ずつ連載して下さいました!!

リロードしながら興奮し過ぎて昼飯喉につめ、昇天しかけたことを白状させていただきます。

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