エロティカ・セブン  トモエ編




 『教えて清四郎!』



清四郎の部屋。
数学なんて嫌だ!と床に身体を投げのばしていた悠理は、勉強机の足下に何か紙切れが落ちているのを見つけた。
「なんだコレ?」
寝そべったまま腕を伸ばして拾い上げてみると、それは「6/20 222222」と走り書いてあるメモだった。
ぴらぴらと振りつつその数字を眺めるも、2が並ぶそれが何の意味を持つのか見当もつかない。
清四郎に聞こうにも、その清四郎は今ここには居ない。
単に悠理のおやつを取りに階下へ降りているだけの話なのだが。
清四郎が戻ってきたら真っ先に聞こうと、悠理は、そのメモ切れを勉強机の上に置いた。


お皿にこんもりと盛られたマフィンとグラス2個が乗ったトレーを左手に、2Lのペットボトルを右手の指3本で持った清四郎が、自室のドアを開けた。
愛しの相手はドアの前にすっくと立っていた。
トレーとペットボトルを勉強机に置く清四郎の眼前に、ずいっと一枚の紙を突きつける。
「なあなあ、この数字って何?」
「何って…悠理、わからないんですか?」
両手が自由になった清四郎は、ぐいと悠理の腰を抱き寄せる。
「え、う…うん」
「本当に?」
清四郎は、その瞳に思わせぶりな光を宿し、一分の隙も無く下半身をぴたりと重ね合わせる。
「…お前の予定は、じゅ、10万回…だろ?」
「キスなら20万回以上出来るって言ったでしょう?」
そう言うと、ゆっくりと唇を重ねた。
角度を変えては何度も舌を絡め合い、ようやく唇が離れた。
「……あの数字って、キスの目標…?」
「違います」
言葉の強さは一刀両断だが、その手は相変わらず悠理の腰を抱いている。
「えー。じゃあ何だろ」
清四郎の首に手を回したまま、悠理は視線を上へと泳がせて考える。
「悠理にも関係あることですよ」
「あたいにも関係ある…?」
ふうむと目を閉じた悠理は、閃いたのかパッと目を開いた。
「わかった!あたいの成績!!」
すぐさま答えが出てくるとは期待していなかったが、そんな答えが返ってくるとも予想しておらず、清四郎はがっくりと肩を落とす。
「…当たっているようにも思えますが、違います」
「じゃあ何だよ!?」
「僕らをこうした張本人…もとい、生みの親の…」
清四郎の言葉を最後まで聞かない内に、悠理が声を上げた。
「あっ!!“キリバン”ってやつだろ!!?」
「正解です」
正解と言われて嬉しそうに目を輝かせている悠理を見て、清四郎は口元を綻ばせる。
「…あれから計算したのですが、キスなら20万は容易く超えられます」
そう言うと、再び顔を近づける。
唇が触れるか触れないかのところで低く囁く。
「30万もあっという間ですよ」
腰に回した手も、首に回した手も、欲望という熱を帯びてきた。
与えられるだけだなんて性に合わない。
「当たり前だじょ」
そう囁き返すと、悠理は自分から唇を合わせた。









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