++個人教授++




大学に入って、先ず野梨子に彼氏が出来た。可憐は玉の輿を探す日々。
男性陣は変わらずで美童はあちらこちらの女性を行ったり来たり。魅録はダチとつるんでいるほうが楽しいらしく女の気配はない。清四郎も裏ではどうだか知らないが彼女といえる存在は無い。
そして大学に入ってから猛烈にアタックしていた同級生に悠理がOKを出したのが半年前。
それでも有閑倶楽部は変わらず、何かあれば集まるというスタンスだった。

その日は、清四郎の部屋に悠理が来ていた。
名目は「試験勉強」
そんなところも高校の頃と変わりなく、2人だろうが泊まりだろうが疑う余地のない関係。
「範囲はここまでですから、コレとコレ、あとは・・・コレも押さえておけば問題ないでしょう」
「うげぇ〜、こんなにあんの?」
「これしかないですよ、それに学部の違う僕が悠理の試験範囲を押さえているだけでもありがたいと思ってください。文句を言ってるヒマがあったらさっさとやれ」
「へーい」
文句を言いながらも清四郎が印を付けた箇所をさらっていく。
高校の時にいくら約束とは云え、散々清四郎の元で勉強させられた悠理の中で、清四郎と勉強=補講を免れる、もしくは単位が取れるとの図式が出来上がっているため、試験勉強は変わらず清四郎に面倒を見てもらっている。
午後一杯の時間を費やし、何とか今日の分の課題を遣り終えた。

いつもなら、このぐらいの時間帯に掛かってくる悠理の彼からの電話がまだない。
「今日は彼は迎えに来ないんですか?」
「あー・・・うん」
その問いに、悠理は言葉を濁した。清四郎は首を傾げる。
勉強が終わる時間を見計らったように掛かってくる電話は、勉強を終わらせたい悠理にとって好都合な筈なのに。
「喧嘩でもしました?」
「あ、いや、そうじゃなくて」
悠理の返事は歯切れが悪い。
「相談だったら乗りますし、愚痴も聞きますよ」
澄ました顔でずいっと身を乗り出した清四郎に、悠理は顔を逸らした。

暫く悩んだ挙句、やっと口を開いた悠理の返事に清四郎が固まった。
「あの、さ、あたいすっごい不感症かも」
「は?」
「だから、感じないっていうか・・・」
悠理は話しにくそうに、顔を顰めている。
「それで喧嘩したんですか?」
「喧嘩じゃなくて、そういうコトになるのが嫌で会いたくないだけ」
いつも、髪を撫でているだけでも、猫のように気持ち良さそうに目を細める悠理が不感症などとは俄かに信じられない話だった。
「でも、やることはやるんですよね」
「ううん、だって濡れないもん」
恐る恐る聞き返すと悠理は首を振った。
「まだ・・・なんですか?」
清四郎の問いに、悠理はこくりと頷いた。
よほど下手な男なのか。半年も付き合っていて、交際も順調で、可憐などはいつも悔しがっていた。その悠理がまだ処女(断定)であるとは思いもしなかった。

「じゃあ、僕で試してみますか?」
そう口に出した清四郎に、悠理が驚いて顔を上げた。
「医学的には興味ありますしね、僕と悠理だったら面倒もないでしょう?」
スラスラと口実を並べる清四郎は自分の悠理に対する想いに、とっくに気がついている。
ただこの半年、悠理が幸せそうだったので見守ることに徹してきた。こうして試験勉強で2人きりになることもできる。それで良しとしてきたのだが、悠理を満足させることの出来ない男など忘れさせてやる、との意地もこの時は働いたのかも知れない。
「まぁ、悠理が不感症なんて有り得ませんけどねぇ」
「なんでお前に判るんだよ」
「そりゃ・・・ねぇ・・・だから試して見ませんかって言ってるんですよ、それとも怖いですか?」
「なにっ?んなことねぇよ!」
売り言葉に買い言葉、こう言えば悠理が乗ってくるのは百も承知だ。
くすりと笑った清四郎を悠理が睨み付ける。
夕焼けが部屋をオレンジに染めていた。

悠理の今日の服装はコットンのシャツにジーンズというラフな格好。
「悠理、その下に何着てます?」
「キャミソールだけど・・・お前本気かよ」
「ええ、冗談では言いませんよ、不感症じゃないって判ればそれでいいでしょう?」
「そりゃそうだけど・・・」
「じゃあシャツとジーンズを脱いでこちらへ来てください」
無意識にシャツの胸元を掻き合わせる悠理に、実験だと思えば罪悪感はないでしょうと言ってのける。
「何なら僕が脱がせましょうか?」
「い、いいっ!自分でやる」
焦った悠理にニヤリと笑って見せて、清四郎は背後のソファーへ座った。
まだ戸惑って視線を泳がせている悠理にほら、と手を差し出した。
悠理はその手を無視して、のろのろと立ち上がる。
まだ腑に落ちない表情をしながらも、シャツのボタンに手を掛けた。
一つ一つボタンを外し、バサリと音を立ててシャツを脱ぐ。淡い水色のキャミソールが白い肌に映える。レースなどはついていないシンプルなものだったが、悠理にはよく似合っていた。ブラがうっすらと透けて見えた。
ジーンズのボタンに手をかけた悠理が、ん?と清四郎を真正面に見た。
「お前、向こう向いとけよ」
「いいじゃないですか水着姿だって見慣れてますし、僕にもそのぐらい特典がないとねぇ」
にっこり微笑んだ清四郎に、悠理はけっと悪態をつくと、そのままジーンズを腰から落とした。同色の水色のショーツをキャミソールの裾を引いて隠す。
そんな姿が清四郎を煽ったが、努めて冷静を保つ。
「で?どうすればいいの?」
意を決したのかぐっと唇を引き結んで、悠理は清四郎の前に立った。
「向こうを向いて僕の膝の上に座ってください」
清四郎がポンポンと膝を叩く。ん?と首を傾げた悠理だが、真正面で顔を見ながらよりはまだマシかと思い直し、クルリと背を向け、清四郎の膝の上に座った。
小さなヒップが、膝の上で居心地悪そうに動く。
清四郎が悠理に腕を廻した。悠理が細いのは知っていたが、改めて腕を廻しても有り余るウエストの細さに嘆息する。部屋の温度は適温に保たれているが、服を脱いだことで寒くなったのか、悠理が身震いをした。廻した腕を解いて、悠理の腕の上から身体全てを包み込む。
「不感症とは性的な刺激に対して何の興奮も覚えないことですから、少し触りますよ」
「う、うん」
緊張しているためか、悠理の声が上ずる。肩に余計な力が加わっているのが見てとれた。
「殴ったりしないでくださいよ」
そう言うと、悠理の前髪を掻き揚げた。くしゃっと掻き回すのは清四郎の癖。
右手はゆっくり髪の間を行き来し、左手は胸の前を通って寒くないよう悠理の右腕を摩る。
抱き締める形にはなるが、それも普段から担いだり背負ったりと慣れた行為でエロティックな雰囲気とは程遠い。

「そんなに下手な彼なんですか?」
「巧いとか下手とか、よく判んない」
「だって気持ちよくないんでしょう?」
悠理の緊張を解くように、ゆっくりゆっくりと話し掛け、彼の話を聞き出す。その間も悠理の腕を摩り続けた。彼は普段から自分の感情を押し付けるばかりで、悠理を喜ばせようとはしていないらしい。
悠理は自分に向けられる好意に敏感だ。
野生の勘と言ってしまえばそれまでだが、感情を押し付けられることには反発する。
悠理から求めさせなければいつまで経ってもこのままだろう。
それを理解していないなんてやはり下手な男としか言いようがない。
清四郎の心の奥に淡い火が灯った。

その名は闘争心。

少し話しをしたことで緊張が解けたのか、悠理の肩から力が抜けた。
それを感じた清四郎の手が後ろ髪を掻き揚げる。現れた細い項に唇を押し当てた。
うひゃっと悠理が首を竦める。
今度はキャミソールの肩紐を指にかけずらし、そこにも唇を落とした。
悠理の腕を摩っていた手は鎖骨をなぞる。喉から手を滑らせ、軽く耳に触れた。
何度か繰り返すと、猫が懐くように清四郎の手に悠理は頬を寄せた。
もう一度くしゃっと髪を撫ぜる。
「このぐらいは何でもないでしょう?」
「うん、擽ったい」
この時点で不感症などでは有り得ないと結論付けられるのだが、賢明な清四郎は口を噤んだ。それにもしかしたらこんなチャンスは二度と無いかも知れないのだ。
悠理が彼氏の所に戻ってしまったら、また見守るだけの灰色の日々が続く。
「もう少し触りますよ」
浮き出した肩甲骨の間に清四郎が唇を落とすと、悠理の肌が粟立った感じがした。
「背中、弱いですか?」
「うーん、ぞわっときたじょ・・・ってあのなぁ、一応恥ずかしいの我慢してんだから喋んなって」
悠理が肩越しに抗議してくるのを、清四郎はやり過ごす。
もう一度背中に唇を寄せると、舌を使って、項までを舐め上げた。悠理の肩が竦んだ。
「反応は悪くないんですけどねぇ」
唇を離し、キャミソールの裾を掴むとぐいっと上げた。
「わっ!」
悠理が驚いている隙に、ブラのホックも外す。顕になった背中にもう一度唇を押し当てた。
「邪魔なんで、脱ぎましょう。ホラ手外して」
悠理の背中にくぐもった清四郎の声が響く。ここまでする必要があるか?と思いながらも、清四郎の言う通り、キャミソールを脱ぎ、ブラを腕から外した。脱いだものをソファーの下に落とすと、清四郎がぎゅっと悠理を抱きしめた。悠理の肩に顎を乗せた清四郎が胸を覗き込む。
あるかなきかと言われてきた悠理の胸だが、小さな白い膨らみの先端には淡色が呼吸に合わせて上下している。
「ちゃんとありますね胸」
悠理の耳元で呟くと、胸をすっぽりと包んだ。
清四郎の手の中に収まる小ぶりな胸ながらも柔らかく、手のひらで押せばちゃんと押し返してくる弾力もある。
「ふむ、悪くないですな」
抗議のために振り向いた悠理の首筋に唇を寄せ、言葉を封じると、胸への愛撫を開始した。
下から持ち上げ、やわやわと揉む。指で輪郭をなぞり、先端を摘む。
何度か繰り返すと、悠理の手が掴む場所を求めるように一瞬浮いたが、清四郎の膝の上にいるため、そのような場所は無く、己の膝の上に力なく落ちた。
立ち上がってきた先端を指の腹で押しつぶすと、刺激を逃がすように悠理が身を捩った。
繰り返す呼吸が、だんだん浅くなっている。悠理の手が、もう一度浮いた。
「支えが無いと辛いですね」
清四郎は、側にあったクッションを自分と悠理の間に置いた、悠理の肩を掴み、クッションに凭れさせる。これで、悠理もいくらかリラックスができるはずだし、何より、変化し始めた自分の身体を悠理に悟られることはないだろう。
凭れかかったことで、必然的に腰を押し出す形になってしまった悠理のなだらかな腹部をたどり、清四郎の手はショーツの中へと進入した。悠理が焦って清四郎を振り向く。
「ちょっと待てって!そこまでするのかよ?」
「喋らないんじゃなかったんですか?」
「だって……」
「いいから、集中して」
諭すように前を向かせ、手を進める。

背中にキスを繰り返しながら、柔らかな茂みを分け、隠された蕾を探り当て優しく擦る。
悠理は何度か身を捩った。
さらに先へと進め、花芯に触れると確かに濡れた感触が無い。
こうなると探求心が芽生えてしまうのは清四郎では仕方のないこと。
良いところを探して、指は縦横無尽に動き回る。
悠理の息が所々で詰まる。
「あっ・・・」
とある一点で悠理から声が上がった。
悠里自身も自分から出た声に驚いているようだった。
「ここ、ですか?」
「んんっ!」
集中して声の上げた箇所を擦る。強めに引っ掻くと指先に待っていた潤いを感じた。
悠理が自分からの刺激に対して反応している。
潤いを指先に馴染ませ、蕾へと擦りつける。
滑りの良くなったそこは、新たな刺激を生み出して、悠理を翻弄する。

はぁ、と悠理が熱を含む吐息を吐いた時、視界が廻った。
清四郎が悠理をソファーへと押し倒したのだ。
2人の間にあったクッションが床へと転がった。

「悠理、キスしてもいいですか?」
指はまだ悠理の秘所を刺激しながら、清四郎が悠理を覗き込んだ。
喉を反らし、感覚に身を任せている悠理は清四郎の質問を聞いているのか、いないのか。
「んっ」
刺激からくる小さな喘ぎを肯定と捉え、反らされた喉元へと唇を寄せる。
それからゆっくりと、口付けた。
軽く啄み、唇をなぞる、甘噛みをし、また啄む。
唇を万遍なく味わい、舌を挿し入れると同時に、花芯へも指先の進入を試みる。
びくりと大きく震えた悠理の唇を追い、指先はごく浅く出し入れを繰り返す。
悠理があげた僅かな声さえも飲み込む。
長い口づけを解放した時、悠理の目の縁がほんのりと赤くなっていた。
友人としての付き合いもだいぶ長いが、こんな悠理の顔を見るのは初めてだった。
甘い呼吸にどうしようもなく煽られる。
「どうですか?」
「うん、なんか変な感じ。でも清四郎だと思うと、あっ!」
続けられる刺激に、敏感に反応する。先ほどよりも更に指を進めると、内部がぎゅっと収縮した。不感症ではありえない潤いがさらに指を濡らす。
「僕だと思うと?」
「ううん、凄い気持ちいい・・・」
にっこり笑った悠理の腕が、ふわりと清四郎の首に巻き付いた。

驚くより先に苦笑が漏らすが、清四郎の限界もたぶんここまでだった。
何くわぬ友人の顔で側に居ることも、変わらずの家庭教師の位置も、彼氏が居る悠理を見守ることも。そして、いつか誰かの手で幸せになる悠理を見ることも。
「一回、行っておきましょう」
悠理が痛みを感じないように、そっと指を増やしかき回す。
腕の中で、悠理が震える。
浅い呼吸は酸素を求めて、開かれた唇からは絞り出す喘ぎ。
胸に息づく果実を咥えると、だんだんと悠理の身体に緊張が生まれた。
肩に、腕に、腹に、足に。力を入れすぎた足がソファーの上を滑る。

到達点が近い。
清四郎は悠理に口づけ、手を一層大きく動かした。
「んん!んっ!はっ!!」
悠理の身体が大きく震え、清四郎の唇から逃れると、大きく息を吐き出した。
全身がしっとりと汗ばみ、呼吸が早くなる。
初めて自分の身に起こった感覚に全身を紅潮させ、ぐったりと粗い呼吸を繰り返している。
額に張り付いた前髪を掬い取ると、悠理の目がすっと細くなった。
まだ悠理の中に入ったままの指を軽く曲げると、びくんと足が反応する。
「そんなに気持ちよさそうな顔して、不感症なんてどの口が言ったんでしたっけ?」
「・・・イジワル。聞かなくたって判んだろ」
「そうですね、満足ですか?」
悠理が見上げると、優しい瞳をして真っ直ぐに悠理を見つめる清四郎が居た。
何です?とでも聞くようにん?と片眉を上げる。
見慣れた表情なのに、始めて見る表情のようで面映ゆい。
いくら「実験」と言われたって、清四郎の瞳の中にあるものは見間違えることはない。
痛くないよう優しく扱ってくれたことも、快楽を与えてくれたことも全てが嬉しい。
それに、何故だろう、清四郎が相手だと思うと、ちっとも嫌じゃない。
そんな雰囲気になるのが嫌で、会いたくないと思っている彼氏とは大違いだった。
悠理の身体がずくんと疼く。それはまだ秘所を探っている清四郎も気づいただろう。
もっと先にあるものを知りたい。清四郎と一緒に。

悠理の手が清四郎のシャツに掛かる、おぼつかない手つきでボタンを外し始めた。
「悠理?」
「んー、なんか、もうちょっと」
清四郎のシャツの裾をパンツから引きずり出し肩を剥ぐ。シャツと一緒に引きずり出されたTシャツの裾から手を入れ、背中にしがみついた。硬い筋肉が付いた滑らかな肌に手を滑らせる。その手を清四郎が止めた。
「悠理、僕としたいんですか?」
今すぐにでも貫きたいと思う気持ちをぐっと抑えて清四郎は悠理を見下ろした。
紅潮が引かず、潤んだ瞳の悠理が清四郎を見上げる。
数秒間、お互いに見つめ合った。
2人の間にある熱はまだ冷めない。それどころか、温度は先ほどより確実に上がっている。
「だって・・・」
恥ずかしそうに視線を反らした悠理に、清四郎は笑みを押さえることができない。
悠理に向かう感情も、欲しくて仕方が無くて限界まで起立している身体も。
悠理が清四郎を求めているのなら、無理に押さえる必要はないのだ。
「今度は優しくできる自信がありません。それでもいいか?」
今にも震えそうになる声で悠理に問えば、返事のかわりに抱きついている腕にきゅっと力が籠もった。
清四郎は悠理にキスを繰り返しながら、ベルトに手を掛けた。
一度チラリとベッドを見遣るが、何より自分が我慢できそうにない。
バサバサと服を脱ぎ捨て、悠理に覆い被さった。
籠もった熱が弾き飛ばされて、互いの間に新たな熱を生み出す。
口づけはさらに深く、悠理が息を詰まらせた場所を探り、万遍なく刺激を与えていく。
一度達した身体は、刺激に対して敏感に反応する。
悠理が酸素を求めて大きく呼吸を繰り返す。
その呼吸に息苦しさが無くなった時、清四郎は悠理の中に自身を潜り込ませた。
「・・・った」
柔らかく撓っていた身体が途端に強ばり、顔を顰める悠理に、清四郎は一端動きを止めた。
異物の進入を妨げ、内部は潤い以上に締め付けがきつい。
先に進めるにも、困難な状態だった。
「悠理、苦しいか?」
「んっ・・・だい、じょ、ぶ」
痛みのためか、眼にうっすらと涙が滲んでいる。清四郎は、悠理の涙を掬い取った。
まつげを舌でやさしく舐められる。
動いた拍子に、じり、と清四郎が先へと進む。
「すまない、でも、我慢できません」
「あやまんなくても・・・いい・・・よ」
悠理は至近距離で見る清四郎の瞳の中に、友人としてはありえない熱を見た。
やはり見間違えではない。
たぶん、彼氏からは一生かかっても与えてもらうことのない熱。
その熱を自ら欲した。
また身体がずくんと疼く。
結果的にその疼きは、清四郎の進入を手助けすることになった。
打ち付けられる身体と攫われる意識。
「悠理、ゆうり」
求められる声、呼ばれる名前に、しがみついて答えることしか出来なかった。
こぼれ落ちる涙を、清四郎が何度も掬い取ってくれた。

好きと言えないことが、こんなにももどかしい。
清四郎の腕の中で、しがみついてくる悠理が愛おしくて仕方がない。
手放すことは、もう不可能だと思った時、痺れと共に、清四郎にも到達点がやってきた。
ぐ、と力を入れて、最奥を突く。
清四郎が最奥まできた時に、悠理の世界は真っ白になった。



すっかり力の抜けた悠理を、今更ベッドへと運ぶ。
清四郎は、降ろされたベッドで今にも眠りに引き込まれそうな悠理の隣に横になる。
枕を取り上げ、変わりに腕を差し出すと、悠理は抵抗もせずに腕に頭を乗せてきた。
反対の手で髪を梳くと、気持ちよさそうに喉を鳴らした。
「今更だとは思いますが、嫌じゃなかったのか?」
「だって、お前だもん。・・・ちっとも・・・嫌じゃなかった・・・じょ」
「どういう風に受け取ればいいんでしょうねえ」
悠理からの返事は無かった。意識は夢の中へと行ってしまったようだ。
「無邪気なものですね」
まだ恋が成就したとは言い難い。彼氏の居る悠理との行為は背徳。
悠理は後で後悔するだろうか。
しかし憧れて止まないものを確実に手に入れたのだ。
悠理は清四郎を受け入れた。
それは紛れもない事実。

放出の疲労感はあるが、まだ眠りは訪れない。
「彼氏と別れる算段でも練るとしますか、許してくれますよね、悠理」
清四郎は、眠る悠理を強く抱きしめた。


ヒトリゴト
えーっと、クロノを長らく放置していたお詫びの品で御座います。
一応アップ不可ということで、フロ様にお送りさせていただきました。
が!!!! 清×悠愛の前には、私の羞恥心など風前の灯火。
書き直しさせてくださいと願い出て、こうして日の目を見ることになりました。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。

2009/05/17
加筆 2009/05/25

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