「せーしろー、薬くれ」 「どうしたんですか、悠理」 「うー、二日酔い・・・父ちゃんにしこたま呑まされた」 「それはそれは、少し待っててください」 清四郎は棚に向かうと、数種の瓶を持ってきた。悠理は痛む頭を押さえて机に突っ伏している。 カチャカチャという音に続いて、また棚を開け閉めする音、そのまま悠理の後ろを通って、キッチンへ向かう足音と冷蔵庫から水を取り出してグラスに注ぐ音。突っ伏したまま音を追っていた悠理が悠理の傍まで戻ってくる清四郎の足音にのろのろと顔を上げた。 「はい、どうぞ」 差し出された、薬に顔を顰めた。 「えー、カプセル苦手」 「まったく子供じゃないんですから」 「だって、飲みにくいもん」 清四郎は苦笑まじりにカプセルを取り上げた。中身を薬包紙の上に落とす。キレイに三角に折ったそれを悠理の目の前に差し出した。 「はい、口あけて」 「え、カプセルって苦い薬だからカプセルに入れるんだろ?それ苦いじゃん」 「違いますよ、胃で溶ける時間を計算してカプセルに入れてあるんです」 「ほんとか?」 まだ半信半疑の悠理に、清四郎はにっこりと笑ってみせた。 「じゃあ、甘くしてあげますよ」 清四郎は薬包紙の中身を自分の口の中に入れると、グラスの水を含んだ。 悠理の頬に手を添え、徐に口付けた。ゆっくりと中身を送り込む。 半分ほど送ったところで、悠理の喉がごくりと鳴った。 残り半分も時間をかけて移す。悠理の手が苦しそうに清四郎の袖を掴んだ。 「悠理」 離れた唇がもう一度押しあてられる。互いの舌は薬の苦味を感じ取った。 その苦味が消えるまで、口付けは続いた。 ちゅっと音を立てて離れた唇は赤味を帯びている。 「ゴチソウサマでした」 「おまえ〜・・・」 「でも、頭痛は和らいだでしょ」 「今度は、酸欠で頭いてぇよ」 「おや、そうですか?」
※ちっとも甘くないのはどうして?
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