昨日はすごい雪で、鉛色の空を見上げているだけで寒くなったけど、今日は打って変わって、すごく良い天気だ。
窓からは、暖かな光が差し込んでくる。
部屋の中は、一足早く春が来たみたいに、とってもあったかい。
あたいの部屋は、日当たりのいいのが自慢だ。
だからって、これはあんまりだと思う。
清四郎は、日差しを吸い込んでぬくもった絨毯の上で、さっきから小さな寝息を立てている。
広い背中にあったかなお日さまを背負って、気持ちが良いんだろう。
遊びに来たくせ、すぐに寝てしまうなんて、腹が立つ。
でも、他人に隙を見せない男が、他人の部屋で安心しきって熟睡しているってことは、それだけ部屋の主であるあたいに気を許している証拠だ。
それに、この部屋は、お日さまのおかげで、とっても居心地がいい。
だから、今日くらい、恋人を置いて寝てしまった男を、許してあげよう。
冬の日差しが満ちた、暖かで、静かな部屋に、あいつの小さな寝息が響く。
それだけで幸せな気分になれるのだから、あたいも単純だ。
子供みたいに安心して眠る清四郎の顔を、もっと近くで見たくなった。
悪戯をするつもりはないけれど、両手を絨毯について、猫みたいな格好で忍び寄る。
光を吸い込んだふかふかの絨毯が、掌をくすぐる。
こんな場所で寝転がったら、眠くなるのが当然だ。
近くまで忍び寄ったあたいは、四つんばいのまま、清四郎の顔を覗き込んでみた。
無防備な寝顔は、普段の済ました優等生顔からは想像もできないくらい、可愛らしい。
「・・・せーしろー 」
そっと名前を呼んでみたけれど、清四郎は目覚めない。
嫌味でいけ好かないヤツが見せる寝顔が、あまりにもあどけなくて、笑いがこみ上げてきた。
駄目駄目、ここで声を立てたら、清四郎が起きてしまう。
あたいは、こみ上げてくる笑いを噛み殺しながら、ずっと清四郎の寝顔を眺めていた。
チビの頃から見ているのに、いくら見ても見飽きない、大好きな恋人の顔を。
ふと気づくと、ぽかぽかの日差しが、あたいの髪まで温かくしてくれていた。
絨毯はふかふかで、あたいに早く寝転がれと囁いている。
誘惑に負けたあたいは、絨毯の上にころんと寝転がった。
そして、清四郎に身体を寄せて、顔と顔をくっつけた。
「・・・ん・・・」
眠っていても、恋人の存在が分かるのか、清四郎があたいを引き寄せる。
あたいは、されるがまま、清四郎の腕の中に納まった。
清四郎の腕の中はぬくぬくで、心まであったかくなる。
絨毯はふかふか。
降り注ぐお日さまはぽかぽか。
そして、清四郎の腕の中は、ぬくぬく。
気持ちがいいものに包まれて、だんだんと眠くなってきた。
ふわあ、と欠伸をひとつして、あたいは清四郎に擦り寄り、眼を閉じた。
たまには、ふたりで日向ぼっこしながら、お昼寝するのも悪くないな、なんて思いながら。
ふかふかで、ぽかぽかで、ぬくぬく。
それは、とっても幸せな、冬の日の、極上なひととき。