青と白の視界が、冷たい風に浚われた瞬間、そこは灰色の世界へと変貌を遂げた。
轟音を伴う、この地、特有の天からの恵み。
スコールの激しさは、ふたりを外界から遮断した。
「退屈ですか」
窓辺に立つ、愛しい女の後姿を抱きしめる。
「ううん」
悠理は小さく頭を振り、廻された腕にそっと手を添えた。
「ワクワクしてるんだ」
「まさか、この雨の中泳ぎたいとか言うんじゃないでしょうね」
「んな訳ないだろっ。きっとこんだけ降れば後で虹が出るだろ?それを見たいんだ」
「海にかかる虹ですか」
「クサ〜」
くくくくと笑う悠理を抱く腕に更に力を込めてやる。
「く、苦しい!」
腕をパチパチと叩いてくる悠理に、フッと笑い、その力を少しだけ緩めた。
「夜までには止むよなぁ・・・。暗くなったら虹なんて見えないし」
「すぐ止みますよ」
空を仰ぐ悠理の髪に口付ける。
「すぐ?」
振り向き、見上げてくる。
「そうすぐに―――」
だから、それまでキスをしよう。
次に目を開けた時、お前の望む七色の橋が見えるまで。