「目が覚めましたか?」 目を覚ますと、そこには清四郎の笑顔があった。 「おはよ〜」 半分眠ったままの声で、挨拶を交わす。 清四郎からは額にキスが落とされた。 「そろそろシャワーを浴びましょう。学校へ行く用意をしないと」 「え、もうそんな時間か?」 悠理は慌てて時計に目をやる。 だが、まだ少し早い。 「大丈夫だよ、まだ。それよりもうちょっと寝かせてくれ〜」 清四郎の胸に顔をすり寄せる。 「ダメですよ。ほら、シャワーを浴びればスッキリしますから」 「なんだよ。あたいが浴びたいって言ってもダメだって言うクセに」 「一人で行こうとするからですよ」 「あ〜、でもやっぱもっと寝る。昨日お前があんなにヤルからあたいまだ身体がだるいんだ。シャワー浴びるんなら一人で行ってこいよ」 自分を離したがらない清四郎から逃げる為、悠理はとある作戦を立てた。 しかし所詮清四郎に敵うはずもなく、見事に失敗。結局しつこいお仕置きを受けるハメになったのだ。 その所為かいつもより身体がだるい。 「人の話聞いてます?僕は一緒に行きたいんです」 悠理の身体を無理やり起こす。 「もう、勝手なヤツだなぁ。行けばいいんだろ、行けば」 決してシャワーを浴びるだけでは済まない事がわかっているだけに、今日は気が進まなかった。 だが、文句を言いつつもベッドから降りようと身体を動かした瞬間。 悠理の身体が崩れ落ちた。 それに気付いた清四郎は慌てて抱き上げる。 「どうしたんですか、急に!」 「わ、わかんない。なんだか上手く立てないんだ」 悠理は清四郎に捕まったまま、何が起こったのかわからないというような表情でその顔を見上げる。 清四郎は、そこであるコトに思い当たった。 「とにかくベッドへ」 悠理をベッドへ寝かせると、さも可笑しそうに笑い出した。 「な、なんだよ〜」 不安げな悠理ににっこり微笑む。 「どうやら昨日少し無茶しすぎた様ですね。腰が抜けたんですよ、きっと」 「はぁ?なんだよそれ!!む、無茶って、無茶したのはお前だろ!!」 「すいませんね。でも、悠理がろくでもない事考えるからですよ」 「だーっ!!人の所為にすんな!どーすんだよ、学校行けないじゃないか!!」 「今日はおとなしく寝てなきゃだめでしょうねぇ」 「なんで、お前は平気なんだよ!!」 「なんでって言われても。・・・なんならどこまで僕の腰が持つか試してみます?」 真っ赤になる悠理の顔を覗き込む。 「ふざけんなーーー!!」 「良いじゃないですか、学校休めるんですから。それともそんなに行きたかったんですか?」 清四郎は意地の悪い笑顔を向けた。 「くっーーー!覚えてろよ!!」
悠理は、笑いながらバスルームに向う清四郎の背中にグチグチと文句をたれると、しぶしぶ枕もとに置いてあった携帯を引き寄せた。 ボタンを押す音で清四郎が振りかえる。 「どこに電話するんですか?」 「魅録んとこだよ。今日学校休むって一応言っとかなきゃいけないだろ」 「そんな事しなくても僕が言いますよ」 「なんでお前が“あたいの欠席の理由”知ってんだよ」 「じゃ、なんで魅録なんですか」 清四郎はむっとした。 (なんで、魅録なんだ。野梨子でも可憐でもイイじゃないか) 「なんでって、おんなじクラスなんだから当然だろ?」 そうこう言っている間にも魅録と電話が繋がった。 悠理は口元に指を当てて静かにするように合図する。 「あっ魅録か?あたい、悠理」 『どーしたんだよこんな早く』 魅録はまだ眠そうな声をしている。 「うん、実はさ・・・ひゃぁっ!!」 『ど、どうしたんだ!悠理!!』 いつのまにか隣に戻ってきていた清四郎が、携帯電話をあてているのとは反対の耳に噛みついていた。 思わず声をあげてしまった悠理は、慌てて言い訳する。 「な、なんでもない。ちょっとしゃっくりが・・ひっく・・・」 ワザとらしいその言い訳に清四郎はニヤリと口元を上げると、首筋から胸にかけて唇を這わせていった。 『大丈夫か?』 魅録の心配する声が聞こえる。 必死で身体を離そうとする悠理の腕を軽くあしらい、手を悠理の秘部へと滑らせていく。 「だ・・大丈夫・・。っくっ!」 清四郎の指が敏感な部分を撫で上げるので、上手く喋る事が出来ない。 『なんか喋んのも、辛そうだな』 悠理の状況に気付くはずもない魅録は本気で心配しているようだ。 「う・・うん・・。なんか・・・熱っぽくってさ・・ん!!」 清四郎が悠理の唇に口付ける。 『大丈夫か、お前。風邪でもひいたか』 「ぷはぁっ!!あ、あぁ、そうみたい。だからさ、今日ガッコ休むから・・」 『そうか、わかった。アイツらには俺から言っとくよ。・・・それよりさ、そこに誰かいるか?』 「だ、だ、だ、だ、誰もいないよ!なに言ってんだよ!!」 『そ〜かぁ?いや、なんとなくそんな気がしたからな』 「そ、それじゃ頼んだぞ。じゃぁな!!」 悠理は一方的にまくし立てると慌てて電話を切った。 「おや、もういいんですか?」 悠理の身体から顔を上げた清四郎は何事もなかったような涼しい顔をしている。 「お前、いい加減にしろよ!お前がヘンな事ばっかするから、まともに話せなかったじゃないか!!」 「ヘンな事ってこう言う事ですか?」 悠理の胸の先端をきつく吸い上げる。 「・・んはぁっ」 その反応に満足すると、 「大体、休むってひとこと言うだけでしょ。何をそんなに話すことがあるんですか?」 と意地悪く言った。 悠理は反論できずに「う〜っ!」と唸るしか出来ない。 そんな悠理を見て微笑むと、やりかけたことは最後までしないと気が済まない完璧主義の清四郎は、そのままその身体を貪っていった。 だが悠理とて、このままおとなしく抱かれるつもりはない。 一晩中抱かれ続け腰も立たなくなっているいうのに、これ以上されては本当に体がもたない。 だが、身体で抵抗しても所詮力では敵わないことも知っている。 考えを巡らせた挙句、無駄だとは思いつつも言葉で抵抗を試みてみる。 「お、お前シャワー浴びるんじゃなかったのかよ。こんなことしてたら遅刻するぞ!!」 清四郎の動きが止まる。 「それもそうですね」 驚くほどあっさりと聞き入れ、悠理から身体を離した。 「ほ、ほら!さっさとシャワー浴びてこいよ。あたいは立てないから後からゆっくり浴びるし」 悠理はここぞとばかりに、手をシッシッとやるように振ってベッドから追い出す。 おとなしくベッドから降りる清四郎に、悠理はそっと安堵の溜息をついた。 「悠理、ちょっと」 安堵したのも束の間、清四郎がベッドサイドで手招きしている。 悠理はここで逆らってへそを曲げられては大変だと、重い腰を引きずるようにベッドの端へと移動した。 「なんだよ」 そう言うか言わないかの瞬間、悠理の身体がふわりと宙に浮いた。 「えっ?」 悠理は清四郎に抱きかかえられていた。 清四郎は真っ直ぐバスルームへと向っている。 「な、なにすんだよー!」 清四郎の腕の中で暴れる悠理。 「ほら、そんなに暴れると落としますよ」 「降ろせーーー!!」 「うるさい。じっとしてろ」 「嫌だぁ!!」 「さっき僕が散々火をつけたのに、あんな中途半端なところで終って悠理は平気なんですか?」 「ぐっ」 「ほれみなさい。それにシャワー、悠理も浴びたいでしょ。一人じゃ行けないんだから僕が一緒に行ってあげます」 「何が、“行ってあげます”だよ!!ただ単にお前がやりたいだけだろ!!」 「なんとでも言ってください。逃げたければどうぞ」 余裕の笑みを浮かべ、今にもスキップでもしそうな足取りでシャワールームへと消えていった。
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