二月だというのに、まるで春の日差しのような暖かな土曜日の午後。 都心の公園には、サラリーマンと思しき数人の男が、何をするわけでもなく、ただボーっとしていた。 その中で、ラフな格好の、そのサラリーマンたちよりは少し若く見える男が、噴水の縁に浅く腰掛け、小説を開いていた。 時折、腕に嵌めた時計と公園内の時計に目をやっている。 待ち合わせの相手がまだ来ない。そんなところだろう。 だが、苛々しているわけでもなく、時計を見るとにやりと笑ってまた小説に目を戻していた。
暫くして、その男に近付く女の姿があった。 待ち合わせていた相手なのだろうか。 その女は、やはり若いようだった。 気温も春並だからなのか、コートもなしのその女性は、体のラインにぴったりと沿ったワインレッドの短めのセーターに、チョコレート色のタイトなミニスカート。そして、膝下までブーツを履いている。 周りの男たちが、思わず、上から下まで舐めるように見てしまうほどの顔立ち。 女は、真っ直ぐその男に向かっていった。 しかし、女が近付いても、その男だけは顔を上げなかった。 気付いてていない訳ではないようなのだが・・・。 女は男に近づくと、少し腰をかがめて何か話しかけた。
「おにぃさん。あたいと遊ばない?」 「いいですよ。いくらですか?」 男は小説から顔を上げることなく、問い直した。 「安くしとくよ。一億でどうだ?」 「それは本当に安いですね」 「だろ?本当はあたいなんかだと一兆はくだらないんだけどさ、今日は特別にサービスしてやるよ」 「ほぉ。それはそれは。じゃぁついでにもうひとつ特別サービスで、ココでお相手してもらいましょうか」 男は、そう言うと漸く顔を上げた。 女の腕を引き自分の膝の上に腰掛けさせる。 「ちょっ!ちょっと待て!なにすんだよ!!」 「"お相手”してくれるんでしょ?」 男は、女の首筋に唇をつけるとそこに跡を残した。 「ひゃぁっ!こら!清四郎!!お前、こんなトコで!!」 「誘ってきたのは悠理のほうじゃないですか」 清四郎と呼ばれた男はにやりと口端を上げ、悠理と呼んだ女の唇を自分のそれで塞いだ。 そのまま舌を絡め、腰を抱く。 だが、悠理のほうも大人しくはしていなかった。 腕を突っ張り清四郎と体を離す。 「いい加減にしろ!このスケベ!!変態!!こんな真昼間の公園でいきなりなにすんだよ!!」 悠理は清四郎の膝から慌てて降りると、真っ赤な顔で怒鳴った。 だが、清四郎は余裕の笑みを絶やさない。 立ち上がると、悠理の腰に腕を回した。 「そんな格好で来るから悪いんですよ。しかも、僕のことはっきりと誘いましたよね。特別サービスつきで」 「あ、あれは、ただの冗談だろ!」 「じゃぁ、この格好は?ミニスカートなんて、初めてじゃないですか」 耳元でそう囁く様に言うと、そのまま耳を口に軽く含んだ。 「あぁっ・・・。やっ、せ、せーしろ!ホントいい加減にしろ!」 「何をいい加減にするんですか?」 「何をって!!今日のお前変だぞ!!いきなり、こんなトコでこんなことするし!!」 「変だとしたら、それは悠理の所為ですよ。ミニスカートなんて穿いてきて・・。僕を挑発してるんですか?」 「ミニスカートぐらいで、挑発されるな!こ、これはだなぁ・・・・・。これは、ただ・・・、偶にはこんなのもいいかな・・なんて・・・。こないだ、可憐たちと買い物行ったとき・・その・・お前が・・・・、よ、喜ぶわよ・・とか、可憐が言うし・・・」 悠理は真っ赤になって俯きながらぼそぼそと呟いた。 「いい友人を持ちましたね。お互い」 「冗談じゃないわい!!」 にっこり微笑む清四郎に、悠理は食って掛かるようにその顔を睨みつけた。 「と!とにかく、やっぱあたいこんなの脱ぐぞ!」 「ココでですか?」 「馬鹿なこと言うな!いいから服屋付き合え!」 「映画はどうするんです?悠理が遅刻してくるから、観たいと言ってたヤツ、そろそろ始まりますよ」 その言葉に悠理はぐっと詰まった。 今日は悠理の憧れ、A.シュワルツネッガー氏の最新作を見に行く予定だったのだ。 試写会に招待されていたのだが、その日清四郎に拘束され行くことができなかった。だからこうしてわざわざその埋め合わせとして、普通の映画館で見るという約束をしたのだ。 「え、映画は次の回見ればいいことだろ。それより、このままの格好でいつまでもいるほうが、映画見れなくなりそうだわい!」 悠理は、映画も捨てがたかったが、清四郎がこのままですむはずないことも知っていた。だから、一刻も早く、肌を隠す服装に着替えたかった。 「僕はどうせならその格好のままのほうが良いんですけどね。その方が、後々都合が良いし」 「何の都合だよ!!このスケベ!!」 清四郎はあまりの剣幕の悠理に、少しむっとしたようだったが、気を取り直すようにまた微笑んだ。 「ならこうしましょう。着替えるのは認めますよ。その代わり、次の三つの中から選んでください。いいですか?三択ですよ」 「は?選ぶって何をだよ。大体、何が認めますだよ。エラソーに・・」 悠理は不審そうに清四郎の楽しそうな顔を覗き込んだ。 「いいですか? 1、ホテル 2、映画館 3、ココ」 「服屋が入ってないじゃないか。しかも、ホテルってなに考えてんだよ」 「何って。ナニですよ」 清四郎は、にやりと笑って答えた。 「お前な!!あたいの話聞いてんのか!」 「聞いてますよ。だから、ちゃんと着替えるのは構わないから、と言ってるでしょ」 「そういうことじゃない!!しかもなんだよ!ホテルじゃなかったら、映画館か、ココって!」 「何処にします?」 「何処もヤダ!」 悠理がそう怒鳴りつけると、急に清四郎の顔が真剣なものになった。 「どうして、そんなに嫌がるんですか・・。そんなに僕に抱かれるのが嫌ですか?」 悠理の頬に大きくて暖かい手が添えられた。 真っ直ぐ見つめてくる。 「こんなに愛してるのに・・・」 「せ、せぇしろ・・・」 切なげなその声と眼差しに、悠理は視線を外せなかった。体中が熱くなる。 「嫌、ですか・・・?」 「そ、その・・・お前とするのがヤダとか、そういうんじゃなくて・・・。あたいも・・・えと・・・そ、その・・・お前のこと・・・・あれだし・・・・」 清四郎は悠理を抱きしめた。 優しく髪を撫でられ、悠理も背中に腕を回す。 「僕のこと?」 「だ、だから・・・わかってるくせに・・」 「なら、場所は何処がいいです?」 「そ、そんな・・・映画館とかココとか・・そんなこと、お前も思ってないんだろ」 「もちろんですよ。悠理の声も姿も、誰にも見せたくなんかないですからね。じゃぁ、近くのホテルに」 悠理が腕の中で僅かに頷いた。 その途端、清四郎は勢いよく悠理の体を離した。 「じゃぁ、早速行きましょう。確かこの公園を出たところに一軒、ビジネスホテルがありましたよね」 にっこり笑って悠理の手を引く。 「せ、せいしろ・・・?」 明らかに楽しそうな清四郎の背中に、悠理は漸く嵌められたことに気付いた。 ・・・・・・が、時すでに遅かったらしい。
ふたりは近くにあったビジネスホテルに飛びこむようにして入った。 無論、飛び込む様だったのは清四郎だけだったのだが。 ホテルのフロントの男はふたりをちらりとだけ見ると、キーをすっと差し出し、また奥へ戻っていった。 悠理はこれからふたりがしようとすることを見透かされている様で真っ赤になり、清四郎の手をぎゅっと握った。 「な、なぁ、やっぱ止めない?」 「何をですか?」 清四郎はニヤリと笑うと、悠理の手を握り返した。 「何をって・・」 「ココが嫌なら、やっぱりさっきの公園でします?それとも、映画館でも、悠理がどうしてもって言うんなら、僕は一向に構いませんよ」 「ココでイイです・・」 満足そうに口端を上げた清四郎はエレベーターに向った。 階数表示を押し、ドアが閉まる。 他に客のいないエレベーターはふたりを乗せて、軽々と上を目指した。 清四郎は悠理を抱きしめると、驚いているのを無視して、深く口付けた。 「ん!ん〜〜!!」 ミニスカートの中に手を滑らせる。 悠理はその手を止め様と、清四郎の腕を掴んだ。だが、清四郎の指が敏感な所に触れると、その手は意思には反し動きを止めた。 抵抗がなくなると、清四郎は漸く顔を離した。 「たった2回のキスだけで、こんなに濡れてますよ。悠理の身体は随分敏感ですね」 「誰のせいだよ・・・」 悠理は恥かしくて清四郎の顔を見れずその胸に顔を埋めると、それだけ言うのが精一杯だった。
清四郎は部屋の前に着くと、先ほど渡されたキーを差し込み、ドアを開けた。 悠理は上目遣いに清四郎をちらりと見ると、まだ照れているのか恥かしそうに部屋に入った。 その後に清四郎も続く。 清四郎が入ると、ドアは勝手にバタンと音を立てて閉まった。 それが合図だったかのように、清四郎はまだ部屋の中央にすら辿りついていない悠理を後ろから抱きしめた。 「せ、清四郎!」 「早く欲しいでしょ」 清四郎は耳元でそう呟くと、悠理の身体を反転させ、自分の方に向けた。そのまま壁に押しつける。 「ベッド・・・」 横に控えるベッドに視線をやる悠理の顔を両手で挟みこみ、口付ける。 さすがに抵抗しなくなった悠理は入ってきた清四郎の舌を自ら絡め、腕をその首に回した。 清四郎はキスをくり返しながら、片手で腰を抱くと、もう片一方の手を悠理の身体のライン通りに這わせていった。 「ん、ふん・・」 唇と唇の間から悠理の甘い息が漏れる。 清四郎の手がセーターの裾から中に入っていくと、首に回る腕に僅かに力が入った。 だが、構うことなくその膨らみに触れる。 もうすでに硬くなっている先端を下着の上から転がす様に、押しつぶす様に弄ぶ。 「やぁ・・ん・・・」 思わず唇を離し、声を漏らした悠理を追いかける様にまた口付けた。 そのまま、頬から耳に唇を這わせていく。 「せぇしろぉ・・」 「なんですか?」 清四郎は唇を先ほどの続きと言わんばかりにまた耳を執拗に攻め始めた。 指先は胸を蹂躙し、唇と舌は耳の溝を攻め続ける。 悠理は腰と脚に力が入らず、縋る様に清四郎をの首を抱きしめた。 「頼むから、べっど・・・」 「ベッドがどうしました?」 清四郎の指先は胸から、なぞる様に膝まで降りていく。 そして、また上に向って、滑っていった。 だが、今度は胸へ行かず、スカートの中に入っていき、そのままの勢いでスカートをたくし上げた。 タイトなミニスカートは悠理の下腹で葛折の様に止まった。 露になった大腿部と下着の前に清四郎は跪いた。 悠理の右足を抱え、肩に担ぐ。悠理は思わず清四郎の頭に両手をついた。 「やぁ・・・ん・・・はぁ・・・・」 清四郎の舌が、そこをなぞる様に蠢くと腕を突っ張り、その顔を離そうとした。 だが清四郎は、やんわりその手を自分から離すと、また舌を動かした。 「はぁ・・・んん・・・・せ、せしろ・・・」 小さな下着は清四郎の唾液と、悠理の中から溢れるものでもうぐしょぐしょになっている。 清四郎は邪魔なその下着を脱がそうと、腰の部分に手をかけた。だが、その手を止める。 「悠理、破ってイイですか?」 下着を脱がそうにも、ブーツが邪魔だった。だが、ブーツを脱がせる余裕は清四郎にも悠理にもない。 悠理はもう何も考えられなくなっているようで、快感に逸らしていた顎を小さく動かした。 清四郎はそれを肯定と受けとめ、下着の縫い目の部分に力を込めると、一気に両手で引き裂いた。 完全に外気に晒され、悠理の腰が少し沈む。 清四郎は片腕で腰を抱き、もう片方の手で膝を撫でながらまた舌を這わせていった。 「やっ・・・せしろ・・・」 清四郎は視線を悠理にちらりとだけ送ると、膝を撫でていた手をトロリとした液体の滴るそこへ宛がった。 中指で優しくなぞる。 「っん!」 悠理の腰がまた少し沈みかける。 清四郎は愛しそうに唇を幾度も下腹部へ押し付け、指を動かし続けた。 「せ、せぇしろぉ・・」 清四郎は指でその場所を攻めながらも立ち上がると、悠理に口付けた。 悠理は清四郎の首に両腕を回し、必死にしがみついた。 指の動きが早くなり、その数も増えて行くにつれ、悠理の足から力が抜け出した。 だが、それとは逆に腕に込める力はきつくなっている。 清四郎は貪る様に悠理の唇、頬、首筋、耳朶に吸い付いた。 「やぁっ・・せしろ・・はやく・・・」 「早く、なんですか?」 指を挿しいれ、親指で蕾を押しつぶす。 「あぁっ!!・・はやく・・・せぇしろ・・の・・」 「僕の?」 「たの・・む・・から・・・」 「どうしましょうかねぇ・・・指だけじゃだめですか?」 「せしろぉ・・」 清四郎はにやりと口端を上げると、さらに激しく指を動かした。 「いいですよ、悠理。無理は良くないですからね。一度楽になるといい」 悠理の内壁を執拗に指の腹で攻め上げる。 「あっ!あ!ダメだっ!!せぇしろっ・・・!!」 悠理は清四郎の頭をかきむしるように抱きしめると、大きく顎を仰け反らせ、次の瞬間、高みへと昇りつめた。
「大丈夫ですか?」 悠理は荒く息をついて、返事をしない。 体からは完全に力が抜け、腕は清四郎の肩に乗せているだけになっている。 清四郎は片腕でその体を支え、悠理の中から指をそっと引き抜いた。 「あぁ・・ん・・・」 「歩けます?」 優しく触れるだけの口付けを、悠理の顔のいたるところに落としながら訊いた。 「・・・たぶん・・だいじょ・・ぶ・・・」 「それは良かった。じゃぁ次はシャワーを浴びながらと言うことで」 清四郎はにっこり笑った。 「えっ!!ま、まだすんの・・・?」 思わず、顔を離して驚く悠理。 「当たり前でしょ。僕は"まだ"なんですから」
清四郎はシャワーの後はベッド、それにソファの上でもできそうだな、それから・・・、等と悠理に気付かれないように、部屋に視線を巡らせた。
おわり
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