あ〜ぁ、アイツまた怒られてやんの。 今日は何したんだぁ? あれだけ、清四郎の前では良い子にしてろって言ってんのに。
あたいが部屋に戻るとアイツが清四郎に怒られていた。 部屋はぐっちゃぐちゃ。 散らかし過ぎだな。 こういうトコはあたいに似たのかなぁ、やっぱり。
「せーしろぉ、もぉイイじゃん、許してやれよぉ」 あんまりアイツが泣いてるから、つい口を出してしまった。 そしたら、逆に怒られた。 「ダメですよ。こいつは嘘をついたんです。それだけは許せません」
嘘?アイツが? そりゃ清四郎も怒るわな。嘘つかれんの大っ嫌いだし。 お前もさっさと謝っちゃえよ。 謝ったら許してくれるんだからさぁ・・。 って、そんな簡単に謝るわけないか。 意地っ張りは清四郎譲りだもんな。
でもこうやって見ると、やっぱ清四郎ってカッコイイよなぁ・・。 怒られんのはヤだけど、あの顔は好きかも。 だって、怒ってるくせに眼はあんなに優しいんだからな。 アイツの事を真剣に怒ってるからこそ、あんな表情なんだろうなぁ・・・。 さすが、あたいの清四郎だ。惚れなおしちゃうじゃん。
「何笑ってるんですか」 「え?笑ってないよ」 「笑ってた。・・・ともかく悠理からもなんとか言ってやってください。部屋を片付けないのは悠理似で仕方ないとしても、嘘をつく事だけは許せません。あっ、こら!」
清四郎があたいに気をとられてる間に、こいつあたいのトコに逃げてきた。
「お前、どんな嘘ついたんだよ。ほら、さっさと謝っちまいな」 悠理は膝にしがみつくアイツの肩を引き離して顔を覗き込んでいる。 いっちょまえに、唇を噛み締めてだんまりを決込む気らしい。 何であんな強情なんですかねぇ。 悠理も大概だったがそれ以上だな。
それにしても悠理、お前もいい加減にするんだ。 いつまでそんな顔してるつもりだ。 ちょっと、甘やかしすぎじゃないんですか。 僕にはそんな顔した事ないでしょう。 ・・・また、惚れなおしてしまうじゃないですか。
僕がこうやって瞬間ごとに愛しさを募らせてるなんて、きっと悠理は全く気付いてないんでしょうね。 僕もまさか自分の子供にまで嫉妬する様になるとは思いませんでしたよ。 もちろんアイツも愛してることは確かなんですけどね。 でも、それとこれとは別です。 悠理は誰にも渡しません。 という訳で、そこから離れてもらいますよ。
「コラ、いつまでそうやってるつもりだ」 無理やり悠理から引き離し、抱き上げた。 その小さな顔は必死で涙を堪えてる。 悠理の前では泣かないつもりですか? なかなか男らしいじゃないですか。
「ほら、清四郎に嫌われてもいいのか?」 悠理の一言で、歪んだ顔を大きく振る。 可愛いじゃないですか。 「お前も悪い事したってのはわかってんだろ?」 悠理の問いに素直に頷く。
「わかりました。じゃぁ、嘘をついた理由はもう聞きません。その代わり、ちゃんと謝りなさい。悪い事をしたと思っているのなら素直に謝るんだ」 抱き上げたまま、その眼を見つめる。 「・・・ごめんなさい、パパ」 「よく言えましたね、エライですよ」 ぎゅーっと小さな手でしがみつくこいつは、さすが悠理の子供だと思う。 悠理もよくこうやって、ケンカの後抱きついてきますもんね。
「良かったな。清四郎、許してくれて」 漸く笑顔になったこいつに、悠理も笑顔を返している。 そんな悠理に、どうしようもなく触れたくなった。
突然僕が顔に触れたから驚いたような表情をしてる。 「な、なに?」 「愛してますよ」 真っ赤になる悠理の頬にキスをした。
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