心配・・・?
「お前ねぇ、心配しすぎ」 悠理は呆れたようにそう言うけれど、なんと言っても初めてのことなんだから用心に越したことはない。 僕は、妊娠しても必要以上に体型の変わらない悠理が心配で仕方なかった。 普通妊婦というのは、子供の体重と羊水の分で、体重が増えるのは当たり前としてもそれより増えて当然なはず。 もちろん増えすぎるのも問題だが。 だが、悠理の場合来月には臨月を迎えるというのに一向にその体型は妊婦らしくない。 そりゃもちろん、少しばかりお腹は膨らんでいるけど。 でも本当にこんなに細い腰で大丈夫なのだろうか。 妊娠してからというモノ、あの化け物並の食欲は更に増したというのに。 「悠理、いくら妊婦にも運動が必要だからといってしすぎなんじゃないですか?ちっとも体重が増えないじゃないですか。お願いですから、もう少し大人しくしてて下さいよ」 「それ、お前が言うか・・・」 「なにがですか?」 悠理がジト目で睨んでいる。 「なにがじゃないわい。毎晩毎晩、いーや、この間は昼間もだったよなぁ」 日ごと悠理への想いが増してきている僕としては、片時も離れていたくない。だから。 「あれはスキンシップでしょ。大体、運動というほど激しくもないし」 「嘘つけ!お前が変なトコにキスマークなんて付けるから、あたいこの間の検診の時恥ずかしくて仕方なかったんだからな!!」 そんなモノ誰も見ていないと思うんだが。 僕はそう思ったけど、言わずにいておいた。 こういう時反論しようもんなら、今晩が危うい。ここは大人しくなだめておいたほうが無難なのだ。 「わかりました。スイマセンでした」 「なんだよ、その適当な謝り方は」 「なに言ってんですか、ちゃんと心が篭ってるでしょ」 「ふんっ」 「それより、本当に少し運動控えてくださいよ」 「わーってるよ」 本当にわかってるんだろうか。やっぱり不安だ。 安請け合いはコイツの十八番だからな。 いや、でもさすがに自分が妊婦であることは自覚しているようだし。 でも、心配だ。 とにかく、あいつ等にも釘を刺しておかないとな。 可憐や野梨子はともかく、美童と魅録は相変わらず悠理には甘いですからね。 遊びに連れて行けなんて言われたら、仕方ないなぁとか言いながら付き合うに決まっている。 全く、僕の悠理をなんだと思ってるんだ。 やはり可憐と野梨子にも言い聞かせておかないといけませんねぇ。 それぞれの相手に悠理に構わせないように、と。 「お前、顔怖い。なに怒ってるんだよ」 不審そうな悠理に、余裕の笑みを返した。 「別に、怒ってはいませんよ。ただ本当に心配なんです」 悠理の頬を両手で挟み、瞳を覗き込みながら囁く。 「大丈夫だよ。お前とあたいの子供だぞ?めちゃくちゃ元気に生まれてくるに決まってるだろ?」 両手から伝わる悠理の体温が少し熱くなった。 こんなトコは、相変わらずですね。 恥ずかしそうに瞳を伏せる悠理に、そっと口付けた。
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