嫉妬・・・?
僕がドアを開けると、僕達の天使を抱いた悠理がいた。 もちろん、悠理たちがいることを知ってて入ってきたんだが。 「コラ!はいってくるなー!出て行け!」 これはないんじゃないかと思う。 悠理は、授乳しているのを僕に見られるのが恥ずかしいという。 今更なにを、と思うのだが、頑として聞き入れない。 まぁ、僕だけでなく、お義父さんを含め男は全員その姿を見ることは許されないのだが。 それにしても、僕は夫だし、父親だし、どうして見てはいけないのか。 納得がいかない。今日こそ、はっきりさせてやる。 「悠理、僕だってその子の父親ですよ。子育てはふたりでやるものじゃないですか。どうして、そんなに嫌がるんです」 「だから、恥ずかしいからだって言ってんだろうが」 悠理は僕に背を向けてそう言った。 「あのねぇ、今更恥ずかしいも何もないでしょうが」 「そっ、そう言う事言うな!」 どうして、悠理はこうも照れるのだろうか。他人がいる前ならともかく、今は僕しかいないというのに。 大体夜はもっと大胆・・・。 「スケベ」 「な、何言うんです」 「今、お前絶対ヤラシイ事考えてただろ。このスケベ。だからイヤなんだよ」 どうして、バレたんだ。そんな変な顔をしていただろうか。 いや、そう言うことじゃない。悠理を愛する事のどこがイヤラシイと言うんだ。 「悠理、いい加減にしないと怒りますよ」 「何がだよ、本当のことだろ」 ふん、と鼻を鳴らすと、愛しそうに腕の中のわが子を見た。 ほら。やっぱり綺麗じゃないか。 それは思わず、見とれてしまうほど美しい光景だった。 悠理の憎まれ口も、その姿で消えてなくなるほど。 こんな姿を見るな、だなんて…。 僕はそっと二人に近付いた。悠理も諦めたのか、もう何も言わなかった。 さすが、悠理の子供と思えるほど、一生懸命に母親の乳を吸っている。 そして、それを優しく見守る悠理。 僕の惚れた、たった一人の悠理。 「愛してますよ」 「え?」 言わずにいられなかった。 だが、悠理の方は不思議そうな顔をしている。 そりゃ、今まで、イヤラシイ顔をしていたらしいから無理もないのだろうが。 それでも素直に受け取ってくれるらしい。 「ばぁか」 嬉しそうに微笑んだ。
・・・・・・それにしても。 コイツ、いつまで飲んでる気だ? 僕が部屋に入ってくる前から、飲んでたはずですよね。 そりゃ、悠理譲りの食欲なのはわかる。 だけど、それにしたってこの小さい身体のどこに、それだけ入るって言うんだ。 はっ。 もしかして、ただしゃぶっているだけじゃないだろうな。 もう、乳自体は飲んでいないんじゃないか? それなら、おしゃぶりで十分じゃないか。 いくら男の子だからといって自分の子供に嫉妬する気は全くないが、こういう事は小さい頃からはっきりさせておかないといけませんからね。 「悠理、もう十分なんじゃないんですか?」 「う〜んでもコイツ、なかなか離そうとしないし・・・」 やっぱりだ。 やっぱり、もう飲んではいなんじゃないですか。 「授乳も疲れるでしょう。そろそろこれにバトンタッチして、悠理は少し休んだほうがいい」 僕はそばにあった、おしゃぶりを差し出した。 「そうだな。別に疲れはしないけど、ほっとくとコイツずっとこのままだし」 なに? 今なんと言った。 それは、いつも、という意味ですか。 良かった、無理にでも授乳に割り込んで。 これからは、いつもチェックしておかないといけませんな。 「あ、寝ちゃってるよコイツ」 無邪気に笑いかける悠理に微笑んで、腕の中の子供を抱き上げた。 「お腹一杯になったんでしょう、ベッドに寝かしてきますよ」 僕はコイツをベビーベッドに寝かせながら、その小さな耳元に顔を近付けた。 「悠理はパパのモノなんですからね」 確かに、大人気ないとは思うけど、こればっかりは譲れない。そこのところきちんと、教えておかなければ。 まあ、僕の子供だからきっと聞き分けはいいはず。 これからは、そう心配することもないでしょう。 「どうしたんだよ」 「何がです?」 悠理の元に戻った僕の表情は先ほどまでと違ったらしい。 「なんか、お前嬉しそう」 そりゃね、と呟いて、悠理の唇を塞ぐ。 「―――次は、僕の番ですよ」 ニヤリと笑って見せた僕に、悠理は真っ赤になって抵抗した。 「休めって言ったのお前だろ!」 「疲れてないって言ったの悠理ですよね」 どんなに暴れても、きっと五分後には大人しくなってる。 まずは手始めにぎゅっと抱きしめましょうか。
|