おっきな手 

 

 

トントン・・・って。
悠理、誰か来たよ・・・。
悠理・・・?

おっきな手・・・。
「良かった・・熱は下がったみたいだな」
「パパ・・・・」
お仕事、もう終わったの?

「起こしてしまいましたか」
「んーん。だいじょぶ。起きてたから」
もうね、あんまり体、だるくないんだ。
でも明日まで、ちゃんと寝てなきゃダメだって、悠理が言ってたから。

って、あれ、悠理は?
どーしたんだろ。さっきまでずっといてくれてたのに。
…悠理?何処?

「ママは?」

「悠理は寝てしまったみたいですよ?」
ホントだ。なんかさっきからシーツ引っ張れないと思ったら。
悠理ってば、そんな恰好で寝たら今度は悠理が風邪ひいちゃうよ?
「パパ・・。ママ・・」
「心配しなくても大丈夫ですよ。悠理はものすごく頑丈にできてますからね」
って、悠理が起きてる時はそんなこと言えないくせに。

「さぁ、もう寝るんだ。今は下がっていても朝になったらまたどうかわからないですしね」
え〜・・・・。
もうちょっと・・・一緒がいい。
僕が寝ちゃったらパパ、お部屋に戻っちゃうもん。
そ、そりゃ・・・悠理がいてくれればいいけどさ。
でも・・その・・・偶には・・・・。

「パパぁ・・・」
このおっきな手、好き。
「仕方ありませんねぇ。ちょっと待ってろ」

でも僕は待ってられなくて自分で起きた。
そしたらパパが背広を着せてくれた。
「シーツは悠理に取られちゃいましたからね」って。

パパに抱っこされるの好き。
悠理がぎゅっとしてくれるのも好きだけど、抱っこはパパの方が好き。
「こんなトコは本当に悠理とそっくりだな」
ふふーーん、パパの匂いー。
なんか、また、眠くなっちゃった・・・。

「ふっ、寝てしまいましたか・・・」
うーうん。寝てないけどねー。
でも眼は開かないかもおぉ・・・・・。
眠い・・・。
でもベッド嫌ー。パパといる〜。
ん?
「悠理、起きろ。風邪引くぞ」
あ〜悠理ってばまだ寝てるんだぁ。
でも頑丈ならいいじゃないかー。このままここで〜。
って、あ、起きちゃったのか。

「あれ?せーしろお」
「せーしろお、じゃありませんよ。ほら、部屋に戻りますよ」
「んーでも・・」
悠理の手だ〜。冷たーい。

「もう熱も下がってるし、大丈夫ですよ」
え〜。でもパパも悠理もいてよう。もうちょっと一緒がいい。

「ホントに?もう大丈夫か?」
「心配性ですなぁ。大丈夫。僕と悠理の子供ですよ」
そうだよ、パパと悠理の子供だもん。僕強いんだよ。
って、ダメじゃないか、僕。そんなこと思っちゃ。
体、だるいって言ったらいっしょにいてくれるかな。
でもパパ、お医者さんだもんなー。バレちゃうよなー。
ちぇー。

「大丈夫ですよ」
「せぇしろお・・・」
あ、悠理泣きそうかもー。もう、すぐ泣くんだかr・・・んん?
いま、ちゅ、って聞こえた?

あ、また・・・。

「んっ」

また・・・。

まだ・・・。
・・・。
「っやっ。せーしろ・・・」
・・・・・。
・・・・・・・。
「んんっ」
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・ねぇ、何回する気?



「部屋に戻りますよ」
「ん」
ちょっと待て。
悠理は置いて行け。

わかった、こういう時に使うんだ、「前言撤回」って。
パパなんて、嫌いだ。
やっぱり嫌いだ。

・・・ん?あれ?
あーっ。
足音、1個しか聞こえなかった。
パパのしか聞こえなかったー。
悠理は?
「いない・・・」

抱っこしたんだ、抱っこ。
パパ、悠理のこと抱っこしたんだー。
僕にする時は仕方ない、とか言ったくせに、悠理にはなんにも言わないんだー。
う〜・・・・パパのバカー!

 

 rival

 素材:ミルキーウエイ