「大きいなぁ・・・・・」 悠理は清四郎の腕に抱かれながらその胸板に手を這わせた。 武道で鍛え上げられた硬い大きな胸筋。 今の関係になる前も、こうなってからもこの胸と腕に幾度となく包まれた。 一番安心できる場所。 その持ち主は情事の後の心地よい疲れに身を任せ、無防備すぎるほどの顔で眠っている。 悠理はその顔を見つめ、薄く開いた唇に自分のそれを重ねた。 「寝顔はかわいいんだけどなぁ」
いつもいつもこの男のペースにはまってしまう。 正論を並べたてられる。ニヤリと口端をあげられる。 切なげな瞳で見つめられる。質すような眼で射貫かれる。 本当に心配してくれているときもあれば、ただ楽しんでいる時もある。 絶対に敵わない存在。 想いに気付いてからも、その関係だけは形を変えることはなかった。
もう一度唇を重ねる。 手で、顔から肩へとそのラインをなぞる。 無防備な清四郎に、唇と掌で愛撫を繰り返す。 唇は、顎から首筋へと降りていった。 いつも清四郎がする様にキツク吸い上げる。 「お前も一回、言われてみろってんだ」 何度やめろと言ってもやめない所有の証。 こんなことをしなくても、もう誰のものにもならないと言うのに。 悠理はその跡を確認し、満足そうに頷いた。
「朝が楽しみだなぁ〜。おやすみー、せーしろーっちゃん」 悠理はクシシシシと笑うと、元の腕の中へと戻った。 戻ったつもりだった。 いきなり腕を掴まれる。 「な!なに!」 「途中で止めないでくださいよ」 清四郎は目を閉じている。 「えっ?」 「どうせするなら、最後までしてください」 清四郎の目がゆっくりと開いた。 いつもの余裕たっぷりの顔。 悠理は自分の顔から血の気が引いていくのがわかった。 「お、起きてたのか?」 「悠理が起こしたんでしょ。さぁちゃんと責任とって貰いましょうか。悠理が寝こみを襲うなんてコトするから、暫く眠れそうになくなってしまったじゃないですか」 「だ、誰が寝こみ襲ったってんだよ。しかもなんだよ、責任って!!」 真っ赤になって身体を離す。 「責任は責任ですよ。好きな女性にキスされて身体触られて、それで男がどうにもなんないと思います?」 「そ、そんなの一人でなんとかしろよ!!」 悠理は真っ赤になると身体を背けた。 「なんで、すぐ傍に悠理がいるのに自分で何とかしなきゃいけないんですか。元はと言えば悠理がしかけてきたんですよ。最後までちゃんとしてもらうまで寝かせませんからね」 「そ、そんなハズいこと言うなー!!さっき散々やっただろ!!」 「散々したのに、仕掛けてきたってことは足りなかったと言うことですよね。と、言うわけで、さあ」 清四郎は悠理の腕を引き寄せ自分に覆いかぶらせた。 「何が、さぁだよ」 「続き」 「つ、続きって!!」 悠理は今になってやっと意味がわかった。 清四郎がするのではなく、悠理にしろと言っているのだ。 「偶にはいいでしょ?してくれないとこの腕離しませんよ」 ますます真っ赤になる悠理。 顔からは今にも湯気が出そうだ。 「やだー!!なんであたいがしなきゃいけないんだよー!!」 「ほらほら、時間の無駄ですよ」 清四郎は悠理の頭を抱えこむとその唇を重ねた。 「んぐっ!!」 いきなりのことに抵抗しようとした悠理だが、絡めてくる清四郎の舌の動きにだんだん身体が熱くなってきた。 思わず自分もその動きに応えてしまう。 「やっと、その気になってくれましたか?」 清四郎は顔を離すと嬉しそうにいった。 「えーい!!もうこうなったらヤケクソだ!!!清四郎覚悟しとけよ。今までの恨み全部晴らしてやる」 「なんの、恨みなんですか・・・」 清四郎は溜息をついた。
悠理は荒々しく清四郎に口付ける。 そして、いつも自分がされているのと同じ順序で耳や首筋にもキスをしていった。 その小さな掌は清四郎の胸をまさぐる。 平に触れる小さな突起を指でつまんで、転がした。 「なぁ、男でもココって感じるのか?」 「・・あぁ、感じますよ」 押し殺したような清四郎の声。 悠理はそれに満足すると、その場所に口をつけた。 舌でそこを弄びながらさらに手を下の方へ滑らせていった。 熱く硬いものに触れる。 悠理は慌てて手を引っ込めた。 「悠理」 清四郎が熱い眼で見つめている。 悠理はおずおずとそれに手を触れた。 そっと、指でなぞってみる。 清四郎の身体がビクンと揺れる。 (清四郎に触られてるときのあたいもこんなカンジなんかなぁ・・) 悠理は思い切ってそれを握ってみた。 清四郎から先ほどの溜息とは違う息が漏れる。 ゆっくりと手を動かした。 それがさらに熱くなる。 掌から伝わるその熱に悠理の身体もさらに熱くなっていった。 「清四郎。気持ちいい?」 「えぇ、いいですよ・・」 清四郎は眉をひそめてはいたが、その顔は上気していた。 「そっか。なんだか、そんな顔の清四郎はじめて見たな」 最早恥かしさはなくなっていた。 悠理はシーツの中に潜り込むと、清四郎のその部分に口をつけた。 「ゆ、悠理!!」 さすがに慌てて起きあがろうとする清四郎を眼で制すると、その先端を口に含み舐めてみた。 「はぁっ」 清四郎が仰け反る。 その反応にもう少し奥まで咥えてみる。 上目遣いに清四郎を窺うと、先程よりもキツク眉をしかめていた。 悠理は清四郎の足の間に身体を入れると、清四郎のそれをしっかりと握り口を動かした。 清四郎の手が悠理の頭を押さえる。 悠理は構わず、続けた。
「なぁ、清四郎?我慢してる?」 悠理はさらに表情が険しくなっている清四郎を見て、口を離した。 「・・・大丈夫ですよ。いつもの場所はもっとキツいですからね」 「バカ」 「でも、そろそろいつもの場所にも行きたいですね」 「あたいも、清四郎が欲しい」 悠理のそこは、清四郎を喜ばせることによっていつのまにか熱く濡れてきていた。 清四郎のを手にしたまま悠理は自分で跨った。 その先がそこに触れる。 ただそれだけで、悠理は大きく仰け反った。 「あぁ・・」 徐々に身体を落としていく。 「ア、あぁ・・・」 「くはっ!悠理・・・」 悠理は清四郎の胸に両手をつくと、腰を動かし始めた。 「んはぁ・・。はぁ・・・」 清四郎が悠理の腰に手をやる。 悠理はその腕に手をやり身体を仰け反らせると、さらに激しく動いた。 「せーしろっ、あたい、あたい・・もぅ・・」 「悠理、まだだ。まだダメだっ」 清四郎は身体を起こして、今にも倒れそうな悠理の身体を抱きかかえるとそのまま後ろに倒した。 悠理の腕が清四郎の首にしがみつく。 清四郎は今まで動かなかった反動の様に激しく腰を打ちつけた。 「あっあっあっ!」 悠理の呼吸が荒くなる。 「悠理、いきますよ」 清四郎はそういうと一気に悠理の身体を貫いた。
「偶には悠理にしてもらうのもやっぱりいいモンですね。これからも時々してください」 にっこり笑う清四郎。 「だ、誰が!!あたいもうヤダかんな!!」 真っ赤になる悠理。 どうやら一心地ついて自分のしたことが急に恥かしくなったらしい。 「そんな事言わないでくださいよ。悠理の舌、良かったですよ」 「バカたれーーーー!!!」 真っ赤な顔して、思いっきり清四郎に枕を投げつけた。
清四郎は、飛んでくる枕を受けとめながら ―――色々教え込む余地はありそうですね。 と密かにほくそ笑んだ。
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