清四郎の手が、ウトウトとしていた悠理の胸を包んだ。 優しく揉みあげ、頂の少し手前の薄く色づいた箇所を指でなぞる。 先ほどまでの熱が漸く冷めた体に、そんな悪戯をされ、悠理は後ろから回されているその腕を挟むように脇を絞めて抵抗した。 だが手は胸に残ったままである。 清四郎は構わず、掬いあげるように揉みあげたり、先端に触れるか触れないか、という様に悠理の身体を弄んだ。
「ううん・・止めろよお。あたい、もう眠いんだ」 「寝れば良いじゃないですか」
その言葉に、悠理は遊ぶ清四郎の手を掴んだ。 「止めないんですか?」 掴んだだけで止めようとしないのをからかう様に言う。 「・・・・・・止めるよ」 しかし清四郎の無骨な人差し指は、徐々に立ち上がってきたその場所の周りをクルクル撫で続けていた。
「や・・ん・・・」 悠理が身じろぎをする。 「止めて良いですよ?」 挑発するように強く乳房全体を揉む。 首筋に唇を這わせると、悠理の体が弓なりに反り返った。 「ん・・ヤダ・・もう寝よーよ」 そう言いながらもやはり、悠理は清四郎の手を掴んだまま与えられる刺激に耐えている。
枕にしていた清四郎のもう片方の腕に顔を擦り付け、さも逃げるかのようにうつ伏せになろうとした。 しかし悪戯な手の方は相変わらず掴んだままだったので、清四郎は後ろからのしかかる様に覆いかぶさった。 「止めましょうか?」 うん、と頷くも、動きを止めると力強く握り返される。 動きを再開すると、「ヤダ」と身を捩る。 「どうします?」 おかしそうに聞いてやる。 悠理の身体は既に熱くなっていた。
「もうイイよ、しろよ」 「しろよ?」
先端には触れぬまま、ギリギリの処まで絞るように強く揉んだ。 「あぁ・・・んっ…して、よ・・・」 「何を?」 「お願いだからぁ・・・」 指で一瞬、一番先を掠める。 「はぁ・・ん・・・もっとぉ・・・」 「もっと、どうするんですか?」
胸から手を腹に這わせ、首につけていた唇も離す。 「や、清四郎っ」 まるで永遠に離れてしまったように切なげに名を呼ばれ、清四郎はニヤリと笑った。
「どうしたいのか、して見せてください」
完全に悠理の体から離れる。 少し離れて硬直した白い背中を眺めた。
「そんなのヤダ」 こちらを向かないまま、小さな声で不貞腐れたように言う。 「そうですか。わかりました」 即答すると、悠理の体が勢いよく振り返った。 「え、やっ!」 本当に逃げられると思ったのか、腕を力一杯掴まれる。 目は置いていかれた子猫のようだった。 抱きしめたくなる衝動を抑え、先ほどと同じ事を言う。
「シテ、ミセロ」
甘えるように、しかし困ったように、自らの細い指先を噛んでいた悠理は、上目遣いに清四郎を見つめた。 「して欲しいのなら、どうして欲しいのか、お前がやってみせろ」 ん?と悠理の顎を掴み、顔を正面に向かせる。 赤くなる顔は、責めるように清四郎を睨みつけていた。 しかし一旦熱の篭った身体は、自分一人ではどうしようもないらしい。
「せいしろが・・・して・・・」
悠理にしては精一杯の言葉なのだろう。 目の淵に涙が滲んでいた。
「まずお前がするんだ。どうして欲しい。さっきしたみたいにか?それとも違う風に?どうして欲しいのか、僕の身体に教えてくれ」 腕を掴んで引き寄せると、覆いかぶらせた。 困惑した顔で見つめてくる悠理の唇を親指でなぞる。
「さぁ。それとも、もうこのまま終るか?」
唇を噛んで、首を横に振った悠理は、俯き、そしてそのまま清四郎の胸に顔を埋めた。
ちろり。
先ほど、清四郎が散々避けて通った胸の頂に柔らかい刺激が走る。
――――ちろり、ちろり。
「舐めるだけ?」 肩を強張らせた後、悠理の薄い唇がその場所を挟んだ。 舌先でつつきながら吸い上げる。 反対側は、手で、指で、擦った。
「これだけで、お前は満足できるのか?」 「や・・・お願い。触って」 「何処に・・」 「お願い・・・お願いします・・・」 清四郎の首に痕をつけ、悠理の唇が顎を辿る。 「ここも・・・・して欲しい」 あぁ、と低くなる声で応えてやると、照れたように微笑み、唇を合わせてきた。
おずおずと入り込んでくる舌を絡めとってやる。 吸い上げるように強く絡めると、悠理の鼻から抗議とも快感とも吐かぬ声が漏れた。
頬を両手で掴み、無理やり顔を離す。 驚いたように見つめる悠理を反対に睨んだ。 「手はどうした。キスだけでイイんですか?」 「や、ごめん」 「ごめん?」 「・・・・ごめんなさい」 その答えに満足すると、「よく言えました」と自ら唇を合わせた。 舌を絡め唾液を絡めながら、今度は悠理の手が清四郎の身体を弄っていく。
髪、耳、首、肩、腕、背中、胸、腹、腰・・・・。
顔を離すと、手が這ったその場所を今度は舌と唇で追いかけた。執拗に。
「こうして欲しいんですね」 腰まで唇が来た時点で、その顔を両手で掴みあげる。 戸惑う顔がそこにあった。
「わかったしてやろう」
「や、まだ・・・・まだ、だめ・・・、」
もっとして欲しいから、もっとするの―――・・・・。
熱くたぎる清四郎自身に口をつけようとした悠理の身体を腕を掴んで反転させた。 何が起こったかわからず、清四郎の腰を横目に仰向けになっている薄紅に色づいた身体をそのまま引きずりあげた。
「まだ駄目だ。それはこれからもっと時間をかけて教えてやる。そんな簡単には教えられない」 組み敷き、鼻先が触れ合うほどの距離で視線を合わせる。 悠理の目が困惑から、懇願に変わった。
「ね、や。するから・・・ちゃんとするから・・・だから」 「あぁ、心配しなくてもお前にはちゃんと御褒美を上げますよ?」 その言葉を与えてやると、全体重をかけられてのしかかられているというのに、悠理は嬉しそうに目を閉じた。
与えれられる快楽に、あられもない嬌声を上げる。 唇が落とされるたびに、身体を、持ち上げるように清四郎に擦り付ける。
「離さないで・・・もっとして・・・」
「お前次第だ」
胎内に挿りこんだ清四郎をも、悠理は強く抱きしめるように包み、 やがて男の全てを飲み込み果てた。
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