チーム
「PINKY」 の勢いは目を見張るものだった。 悠理が幾つかの撮影を終えるころにはすでにトップブランドとなっていた。 そしてそのすべてで 「PINKY」 の顔となっている悠理は一躍カリスマモデルと なっていた。 名前も年齢も明かさない彼女をマスコミはこぞって取り上げていた。
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「全く、これがほんとに今一番話題のカリスマモデルの姿なの?」
剣菱邸に集まっていて6人の中、可憐の声が響いた。 この部屋の主、悠理はソファで大の字になりお腹を出しながら熟睡中であった。 可憐の声に苦笑いを浮かべた清四郎はそんな悠理の枕もとに腰をおろした。 すると一瞬目をあけた悠理がすぐにその目を閉じたかと思うと、するすると清四郎の ひざの上に頭を乗せ再び眠りだした。
「よく懐いてんなー」
その言葉に清四郎は片眉を上げ 「おかげさまで」 と返すと彼女のやわらかそうな 髪をなぜた。 その幸せそうな寝顔に微笑を落とした清四郎が
「明日打ち合わせの後食事会をするそうなんです。皆も一緒にって言われてるんです が都合はどうですか?」
その言葉に皆がそろってOKの返事をだした。
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翌日の打ち合わせが行われた。 もう終わろうかというころ、レイコが言いにくそうに切り出した。
「ここ数日なんだかつけられてるみたいなのよ」 「えっ」
声を上げる有閑のメンバーをよそにチームの面々は次々と 「あら、私もよ」 「私も」と全員が声をあげた。 だが皆、恐れているとも驚いているとも思えない様子だ。 さすがに百戦錬磨のスペシャリスト達だ。 彼女達には予測の範囲だったようだ。
「まぁ、これだけのメンバーでこれだけ話題になればやっかむやつはでてくるわ よ。」 「そうそう。まぁ、それだけ注目されてるって事よ。」 「悠理ちゃんは正体がばれてないから大丈夫だと思うけど、一応皆にボディーガード を就けましょうか。」 何かあってからじゃ遅いし、と続けるレイコに
「あー、あたいはいらないから。」
と悠理は笑顔で返した。 「でも・・・」 と心配するレイコ達にむかって、悠理は自分の親友達を指差した。
「いざとなったらこいつらもいることだし心配ないよ。」 「僕もついてますし大丈夫ですよ」 「それより早くご飯いこ!!」
そういって悠理が席を立った。 チームの皆は心配をしながらも2人の言葉に席を立った。
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会場を出て近くのレストランまで歩くことにした。 楽しみだと歩く悠理とその一行のまえに数人の男が現れた。
「PINKYってとこの人たちだろ?」 「それが何か?」
そうレイコが答えた瞬間男達から拳が飛んできた。
「伏せて!」
悠理が叫んだ。 チームの皆が伏せた頭上では殴りあう音が聞こえた。 そして皆の目にはあざやかに男達を沈めていく悠理と清四郎と魅録の姿が映ってい た。 だが、それも瞬きを幾つかするうちに終わってしまった。
「あたいらにけんか売るなんて百年早いわ!!」
そういいきる悠理の横で清四郎は魅録に視線を向けた。
「○×組のチンピラだな。誰かに頼まれたんだろう。」 「そうでしょうね。美童。」 「わかってる。ちょっとまってて、聞いてみるよ。」 魅録と美童が携帯を取り出したころ清四郎は悠理に 「おばさんに菊翁さんに連絡がとりたいとお願いしてみてくれませんか。こんなこと がもう起きないようにしておきたいんです。」 「分かった。」
一連の光景を呆気にとられてみていたレイコ達に野梨子と可憐が声をかけた。
「怪我はないですか?」 「・・・えぇ。そうだわ、警察に・・・」 「その必要はありませんわ。じきにすみますもの。」
野梨子が笑顔でそういい終わったころ清四郎達の方も一段落着いたようだった。
「レイコさん、相手もわかりました。でもまた同じようなこと次々起こっては面倒な のである方のところへお願いにいってきますので食事会の時間を少しずらしていただ けないでしょうか。」 「・・・えぇ、皆かまわないわよね?!」
少々呆気にとられながらもうなずく皆を見て悠理は清四郎の手を取り笑顔で駆け出し た。 「ヤッター!よし、清四郎、早く行くぞ。飯が遅くなるじゃんかー」 先ほどとは別人のような極上の笑顔である。 残った魅録たちがチームの皆に事情を説明すると、さすがのスペシャリスト達も驚き の声を上げた。 清四郎と悠理が出かけたのは関東一のやくざの大親分だというのだ。 今回の犯人もすでに明確に突き止め次の手を打ったというのだ。それもあの短時間に だ。
「確かに悠理ちゃんにボディーガードはいらないわね。」 「この子達がいてくれるのなら私達にもいらないわよ。」
悠理たちが戻ってからの食事会には皆の楽しそうな笑い声が響き渡っていました。
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