++++ 愛は地球を救う‥‥らしい ++++

BY れん様

 

 

 

ずずっ…… と鼻をすすり、悠理は目を覚ました。

薄暗さの中で暫くぼーっとしていたが、ベッド脇の小さな明かりに焦点が合うと

まわりを見渡して自分が部屋のベッドで眠っていたことがわかる。

ふと、そばに暖かなぬくもりを感じた悠理は顔を少しあげると、

隣では静かに寝息を立てて寝ている清四郎がいた。

悠理はそんな清四郎の顔を見て微笑む。

そのまま清四郎の顔を眺めていると、急にぶるっと背中が震えた。

 

「さむぅ……風邪かなぁ?」

 

と呟きながら、ベッド脇のテーブルに置いてあるエアコンのリモコンに

手を伸ばして掴んだ。

 

『 室温 20℃ 』

 

リモコンに表示されている温度を何度も確認する。悠理は小声でぶちぶち言うと

室温設定を25℃にセットして布団の中に潜り込んだ。

ピッと鳴った電子音とともに暖かな風が背中に当たり、悠理はあくびを

ひとつするとゆっくりと瞼が落ちていった……

その時、

さっき聞いたばかりの電子音が鳴ったと思ったら、暖かな風まで止まってしまった。

もう少しで眠りに入ろうとしていた悠理は、少しムッとする。

おかしいなぁ?と思いながら悠理は布団の中から手だけを伸ばしてリモコンを探す。

彷徨いながらも、やっとリモコンを手に入れた悠理の手首が突然ぐっと掴まれた。

 

「何をしているのですか?悠理」

「清四郎?」

 

悠理の手首を掴んだまま上半身を起こした清四郎が悠理にたずねた。

「ごめん、起こしちゃったか?寒かったから部屋の温度上げようと思ってさ‥」

手に持っていたリモコンを押そうとした瞬間、横からヒョイと奪われた。

「‥‥まったく、僕が20℃に設定しているのを、わざわざ変えなくても‥」

「げっ、20℃なんて寒いじゃないか!!」

 

悠理は取り上げられたリモコンを奪い返すため手を伸ばした。

が、そんな悠理の仕草に慣れている清四郎は軽く悠理の手をかわす。

「せーしろちゃん、お願い。温度上げて?」

「悠理のお願いでもダメなものはダメです」

「いいじゃ~んかぁ、そもそも、なんで20℃なんだよぉ!」

 

瞳に涙を浮かべ胸の前で手を合わせて『お願いをするポーズ』が可愛いですね、

そんな事を思いながら悠理を見つめている清四郎の口元がだらしなく緩んだ。

 

「悠理、そこに座りなさい」

「ほへ?」

 

命令口調でいう清四郎の声に悠理は本能的にベッドの上で正座をする。

 

「いいですか。世界では今、地球温暖化防止のため…温暖化防止とは

『大気中の温室効果ガスの濃度を安定させること』なんですが、

日本でも環境省が温暖化防止のために室温を20℃にし、

暖房に頼り過ぎず寒いときは衣類を着る。『WARM BIZ』という発案が

新聞やニュースで流れているのを聞いたことがあるでしょう?」

「‥‥‥‥‥」

 

清四郎の口から出た言葉の殆どが漢字ばっかりだと思いながら悠理の口元が

引きつる。

 

「えっーと‥‥つまり20℃だと、地球にやさしいって事だな!」

「くくっ、はい、良く出来ました」

笑いながら清四郎が悠理の頭を撫でた。

 

「そっか、あたい薄着だもんな」

悠理は半袖Tシャツと短パンだった自分の姿を見て納得する。

こめかみに手を当てながら、『あれ』ってどこに片付けたっけ?と首を傾げた。

ようやく思い出した悠理がベッドから降りようとすると、またもや清四郎に

腕を掴まれた。

 

「何処に行くんですか?」

「モーモーちゃん、取りにいってくる!」

「‥‥モーモーちゃん??」

清四郎の眉間に皺がよる。

「ん‥って知らない?モーモーちゃんはあたいのお気に入りのパジャマだじょ!」

 

実物を見たことは無いが、何となく『モーモーちゃん』を着た

悠理の姿を想像した清四郎は見たいような見たくないような…

でもきっと悠理なら可愛いかも…とひとり悩んでいる。

 

清四郎は何かひらめいたのか、にっと笑うと掴んだままの悠理の手を思いっきり

引っ張り自分の胸元に悠理の身体を収めた。

「うわぁ!」引っ張られた時に清四郎の胸で鼻を打った悠理がキッと清四郎を

睨む。

 

「痛いじゃないか!清四郎!!」

「大丈夫ですよ、ぺしゃんこには成ってません」

そう言いながら悠理の鼻をつまむ清四郎。

「お前なぁ‥地球にはやさしいくせに、なんで、あたいにはやさしくないんだよ」

「おや?心外ですな。僕ほど悠理に優しい男はいないと思いますがね」

「ど、どこが!」

 

悠理の抗議も軽く聞き流した清四郎は、そのまま悠理をベッドに押し倒した。

きょとんとしたまま悠理は清四郎の顔を見つめる。

 

「せーしろ?」

「これだと寒くないでしょう?」

 

我ながらいい考えだ、と思いながら清四郎は悠理の首筋に唇を落とす。

頬に掛かった髪から清四郎の匂いがして悠理はドキンとした。

 

「‥ねぇ、何してる?」

「寒がっている悠理を暖めてあげようかと‥‥」

「いや、いいです‥‥あたいモーモーちゃん着るからさ~」

 

悠理は清四郎に組敷かれたままの状態で手足をバタバタさせ必死で

逃げようとしながら、『モーモーちゃん』の言葉に清四郎の眉がピクっと

上がったを見て、ふと、思ったことを言ってみた。

 

「もしかして、お前も着たいのか?」

「……………」

 

図星?悠理が思った途端、清四郎の顔が降りてきて

 

 

ガ ブ

 

 

「ぎゃああああ、お、おまえ、今、く、首‥噛ん‥」

「バカなことを言う子には、お仕置きが必要です」

 

一見、誰が見ても優しそうな微笑みを浮かべている清四郎。

しかし悠理にとっては、『この微笑み』が一番怖いのである。

この後にどんなお仕置きが待ち構えているかと思ったら寒気がした。

 

「世界中で一番優しいのは清四郎さまです」

「ほぉ~、ようやく気付きましたか。では僕からも悠理に‥‥」

清四郎はそっと悠理の唇をなぞる。

「僕のすべてを心で、その唇で感じて下さい。悠理‥‥愛してる‥」

 

耳元で囁かれた清四郎の言葉に胸が暖かくなる。

清四郎からの甘くてとろけそうな深い口付けに悠理は本当の優しさを知った。

 

 

 

 

後日、悠理によって清四郎の『モーモーパジャマ』が特注された。

ふたりでお揃いの『モーモーちゃん』を着る日は‥‥今夜だったりして。ウシシ。

 

 

 

Fin 

 


 

イチャイチャな2人を書いて見たかったのです…が無理でした(撃沈)

書いてて恥ずかしくなってきました。バカップルみたい(笑)

環境省さん、すいません。でも二人は地球に貢献してるので許して下さい。

朝礼時「温暖化」を熱く語った上司、ネタ提供感謝です。  

そして、こんなネタでもアップして下さるフロ様にお礼を。

読んで下さった皆様、ありがとうございました。

  

 

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