『太陽は罪な奴』 文: hachi様/絵:フロ はじまりは、いつも唐突だ。 今日だって、あたいの気持ちなんて、お構いなし。 夏休みの特別講習から解放された、昼下がり。 いつものクールな表情で、 「ちょっと、生徒会室につきあってください」 なんて、何気なく言われたら、つきあうしかないじゃないか。 なのに―― 倶楽部の面子は、講習が終わると同時に帰ってしまった。 夏休みに入ったばかりだし、生徒会の仕事なんて、あるはずないから。 だから、あたいも、あいつが忘れ物を取りに行く程度だと思っていた。 ドアが施錠される、その瞬間まで。 「うわ、ホントに暑そうだな。」 あたいは窓から外を眺めて、嫌悪丸出しで呟いた。 「夏ですから、当然ですよ。」 あいつはいつもの通り、涼しげな声。 たまには同感してくれたって、いいじゃないか。 そう文句を言おうとしたとき、あいつの手が腰に巻きついた。 「うわ。暑いからくっつくな!」 慌てるあたいを他所に、あいつは涼しい声。 「夏だからこそ、暑さを楽しめるんですよ。」 熱い手が、易々と侵入してくる。 「ば、馬鹿!やめろ!」 いくら密室とはいえ、カーテンは開け放してある。 それに、窓の下には、帰宅途中の生徒が沢山いる。 「やだ!昼間っから、何を考えて・・・」 必死の抗議は、夏よりも熱い口唇に塞がれた。 本当にこいつは唐突だ。 いきなりスカートに手を入れて、下着を脱がしにかかる。 下着を抜かれ、ぎゃっと悲鳴を上げるあたいを、ひょいと膝の上に乗せる。 「悠理・・・好きですよ。」 世界広しと言えども、真昼間から彼女の下着を脱がせた挙句、愛を囁く男がどこにいる? あたいは広い胸をどんと突いて、くちびるを尖らせた。 「す、好きなら何をしてもいいって言うのかよ!?」 「好きだからこそ、何でもしたいと思うのが、男心です。」 ちゅ、と軽くキスされて、身体がじんと痺れる。 そこにすかさず、ふたたびのキス。 吐息混じりの、愛の囁き。 気がつけば、キスに夢中になっていた。 あいつの素肌が感じたくて、ボタンを外す。 あいつの鼓動が聞きたくて、シャツを割る。 重なり合ったあいつの口唇から、笑いが漏れた。 馬鹿にされているみたいで、カチンとくる。 「何で笑うんだよ!?」 身体を離して文句を言うと、厭味な笑顔が返ってきた。 「どうして僕を脱がしにかかるんです?」 「そ、それは・・・」 そんなこと、言えるはずがないじゃないか。 真っ赤になって、意地悪な恋人を睨む。 なのに、あいつは笑みを浮かべたまま。 心の中まで見透かされているみたいで、口惜しい。 「戸惑っている貴女も、可愛いですよ。」 そこで、不意打ちのキス。 口惜しいけど、ここでギブアップ。 あたいはあいつの首に手を回して、身を委ねた。 「それで、します?しません?」 そんなことまで言わせるなよ。馬鹿。 あたいがどう答えるかぐらい、とっくの昔に分かっているんだろ?
作品一覧 別室TOP |