昼寝

                            文・あき様/絵・ネコ☆まんま様

  

 

 

ピ〜ヒャラ、ピ〜ヒャラ、テンツク、テンツク♪

午後のやわらかな風に乗って、祭囃子が流れてくる。

今日は、この辺りの鎮守様の秋祭りだ。

正午に神輿への御霊入れが行われ、今は町の中を神楽を載せた山車と共に練り歩いている。

 

悠希も滞在中に仲良くなった近所の子どもたちと一緒に、先程まで子ども神輿を担いでいた。

隣町の子どもと交替する為の接待所で、お菓子とジュースをたらふく詰め込んでついさっき戻ったところだ。

「シャワーを浴びたら、昼寝だぞ。」

「やだ、ねむたくないもん!」

僕の言葉に悠希が反抗した。

「じゃぁ、いつもの時間に3人で寝るとしよう。」

僕は、夕方から店開きする屋台や、夜の花火大会のことを承知の上で悠希に告げた。

「とーちゃんのいじわる!!」

悠希が悪態をついた。

「ほう、そういうことを言っていいのかな〜?」

悠理が悪魔の微笑みと称する顔で、僕は笑いかけた。

「う・・・・、ごめんなさい。やっぱり、ひるねする。」

悠希が冷や汗をかきながら作り笑いで答えた。

 

2人でシャワーを浴び、寝かしつける為に悠希に絵本を読んでいるところへ、

大人の神輿を担ぎに行っていた半被姿の悠理が戻ってきた。

「遅かったですね。一体どこまで担いできたんですか?」

「二つ先の接待所まで。」

僕の問いかけに悠理がVサインで答えた。

「かーちゃん、すご〜い!」

トロンとしていた悠希は、すっかり目覚めてしまったようだった。

「物好きですねぇ。」

「そうか?面白かったぞ。清四郎も担げばよかったのに。」

半被を脱いで、さらし姿になった悠理が屈託なく笑った。

「かーちゃんも、はやくシャワーしてねようよ。とーちゃんいじわるだから、

 ひるねしないとおまつりにつれてってくれないって。」

「それは、困るな。」

そう言って悠理が、バスルームへ消えた。

 

すっかり目の冴えてしまった悠希は、夜店で何を食べようかとか何を買おうかとか

目をキラキラさせてはしゃいでいる。

こういうところは、本当に悠理そっくりだと思う。

そんな姿が堪らなく愛おしくなって、後から捕まえてぎゅっと抱きしめた。

「なんだよ、とーちゃん。はなせよ〜、あついだろ〜」

腕の中で悠希がジタバタしている。それでも僕は、わざと放さない。

だんだん力も強くなってきて、大きくなったものだと実感する。

 

「なんだ悠希、まだ寝てなかったのか?」

悠理がタオルで髪を拭きながらバスルームから出てきた。

「とーちゃんが、ねかしてくれなかったんだ。」

「こらっ、人のせいにするんじゃない。」

僕の言葉に、悠希が大きく頬を膨らませた。

「清四郎は、意地悪だからなぁ。」

悠理が悠希に笑いかけた。

「ほんと、ほんと。」

悠希も笑った。

 

「ほらほら、2人とも。ちゃんと昼寝しないと本当に連れて行かないぞ。」

僕の悪口で盛り上がっている2人に釘を刺した。

「やだ!いく〜」

そう言うと悠希は、昼寝用の布団にもぐり込み、僕と悠理はその枕元に座った。

「とーちゃん、さっきのつづきよんで。」

小さな暴君のおねだりに、僕は絵本の続きを読み

 

 

 

不意に肩が重くなった。悠理のほうが先に眠ってしまったようだった。

「あ〜。かぁちゃんがもうねてるよ。」

悠希が大きな声を出した。

「シー、静かに。張り切ってお神輿を担いできたから疲れてるんだよ。このまま寝かせてあげよう。」

僕はそう言ってウィンクすると、悠理をもたれさせたまま、また絵本の続きを読み始めた。

しばらくして、もう1つの規則正しい寝息が聞こえてきた。

悠理を起こさないように悠希の隣にそっと寝かせると、僕はソファに座りなおし

読みかけの本を開いた。

 

ピ〜ヒャラ、ピ〜ヒャラ、テンツク、テンツク♪

祭囃子が呼んでいる。

 

ピ〜ヒャラ、ピ〜ヒャラ、テンツク、テンツク♪

もうすぐ夏休みも終わる。

 

 

 

 

 

   

あとがき

 この作品は、ネコさまがぽち様宅(Siesta)の絵板に投稿されたイラストが始まりです。     

 絵を見たときに頭をよぎったのが、ラストシーンでした。なんとなく放ってあったのですが、

 先日自宅の近所の神社のお祭りのお囃子の音に妄想の神様がやってきて

 (どんな神だよ/^^;)、あっという間に仕上がりました。

 快くイラストの転載を承諾してくださったネコ様、ぽち様、本当にありがとうございました。

 そして、ほのぼの家族部屋を新設してくださったフロ様、いつもご面倒をお掛けしてすみません。

 

 

 

  

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