BY 樹梨様

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部屋に戻って、勉強を再開したが、すぐの例文で頓挫したようで、 頭をガシガシ書いた後、鉛筆をかじりながら、頬杖をついている。 しばらく無言で月を眺めていたが、やがて悠理がぽつりと呟いた。 「あたい、月の光も好きだなぁ」 月見だけが好きじゃないってことを言いたいらしい。
「なぜですか?」 じっと悠理を見つめるのが憚れるので、斜め後ろで本を読む振りをしていた僕が、 悠理のほうを見ると、こちらを向いて、にこっと笑って悠理が答える。
「だって清四郎みたいだじょ」 そう言って、闇夜にぽっかりと浮かぶ満月を見つめた。
僕みたい? この月の光が?
「なんかさ、月の光ってふんわり降り注ぐような感じがしないか? それにどこへ行っても見上げればそこにいるから、 いつも傍にいてくれるみたいで、ほわっとした安心した気持ちになる。 だから清四郎みたい」 月の光が、悠理の中に吸い込まれていき、悠理自身が月の光を浴びて、 輝いているように見える。
僕はもう一度、空に浮かぶ月を見上げた。 決して強くはない光が闇を照らす。 ほわっとする感じ、か。 やはり、月の女神の悠理に似合いそうですね。
うむ、でもいつもの悠理のことを考えると、 「月の光が僕みたいかどうか解りませんが、悠理は太陽かもしれませんね。」 空を見上げたままだったけど、悠理が驚いてこっちを向いたのがわかった。
「あたい?」 「ああ。暖かくて、眩しいんだ」
いつも皆を平等に照らしてくれるその温かさが、悠理の優しさに似ていると思う。 闇を吹き飛ばすほどのまぶしい光が、その笑顔のようだと思う。 僕は、満月から悠理へ視線を移すと、有無を言わせ声で、断言する。
「だから悠理は、太陽みたいだ」
凄いですよ。皆に優しくできるなんて。周りのみんなに、暖かさを与える。 だからいつのまにか、みんな悠理の周りに集まる。何かをしてあげたくなる。 僕なんて悠理とちょっと仲良くしている人がいるとすぐ妬いて、 ひどいときは睨みつけたりして。 天照大神は、自ら天岩戸(あまのいわと)に隠れてしまったけれど、 僕は、反対にそうやって隠してしまいたいと思いますよ。 みんなに、輝いている悠理の姿を見せたくはないんだ。
我ながら心が狭いと思うけれど・・・ だって好きなんですよ。こんなにも。
「そ、そうかな」 今も隣ではにかんだように笑う悠理が眩しくて。 夜の闇夜だって関係ない。 いつだって僕の中にはお前がくれる光でいっぱいなんだ。
「じゃあ、やっぱり月は清四郎じゃないかな」 「僕はそんなに優しくないですよ?」
「優しいよ。それにいつもあたいの傍にいてくれる。 凄く…凄く嬉しいんだぁ。それが・・・」
思わず言葉を失った。
悠理。悠理。 お前にわかるか?悠理。 その言葉がどれほど嬉しかったかなんて…。 僕がお前の傍にいるのは、僕がいたいからだ。 なのに悠理もそれが嬉しいと言ってくれるなんて…。
ずっと永い間居場所を求めてた。 安心する場所を求めてた。
この学校に入って、たくさんの仲間に出会って。 有閑倶楽部と称されるメンバーといつも一緒にいて、何か事件に遭っている。 独りでいるときなんてないって言ってもいいくらいだ。 その中で見つけた心地よい場所。 おまえの隣。 嫌がられても居座るつもりでいたけど喜んでもらえるなんて、 これ以上嬉しいことがあるだろうか。
思わず涙が出そうになるのを必死にこらえた。 「せいしろう…?」 黙りこくった僕の顔を悠理が覗き込む。
「僕はお前の傍にいたいからいるんだぞ。ただの我儘ですよ?」 けれど。 「でも悠理がそれを嬉しいって言ってくれるならべったりと傍にいますよ」 我ながら、思う。なんて単純…。 でも悠理はただ笑っていた。 嬉しそうに微笑んでいた。
僕は、お前の言うとおり、月でもいいかなって思いますよ。 お前がくれる光が全て、僕の力になるんだ。 太陽のようなお前の光を受けて、僕は輝くことができるんだ。 それって、本当に幸せなことですよね。 ねぇ、悠理・・・
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| あとがき 何にも、手を出せない清四郎ですいません。悠理を見つめてうっとりしかできない、 あかんたれです。 フロ様のところでは、@@@ことも、@@のこともしているのに・・・
ところで、 西洋では、月は女神で、太陽神はアポロンで男の子。 一方日本は、天照大神は太陽神で女性(男性神説もあるけれど、今回は女性神説)で、 月読神は、月の神様で男性なんです。 所変われば、全く変わってきて、面白いですよね。
って、来週の模試は、どうなったんだろう・・・ 妄想の旅に出た清四郎に、これ幸いと月見の食べ物、お酒を飲んでいる悠理がいるとか、いないとか。 |