「もうっ　清四郎なんて大っ嫌い！」

「こっちだって悠理のお守りはこりごりですよ！」

まーたケンカしている。

今日はいったいなにが原因なわけ？

いつもいつも下らないとこでケンカするからなぁ。

「うわ〜ん　聞いてくれよ、タマぁ〜」

んげっ、こっちに来た！なんでボクなわけ？

「悠理！タマに言っても無駄です！」

むっ、どういう意味ですか？清四郎さん。

「タマだって僕と同じ意見に決まってます！」

確かに清四郎さんの言うことは間違ってないけど…

「だいたい、女というものは素直が一番です。ね、フク」

は？あたし？

「少しは悠理もフクを見習って下さい！」

あたしを見習うって…悠理も大して違いがないと思うけど？

「なんだよ、それ！」

それにネコを見習えって、ちょっとむちゃくちゃじゃない？

「タマ〜」

ぎゅゅゅゅゅて、くっくっ苦しい。

「清四郎ってばさ、夕飯のあとにちょっとデザート食べたらあんな鬼の形相で

　怒るんだよ。」

ちょっと？悠理のちょっとって…

「どこがちょっとなんですか！アイスをどんぶりでおかわりする人が

　どこにいるんですっ！」

いるいる。目の前、目の前。

「いいじゃないか！すげぇ美味そうだったんだもん！」

悠理が食欲のまま行動するなんて今始まったことじゃないのに。

「どう思います？フク。」

どうもこうも、いつもと変わらないと思うけど。

「少しはフクみたいにお淑やかにしてほしいですよ。」

あーっ　清四郎さんの手でなでなでされたら気持ちよくって…　くーゴロゴロ

「ほら、フクはこんなに素直でかわいい。」

あ、ずっれーぞ、フク！ボクだってゴロゴロしたーい！

「なんだよ！フクを手なずけて。フクこっちにこいっ！」

やーーーん　だって気持ちいいんだもーん。

「ほら、フクは素直ですねぇ」

「フクはね、清四郎じゃなくって美童がお気に入りなんだよーだ。」

ふんっ　そんな何十年前の話してんのよ。

「いいえ。フクはすっかり僕にＺｏｋｋｏｎ命＜ＬＯＶＥ＞です。」

なんだ？ゾッコンラブって？

「どう思うタマ。今どきシブがき隊って。」

なに？シプガキタイ？渋柿に鯛？ボクは鯛の方が好きだけど。

「清四郎も少しはタマを見習えっつーんだよ。」

あん、なでなでの手をやめないでぇ。

「僕がタマのどこを見習えっていうんですか。」

スリスリ…　悠理のほっぺって柔らかくって気持ちがいい…。

「タマはね、寝られないときとか、いっつもいっしょに寝てくれるんだよー。」

っていうか、ボクが引っぱり込まれるって感じですが。

「絶対にバカとか言わないし。」

はい、ネコですから。

「それに…それに…」

あれ？悠理、泣いてるの？

「…悠理？」

「いた…　痛い、痛い！」

あっと、飛び降りたボク。

「どうしたんだ？悠理！」

うわっ、投げ出されたあたし。

「せ…いしろう…　お腹がいたいよぉ…」

お腹を抱えて目にいっぱい涙をためている悠理…大丈夫？

「だから言ったでしょう？」

口ではそんなこと言って清四郎さんってば優しい目をしてるし。

「うえーん　ご…　ごめんなさい…」

「いいから。ほら、ベッドに横になって。」

あっ　さっきまであたしが抱っこされてたのに〜！

まーまー　いいじゃないの。

「今、薬もってきますから」

すみませんね、いつもいつもうちの主人がご迷惑かけて。

「せいしろー…」

「なんです？」

「……」

悠理ったら顔も赤いし、声もでなくなっちゃった。

もしかしてすごい病気なんじゃないの？大丈夫かしら、清四郎さん！

と思ったら、清四郎さんったら優しい顔して微笑んでるよ。

「大丈夫ですよ。今夜はタマじゃなくって僕がずーっとそばにいますから。」

あ、ボクは用済みってことね。

「うん…　それで…」

「フクにしたみたいになでなでしてあげますよ。」

えーっ　あたしだけの特権じゃないの？

ケンカはいつものことだけど、あたしたちを巻き込むのはやめてほしいわ。

ホント、夫婦げんかは犬も食わないって、ネコだって御免だよ。

今日は清四郎さんお泊まりみたいだからあたしたち、豊作さんのところにいく？

万作さんの部屋にはアケミとサユリがいるし。

ちょっ、ちょっ、お、お泊まりって？見張ってなくっていいの？

ばっかねー、具合が悪い悠理に手を出すわけないでしょ。

清四郎さんは紳士なんだから！

その時になったらなっちゃうと思うんだけどなぁ…

なんか言ったっ？

いえっ！ささ、行きましょ行きましょ。

 おしまい♪

  あとがき

いちゃいちゃされても、ケンカをしても一番の被害は
彼らふたりではないでしょうか？
結局はタマフクみたいにじゃれたいだけだったりして（笑）
フクちゃん、私もなでなでされたい。