BY にゃんこビール様
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「今ごろうまくいってるかしら…」 可憐は頬杖をついて長い睫毛を伏せた。 「そうだな。」 魅録は前を向いたまま、ゆっくりとグラスを傾けた。 ここは銀座の並木通りの地下にあるバー・ミリオネーアのカウンター。 魅録と可憐は並んで座っていた。 「悠理…大丈夫かしら。」 野梨子が部室のテーブルにひとつ空いた席を見ながらつぶやいた。 「結構悪いのかなぁ…」 腕組みをして魅録も言う。 とうとう休んでしまった悠理のことが気が気でない清四郎は、黙ってパソコンの画面を睨んでいた。 美童と可憐はとくに心配もしてない様子でいつものように雑誌を見ながらおしゃべりしている。 「可憐と美童は心配じゃありませんの?」 そんなふたりを見て野梨子はムッとした。 「心配してるわよぅ。」 口では言ってるがちっとも心配してそうではない。 「だって、悠理を治せるのはひとりしかいないし…」 美童はちらりと清四郎の方を見た。 「清四郎は悠理がなんの病気か、わからないのか?」 魅録はずっと黙っている清四郎に話を振った。 「さぁ…僕にも検討がつきませんけど。」 パソコンから視線をそらさず清四郎が答えた。 意識的に美童と可憐と目を合わさないようにしているようだ。 「わかってるくせに…」 野梨子の耳に美童のつぶやきが聞こえた。 「美童は悠理の病気を知ってますの?」 美童は野梨子にウインクを投げて質問に答えた。 「恋の病だよ。」 「「えっ???」」 魅録と野梨子の声が重なる。 清四郎は一瞬、美童をキッと睨みつけた。 「ほらぁ〜♪お医者さまでも草津の湯でも恋の病は治りゃせぬ♪って言うじゃない。」 可憐が髪の毛を指に巻き付けながらウキウキと答えた。 へぇ、そんな歌あるんだ、なんて美童が呑気な感想。 「こっ、こいのや…やまい…だって?あの悠理がぁ?」 魅録は口をパクパクしている。 顔をピンクに染めた野梨子は、はっと黙ってパソコンと睨めっこしている幼馴染みを見た。 「…悠理の相手って清四郎ですの?」 「へっ?」 魅録ひとりあんぐりと口を開けて野梨子の顔を見た。 「………」 聞こえない振りをしているが清四郎の頬は少し赤くなっている。 「よかったじゃあまりませんの。清四郎!」 以前の婚約騒動のときとは大違い、野梨子は嬉しそう。 「…野梨子?」 思いも寄らない野梨子の態度に清四郎はパソコンから顔を上げて野梨子の顔を見た。 「想いが通じたのでしょう?悠理は清四郎のことで想い悩んでいたんですわね。」 野梨子は頬を染め、ニコニコと微笑んでいる。 魅録は呆然と野梨子を見つめた。 「ちょっと、清四郎!いつまでトップ画面眺めてるつもり?」 いつの間にか可憐は腰に手を当て、清四郎の横に立っていた。 「え?」清四郎は可憐を見上げた。 「ちゃんと清四郎の気持ちを口にして悠理に伝えないとだめよ。」 可憐は真剣な顔で清四郎に詰め寄った。 「そうだよ。悠理に笑顔を戻せるのは清四郎しかいないんだから。」 美童もまじめな顔を清四郎に向けた。 清四郎は何も言えず、座っていた。 バーーーン!!! いきなり清四郎は背中を叩かれた。 「なっ、なんですか、いきなり…」 振り返ると可憐が右手をスイングした状態で止まっていた。 「なんですかじゃないわよ!とっとと悠理の家に行く!あんたが今やるべきことはそれだけよ!」 あまりの可憐の迫力に清四郎は鞄を持ち、「お先に失礼します」と部室を急いで出て行った。 「あのときの清四郎の顔ったらなかったわねぇ。」 くすくすっと可憐が笑った。 「最近、悠理のこととなるとさすがの清四郎さんも冷静さを失ってるよなぁ。」 魅録もくっくっくっと笑った。 「野梨子もびっくりだったわ。魅録と同じでいまいち鈍感だったけど あんなに嬉しそうに喜ぶなんて思わなかったわ。」 魅録はムッとしてタバコに手を伸ばした。 「鈍感は余計だろ!」 きゃははは、と可憐は楽しそうに笑った。 しばらくふたりは黙って逸品のバーボンとマスター津守が作るカクテルを味わった。 魅録が二本目のタバコを灰皿に押しつけ、薄い唇から紫煙を細くはいた。 それを見て可憐は魅録の顔をのぞき込んだ。 「魅録はいいの?悠理のこと…」 可憐の魅惑的な瞳にじっと見つめられ、顔を赤くした。 「俺には関係ねぇーよ。」 ぐいっとグラスを空けて津守におかわりを注文する。 「そうなの?」 「そうだよ。」 ふーん、と可憐も津守にギムレットを注文した。 「…悠理の初恋かしら、清四郎って。」 可憐は津守の振るシェイカーを見ていた。 「清四郎も初恋かもな…」 ぽいっとビスタチオを口に入れた。 可憐はふぅ〜と大げさにため息をついた。 「どうりで稚拙だと思ったのよ、ふたりとも。見ててイライラしちゃったわ。」 可憐の口ぶりは、呆れているようでもあり、どこか羨ましそうでもあった。 津守がバーポンとギムレットをすっとふたりの前に置いた。 「それじゃ、ふたりの初恋成就に乾杯。」 可憐がカクテルグラスをあげてウインクした。 「乾杯。」 魅録も口角を上げて笑った。 チン!とグラスの音がカウンターに響いた。
イラスト:ネコ☆まんま様
end |
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あとがき
魅録と可憐に飲みに行ってもらいたかっただけ。 誰の何のドラマだったか、わかる人いますか〜? |