IS THIS LOVE ?

 〜 恋かも?

BY りかん様

 

 

映画を見て、そのあと食事して。

そんなことをしてから、1週間が経った。

清四郎は、あの日以来、悠理が気になって仕方がない。

どうしたことだろう?

自分のことだが不思議に思う。

何故か悠理がかわいく見える。

魅録といつものようにじゃれしているのに、魅録が疎ましく感じてしまう。

当の悠理本人は清四郎のことなんて我関せずという態度で、いつものようにつかず離れず、である。

理由はわからないが、それが清四郎の神経を苛立たせた。

 

いつものように、生徒会室で1人で事務処理をしていると、美童がやってきた。

「おや?清四郎、1人?」

「ええ。そうですけど。」

「そうなんだ。やっぱりねぇ。みんな、来づらいんだ。」

来づらいって???

そういって、清四郎の真向かいに腰掛ける。

「最近さぁ。清四郎、怖いよ。」

何を言っているんだろう?という顔で、清四郎は美童を見つめた。

「だってさぁ。いっつも苛ついてるんだよね。」

そんなこと、言われましても…。

内心思ったが、黙って聞くことにした。

「僕、その答え、知ってるけど。…教えてあげない。」

美童はそういうと、ふふんっと笑った。

「そういうのが、苛々するっていうんです。」

とうとう、美童の態度に苛ついて、清四郎は言った。

「おー、こわっ!」

おどけた態度で言って、椅子から立ち上がった。

「苛々は肌によくないよ。清四郎くん。」

そういって、美童は、カバンの中から、パックを取り出した。

「僕が使っている愛用の○ラ△のエステパックなんだ。清四郎も使ってみる?」

「いや、結構です。」

「あ、そう。」

そういって、すぐにカバンにしまう。

なんで美童はこんなものがカバンに入っているんだろう…?

そう思ったが、黙っていた。

なんだか美童と話していると、言い返さずに黙っていることが多い清四郎だった。

「んじゃ、ねぇ。今日は、デートなんだ。」

ひらひらと手を振りながら、美童は生徒会室を出て行った。

一体、何しに来たんだ?あいつ。

不可思議なやつですね。

そう思うと、ふぅとため息をついて、事務処理を始めた。

 

その後、野梨子と魅録が二人揃って現れた。

「あれ?清四郎1人?」

「ええ、そうですけど。」

「可憐たちが来てると思ってましたのに。」

野梨子は清四郎が1人でいることに不満そうに呟いた。

なんだかその態度に清四郎はムッとする。

「じゃあ、このお菓子、おいていきますので、あとで1人で食べてくださいな。」

そういって、焼き菓子をテーブルの上に置く。

「じゃ、またな。清四郎。」

野梨子と魅録は去っていった。

清四郎に”一緒に帰りませんこと?”とは誘わずに。二人で。

清四郎は、納得出来ない思いがした。

 

また、ガチャッとドアが開いた。

次は可憐だった。

「野梨子たちは?」

「いま、帰りましたけど。」

「あ、そう。」

可憐は生徒会室をぐるりと見回した。

「悠理も来てないんだ。」

「ええ。」

「そう。」

椅子に腰掛ける。

「あ、このお菓子!」

可憐はテーブルの上にあった、キルフェボンの焼き菓子に気づいた。

「これ買ってきたんだ…。ふぅん。」

そういって、暫くお菓子を触りながら見ていた。

と思ったら、突然、カバンの中からごそごそと小さいクマのぬいぐるみを出した。

テディベアとかそんなのじゃなくて、ただのクマのぬいぐるみで、赤いリボンをしていた。

「ここに、紅茶のティーバックが入っているから。」

クマの背中のジッパーをあけて、清四郎に紅茶のティーバッグを見せた。

「で?なんですか?」

皆の変な態度に、清四郎は少々、面倒になってきて投げやりに聞く。

可憐はにやりと笑うと「ただそれだけよ。」と笑って、「じゃあ、わたし、帰るわ。」とクマのジッパーを締めて帰っていった。

一体、今日はなんなんだ?

清四郎は皆の不可思議な態度に、困惑するばかりだった。

 

暫くして、再テストが終わった悠理が不機嫌に入ってきた。

「もー!疲れたぁ〜!!」

勢いよく、ドアを開ける。

「あれ?みんなは?」

「もう、帰りましたよ。僕もそろそろ帰ろうかと思って。」

「あ、そう。」

清四郎は悠理と二人でこの生徒会室にいることがちょっと嬉しかった。

先ほどまでの嫌な気分がどこかにいってしまうような気さえした。

悠理の一つ一つのしぐさがかわいらしく見える。

悠理はテーブルに近寄るとお菓子とクマを見つけた。

「あれ?このお菓子、食べていいの?」

「いいらしいですよ。」

清四郎は可憐たちに対する態度とはうってかわって、優しく微笑みながらいった。

「じゃあ。清四郎、食べよーぜ。」

椅子に腰掛けると清四郎を手招きする。

「早く、こっちに来いよ。一緒に食べよー。」

清四郎は内心嬉しいのに、やれやれという顔をして、悠理の隣に腰掛けた。

「このクマ、何?」

悠理は可憐の置いていったクマを指差した。

「ああ、これは可憐が置いていったもので。」と言いながら、クマの背中のジッパーを下ろすと、中からティーバッグを取り出した。

「おぉ!」

悠理は目をきらきらさせた。

「かわいいな!」

ええ、お前のほうが、もっとかわいいですけど。

何故か色ボケしている心の言葉に、清四郎は気づいていない。

「じゃあ、あたし、お茶いれるよ。」

悠理は立ち上がり、清四郎の手からティーバッグをとろうとした。

その瞬間、コケて清四郎にもたれかかる。

「あ…。」

清四郎はそのまま、悠理を抱きしめてしまった。

清四郎が座ったままなので、やわらかな頬が頬と首元に触れる。

華奢な体が、清四郎に密着する。

清四郎の心音が悠理に聞こえそうなくらい、大きな音を立てている。

なんで、こんなにどきどきするんだろう…。

これは…。もしかして、恋…?

「清四郎…。苦しいよ…。清四郎…?」

悠理が不安げな声を出す。

清四郎は我に返った。

悠理をゆっくり離した。

「悠理、僕は変なことをいうかもしれませんが。」

立ち上がり、清四郎は悠理を見つめた。

悠理は清四郎から、目を離せない。

「…うん。」

「僕は…。」

お前に…。

 

ドタッ…!。

ドアの向こうで、大きな音がした。

「キャア」

「いてっ!」

その後、聞き覚えのある声が…。

二人はドアをあける。

すると、そこには…。

美童、魅録、野梨子、可憐の4人が気まずそうに笑って立っていた。

「清四郎、そのお菓子、きっとおいしいですわよ。」

そう野梨子が言うと、皆、「じゃ。」と言って、一目散に二人の前から立ち去った。

悠理はきょとんとした顔をし、清四郎は深いため息をついた。

 

 

 

 

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2005.12.03)じつはwhitesnakeだったり・・・。

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