革命?

 

 BY りかん様

 

 

試験が終わり、清四郎は美童と一緒に近くの喫茶店で皆を待っていた。

全部終わったら、喫茶店で待ち合わせて遊びに行こうと話していたのだ。

生徒会室は2年生に譲ってしまったため、居場所がなく、喫茶店で待ち合わせだった。

美童が「ねぇ、清四郎、悠理のことをどう思っているの?」と何気に聞いた。

「悠理のことですか?」

そんなことを突然聞かれて驚いた。

「悠理のこと好きだったら、さっさと告白してしまえばいいのに。」

美童はこんなことを言う機会は他にないと思って、ここで一気に言った。

「悠理のことなんて、好きでもなんでもないですよ。気が遠くなるほどのバカですし。」

つまり、照れである。

それで、そんな風に悠理のことを言った。

美童はクスッと笑った。

「まぁ、そういうことにしておくよ。…そろそろ、みんな来てもいい頃なのにね。」

美童は窓の外を見た。

すると可憐が現れて、続くように野梨子と魅録が現れた。

最後に、悠理が現れる。

なんだか、とても不機嫌そうだった。

試験が終わったばかりだから、仕方ないかもしれないけれどと、皆、思った。

 

結局、遊びにはいかず、清四郎の部屋に行った。卒業旅行の相談をしようということになったからだ。

魅録と野梨子は相変わらずラブラブで、二人の世界に入っている。野梨子はカバンの中から旅行雑誌を出し、楽しそうに2人でを見ている。どうやら、二人だけの卒業旅行も計画しているらしかった。

その2人の様子に最近慣れっこになってしまい、どうでもいいやと可憐以外は思っていた。

だが、今日は6人で旅行にいく計画を立てる日。

可憐は聞こえよがしに「6人で何処にいく?」と言ってみた。

美童はすかさず「僕は美女がいっぱいいて、サバイバルをしなくていいところだったら、どこでも。」と答える。

可憐はふうっと頭を抱えた。

この男は…。

悠理はせんべいをぼりぼりと食べており、清四郎は何も言わずに辺りの様子を窺っている。

清四郎は単に人ウォッチングをしているだけだった。

「じゃあさ。」悠理が切り出した。

「チチのとこに行こうよ…。暑いところに行きたいし。」

…張り詰めた空気があたりを漂う。

「いや、冗談だってば。ははは。」誤魔化すように、悠理は笑った。

でも、なんだか今日は毒がある。そんな風に可憐は感じた。

一方、清四郎は(バカ…。)と顔を顰めた。なんて、タイミングが悪いんだろうと。

「それじゃー、金沢〜、なんて。」

美童は悠理をフォローするつもりで、墓穴を掘った。

野梨子と魅録の目がきらりと光る。

「私たちが、お邪魔なのかしら?美童。」

野梨子に突っ込まれる。

「そういうことでしたら、帰りますわ。ね、魅録。」

「ああ。気分悪い。」

二人はムッとした表情で止める間もなく、帰ってしまった。

「バカッ。」可憐が美童をペシッと叩く。

(せっかく、6人で、高校生活最後の旅行をしようと思っていたのに…。)

可憐は旅行をとても楽しみにしていた。大学生になったら、皆、学部がばらばらで、こんな風に集まることも少なくなるのだ。

だか、そんな可憐の思いなんて誰もまじめに考えてなかった。特に清四郎は旅行より、隣に座る“気が遠くなるほどのバカ”の女子が気になっていた。

(チョコレートをくれるんだろうか。)

大晦日にミニコンサートをプレゼントしてくれた。

今回も期待できるのではないだろうか…。

そんなことを考えていた。

なので、正直、可憐の話なんて上の空だった。

やる気のない3人にとうとう、可憐は切れ、カバンを持って立ち上がった。

「全く、考える気もないんだから!美童は変なことばかりいうし、清四郎は上の空だし、悠理は食べてばかり!わたし、帰るわ。」

ムッとして可憐も帰ってしまった。

「じゃあ、僕も帰るよ。」

美童は3人でいたくなかったので、さっさと階下へ降りていった。

「じゃ、あたしも帰る〜。」

悠理も立ち上がろうとした。

「待ってください。悠理。」

悠理の肩を押さえつける。

「なんだよ。」不機嫌そうに顔をする。

「僕は。」

(今日こそ、言うぞ…。こんなチャンス、無い。)

あれから、いつも和子に邪魔されて二人きりになるチャンスなんてなかった。不在の今日しかチャンスはない。清四郎の悠理への思いは募る一方だった。

「悠理のことが…。」

清四郎は深呼吸した。

悠理は清四郎を見た。見つめるというより、見たと言ったほうが、正しい。その瞳は何か訝っているようにも見えた。

悠理は一呼吸置き、そして「知ってるよ。」とまじめな顔で清四郎に言った。

「気が遠くなるほどのバカと思っているっていうんだろう?」

冗談で言っているのではないということは、清四郎にもわかった。

…最後に、清四郎の告白を邪魔したのは、悠理だった。

(聞いてたのか…!)

清四郎は青くなった。

清四郎は悠理の肩から手を外すと、何も言わずにベッドの上に腰掛けた。

「じゃあ、あたし帰るから。」

悠理は面白くなさそうな顔をして階下へ降りて行った。

清四郎はただ、その背中を見てるしかなかった。

 

あの日以来、悠理を誘っても、悠理は清四郎と一緒に帰らなくなった。

清四郎は酷く、落ち込んでいた。

そんな様子を可憐,美童は見ていたが、何も声を掛けることができなかった。野梨子と魅録は二人で行動しているので、全然清四郎なんて眼中にない。

悠理に可憐が探りをいれようとしたこともあったが、「何もないよ。」とあっさり言われて終わってしまった。

聖プレジデントは大体がそのまま大学に上がるので、2月も一応授業はある。

といっても、1月いっぱいで3年生の授業は終わるので、補講に近いものであるが。

成績が優秀であれば、出席する必要は無い。

期末の成績が平均80点いかない人たちは全て受けなければならない。

悠理は勿論、可憐、美童は2月いっぱい出席組だった。

清四郎は学校に行かなくともよい。

先日、悠理を遊びに誘ったときには「もう試験もないし、清四郎は用済みでしょ?」と言われた。

あまりのショックで、2日間寝込んだ。

(悠理…。)

心の中で呟いてみても、勿論、何も返答はない。

どうして、こんなことになってしまったのか…?

あのとき、悠理が聞いていたなんて、夢にも思わなかった…。

 

バレンタイン当日。

美童と悠理はいつものように学校に行き、たくさんのチョコレートを貰った。

ほくほく顔で帰宅する。

一方清四郎は、部屋で不貞寝していた。

悠理には嫌われるし、最悪だった。自分の軽はずみな言動が原因であったが…。

「清四郎ちゃーん。降りていらっしゃい。」

久々に母がちゃん付けで呼ぶ。

清四郎は階下に降りて行った。宅急便で届けられたお菓子が山のようにある。

直接届けにきた人もいるみたいで、カードがただ添えてあるものもある。

その中で、見栄えのよくない20cm弱四方のダンボール箱が1つ置いてあった。

(…?。)

清四郎宛で、送り主が『気が遠くなるほどのバカ』となっていた。

(…!。)

ダンボールを開けると、縦横10cm高さ3cmのデパートで購入したと思われる綺麗にラッピングしてあった箱と、そしてメッセージカードが入っていた。

そこには”ばーか! ゆうり”と一言書かれていて、ラッピングしてあった箱を開けると、白,ピンク,茶,紫のマシュマロが4個ずつ入っていた。

試しに1つずつ食べてみると、白はノーマル、ピンクは苺味,茶はコーヒー味,紫はブルーベリー味だった。

ちゃんと食べられる代物だった。しかもおいしい。

(悠理の好きなマシュマロだったんだろう。)

そう思うと感動してしまった。

その後、清四郎は悠理に電話をかけた。

『はい。』

「悠理、マシュマロ、ありがとう…。」

しばしの沈黙のあと。

『…マシュマロって、嫌いな人※にやるもんなんだぞ。知らないのか。』

清四郎は石で頭を殴られたような気がした。

沈黙する。

『お前、あたしなんか好きじゃないんだろう?気が遠くなるほどのバカだし。…それ美童に言っているのを聞いたときには、かなりショックだったんだ。』

「それは…。」

それは違う。

僕は…。

「あのときは突っ込まれて、照れくさかったから…。」

一呼吸置く。

「僕は悠理のことを好きなんです。」

『…!』

電話の向こうで悠理が硬直していた。思わず告白してしまった清四郎も硬直する。

『あ、そう…。またな…。』

悠理はそそくさと電話を切った。

(どうして、電話を切るんだ…。)

悠理が清四郎のことを好いているかともなんとも聞けず…。清四郎はどうすることもなく、悶々とした日々を過ごすことに…。

 

 

(※正確にはマシュマロはホワイトデーに嫌いな人にあげるものと言われてます(好きな人にはキャンディー、友達はクッキーだったかな?)。ホワイトデーなので白いものをあげるという説もあり、そのときにマシュマロをあげるという話もあります。)

 

 

 

 

 

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2006.02.05

だりあさまから「革命」案を頂いて、タイトルにしてます。

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