BY りかん様
大学生になってから3ヶ月が過ぎた。 清四郎の野望は達成出来ずに、なかなか悠理と会えない日々が続いていた。 何とかして、まず自分の時間を作らなければ。 そう思ってはいても、レポートなど日々に追われてしまっている。 悠理とは夜寝る前に電話が精一杯だった。だが、なんとかまともなデートがした い。ということで、清四郎は、箱根の宿を押さえてから、悠理に電話した。 たまたま、次の土日は何も予定がない。お互いに。 「もしもし、悠理?」 『ん。…もう眠い。。。』 「すみませんね、遅くなってしまって。」 時計は午前3時をさしていた。いつもは遅くとも午前1時には電話をかける。土 日のデートのために、早めにレポートを仕上げたから、電話をかけるのが遅くな った。でも、それは言わない。 「実はね、次の土日、悠理も暇だといってたでしょ?」 『…うん。』 悠理は寝ぼけているせいか、反応が鈍い。 「だから、一緒に温泉に泊まりに行こうかと思って。おいしいものを食べに。」 『…うん。…行く。』 (!) 「ほんとに?」 『…あったり前だろ?。うまいもん食うんだ。…っていうか、眠いから、切る… 。』 ブチッと電話を切られた。 でも、念願のお泊りデートの約束にこぎつけ、清四郎は天にも昇る心地がした。 今回は、姉にはばれないようにしなければ。 それだけは、絶対だった。
そんな、デートの5日前。 学校から家に帰るとあの女が彼女の父に伴われて来ていたとお手伝いさんから聞 いた。なるべく避けたいなと思っていたが、たまたま母親が茶の間の襖を開けて 、目が合ってしまった。 「こんにちは。」 「やあ、清四郎くん。」 清四郎は頭を下げて通り過ぎようとしたが、話しを続けられた。 「久しぶりだな。元気かい?先日と言ってもだいぶ、千久紗と一緒にあれを選ん で貰ってありがとう。」 「いえ。」 話しを終える気配がないため仕方がないので鞄を持ったまま茶の間に入る。 清四郎が座ると、大学はどうかね…から始まって、矢継早に質問し始めた。清四 郎は適当に相槌をうつばかりである。 20分ほどして、千久紗が話しに割り込んできた。 「ね〜、お父さまぁ〜、もうお父さまの話しはいいでしょ〜。」 「あ、ああ。そうだな。」 「千久紗、今度の土曜のお誕生会に、清四郎さんも呼びたいわ。」 父親のほうを見ながら、時折清四郎をちらちらと見て言った。 「そうだな。清四郎くんも、よかったらどうかね。」 「お誘いを受けて、大変ありがたいのですが、当日は先約がありますので。」 清四郎は父親に向かってそういったあと千久紗ににっこりと微笑んだ。 「断れないの?」 「ええ。」 「じゃあ、出掛ける前に来てくださらない?。お誕生会はお昼からだから。」 なんとしてでも清四郎を呼びたかった。 「9時には出掛けるので、申し訳ないが行けないな。じゃ、僕はレポートがあり ますから、失礼します。」 急いで立ち上がると何も言われないうちに部屋に向かった。後ろから千久紗がぶ つぶつ言っていたのが聞こえてきたが無視した。
当日、悠理が清四郎の家に来て、とりあえず箱根まで悠理の家の車で送って貰う ことになっていた。1時間も前に清四郎は用意を終え、部屋で寛いでいた。 今日こそは!と気合い入れまくりで。もちろん、両親には悠理を含め学校のみん なでと話してある。有閑倶楽部ではなく。 姉の和子とは顔を合わせないように昨日から過ごしていた。もし顔を合わせたら 、何を言われるかわからない。 たまたま最近は忙しいらしく、今朝も和子は早く出かけていった。 (あの姉にまた邪魔されたりしたら、大変ですからね。ここは気づかれないよう に慎重に・・・。) 時計を見る。 8:45。 と、そのとき。 部屋をノックする音がした。 (15分前に来るなんて、悠理も気合い入り捲くりですね) そう思いつつ、ドアを開けた。 (!!!) ドアの前に立っていたのは悠理ではなく、千久紗だった。なにやら思いつめたよ うな顔をしている。 「清四郎さん!」 一呼吸置いて、いきなり飛び付かれ、そのまま押し倒された。長い髪が頬にあた る。 「私、清四郎さんのことずっと好きだったの!」 清四郎の上に跨がったままそう言ったかと思ったその次の瞬間、キスされた。 (!!!(絶句)) 驚きすぎて、言葉が出ない。清四郎は頭の中が真っ白になってしまっていた。 「何やってんだよ!!!」 どこかから降ってくる悠理の声。 (!) 意識回復。 清四郎はしがみつく千久紗をよけようとしたが、しがみついて離れない。 悠理には、しっかりと抱き合っているように見えた。 怒りで、悠理がふるふると震えている。 「浮気者!お前とは別れる!」 バタンッ ドアを閉める大きな音がし、その後悠理の階段を駆け降りる遠ざかる足音が響い た。 何とか千久紗を引き離し、追い掛けたがあとの祭だった。電話も通じない。 ”誤解です。あれは彼女が突然勝手にしたことです。僕には悠理だけです。箱根 で待ってます。電話ください。”とメールを出したあと、清四郎は箱根へ向かっ た。 ホテルで待っていたが、悠理は来なかった。 メールの返信さえ、無い。電話をかけても、やはり出ない。 (一体どうしたら、いいんだ・・・。) 何度もリダイアルをし、一睡も出来ないまま、ダブルベッドの上で一人過ごした 。
一方悠理は清四郎の家を飛び出したあと可憐の家に向かった。別れる!なんて言 って出て来たが携帯に電話が掛かってくるのを待っていた。 ところが。 充電が切れていた。 そのことに悠理は気付いていなかった。 車でそのまま可憐の家に向かう。可憐のところにそのまま泊まろう、そんな風に 考えて、車を返してしまった。 しかし、可憐は外出中で不在だった。 家に帰りたくなかったので、そのまま可憐の家の近くのホテルに入った。部屋を 借りると、ワーッと声をあげて泣いた。そして泣き疲れて、眠ってしまった。 完全にすれ違い・・・。
−−− (2006.6.4)さて。二人の運命は?
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背景:kotobukiya様