「なんで、こんなことをするの?」
「本当に、わからないんですか?」


 

壊れるしかない

 



悠理が僕の気持ちに気づかなかったはずは、ない。

ふたりきりになるのを、怖れていたのは僕。
こんなふうに、想いをぶつけてしまうことを怖れていた。

「や、やだ・・・」

華奢な体を、草の上に押さえつけた。
もみ合ううちに、白い制服に草の汁が緑色の染みを残す。

僕が怖れていたのは、自分。
だけど、悠理が怖れていたのは、たぶん僕じゃない。
これまでの関係――――育んできた友情が壊れることだ。
だけど、僕はもう我慢の限界だった。

近すぎる距離。
彼女の吐息が触れ、柔らかな心と体に手を伸ばすと届く、この距離に。


「悠理・・・悠理。僕は、おまえを・・・」

耳を塞ごうとする手を、押さえつける。
逸らそうとする視線を、許さない。

「おまえを、愛してる」

悠理の大きく見開かれた目に涙が滲んだ。
そうだ。とうに、知っていたはずだ。
僕の想いは。

「愛してる。愛しています」

細い体に乗り上げ、何度も同じ言葉を囁く。
抵抗していた体から力が抜ける。
露にした、白い肌。
悠理の瞳が揺れている。怖れ以外の、感情に。
露にした、白い心。

柔らかな肌に、口付けを落とす。
白い肌に紅色の染みを作る。
心にも、染みをつけたい。

 


いつだって、抱きしめたくなるのを堪え、 そばに居たかったのは、僕の方だけど。
甘え拗ねて、僕にまとわりついてくるのは、悠理の方だ。
ふたりきりになるのを、避ける僕を引き止めたのも。
僕の想いを知っていながら、逃げてしまうくせに―――― いや、焦らしていたわけじゃない。そんな女じゃない。
ただ、戸惑っていただけなのだろう。

 


「愛しています」

ゆっくりゆっくり、時間をかけて。
執拗なほど、繰り返す。
彼女の心と体を溶かす。

潤み開いた無垢な場所に、自分の色をつける。
「いや・・・あ・・清四郎・・・」
悠理の声も、潤み震える。
唇で指で言葉で、彼女の奥を探り押し開く。
ゆっくりと、傷つけぬよう。
僕の中で咆哮する、凶暴な衝動を抑えながら。

 


吼えるのは、女を求める男の欲。
――――貪り奪い犯しつくしたい。
守り慈しみ大切にしたいと思い続けてきたはずの、無垢な彼女を。

白い肌を汚す、草の汁。溢れ出た、欲望の染み。
蕩けるほど潤んでいても、傷つけずにはおれない。
それもまた、僕の望み。

 


「おまえのすべてが欲しい・・・おまえは?」

悠理の唇が開かれるが、漏れ出るのは吐息だけ。
紅く甘い唇に何度も口付けを落としながら、彼女を追いつめる。

もう、逃さない。
すべて暴き、奪い尽くす。

長く続くかけがえのない友情を壊しても。

「おまえは・・・?」

甘く優しく、追いつめる。

彼女の純潔の証が、僕の心に染みをつける。
紅く染まる視界。
凶暴な渇望。

 


壊れてもいい、壊してもいい――――。




                                                      SIDE:Y

 

 

発作的に書いた小ネタでしたが、長篇の番外編になりました。こっちのが一年以上先に書いたんですが。(笑)

 

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