〜白鹿家編〜 本日は、野梨子の声かけで久しぶりに白鹿家に仲間たちが集まった。 大学を卒業して数年。 四六時中つるんでいた有閑倶楽部の面々も、こうして顔をあわせることは少なくなってしまった。 一抹の寂しさが漂うのは、卒業後母国で外交官になった美童の姿がないだけではない。 新婚ほやほやの可憐はいいとしても、青年実業家として経済界で活躍中の清四郎は、先日離婚したばかり。 友人として簡単な報告は受けていたが、離婚後初顔合わせとなる。腫れ物に触るような雰囲気が漂うのもしかたがなかった。 なにしろ、その元妻の悠理も今日ばかりは同席している。 離婚した彼らを一緒に呼ぶのは、野梨子だとて多少気が引けたのだが、彼らは元夫婦である前に友人だった。 今日という日に、どちらかを外すわけにはいかない。 「俺たち、結婚する事にしたんだ」 皆にお茶を配り終えた野梨子の隣で、魅録が静かに宣言した。 ブーッと、お茶を吹き出したのは悠理。 「・・・汚いな、カンベンして下さい」 正面に座っていた清四郎がさも嫌そうにハンカチを取り出す。 さすがの俊敏さで、ほとんど濡れてはいなかったものの。 「だ、だ、だって!おまえら、いつから付き合ってたんだよーっ!」 悠理はあわあわ魅録と野梨子を指差す。 可憐は顔を輝かせ、両手を組んだ。 「おめでとう、野梨子、魅録!やっぱりねー。あたしの結婚式のときの二人の視線の絡み具合を見てそうじゃないかとは思ってたのよ」 野梨子と魅録は、ポッと頬を染める。 「ええええっ、あたいは知らなかったじょー!魅録、おまえ先週末も一緒に遊んだのに、なんにも言わなかったじゃねーか。水臭いぞ、このヤロー!」 「遊んだって、悠理。あれは俺は仕事中だったんだ。おまえが蹴りかましたのは国際手配犯で、同僚も一緒だったろ。そんなときに言えるかよ」 魅録は照れ笑い。 「でもさっ」 驚愕のあまり祝福を忘れて言い募ろうとする悠理を、清四郎の冷たい声が制した。 「・・・僕も気づかなかったですね」 清四郎は不機嫌丸出しで、悠理の汚した机を拭いている。 「そうですか、結婚するんですか・・・それはおめでとう」 言葉と裏腹に、清四郎の笑顔はひんやり冷たい。 シン、と場が一瞬、凍りついた。 「あ、あんたたちは、ここのところゴタゴタしててそれどころじゃなかったものね。なにはともあれ、めでたいじゃないの!」 可憐が無理に明るい声をあげ、盛り上げようとする。 けれど、清四郎の冷ややかな態度と、いまだふくれっつらの悠理に、当の野梨子と魅録の表情は曇った。 「清四郎・・・喜んでくれませんの?」 野梨子の言葉に、清四郎は眉根に寄った皺をもんだ。 「・・・いえ」 「なにか言いたいことでもあるのかよ」 魅録は清四郎を真っ直ぐ見つめた。 彼にとっても長年の友人である清四郎は、野梨子には生まれたときから信頼してきた兄妹同然の幼なじみだ。 彼らの意思は固いとはいえ、清四郎に反対されれば、野梨子が苦しむのはわかっていた。 「少し早すぎるんじゃないかと、思っただけです。野梨子はもうすぐ家元を襲名する予定ではなかったですか?魅録もインターポールに移ったばかりでしょう」 「式は、来年になってからにしようと考えてますのよ。今日は、一番にあなたがたにお伝えしたかっただけで」 野梨子は両手を膝の上で組み、懸命な瞳で清四郎を見上げた。 可憐も息を飲んで清四郎を見つめている。 悠理はあいかわらず不機嫌顔。 しばらく考え込んでいた清四郎は、ようやく愁眉を解いて苦笑した。 「・・・すみません、ちょっと驚いただけです。小舅根性が出たらしい。野梨子には本当に幸せになってもらいたいだけなんです。一点の曇りもなくね」 「俺が、必ず幸せにするよ」 「ええ、わかっています。僕にしても、魅録以上信頼できる男はいない」 清四郎は魅録と野梨子に笑顔を向けた。 今度は、暖かな笑顔だった。 「なーんだかなー」 悠理は口を尖らせた。 「”お嬢さんを下さい”ってカンジ。清四郎、おまえ野梨子の父親かよ」 「おや、悠理。おまえは二人の結婚に反対なんですか?」 「そ、そんなことないやい!いきなりだったんで、驚いただけで」 「ほぉ・・・そんなに拗ねてたら、フリーになったのをいいことに魅録を狙ってたのかと思われますよ」 「誰が思うんだよ、んなこと!」 「僕です」 いきなり言い争いだした元夫婦に、婚約カップルは顔を見合わせた。 「何考えてんだよ、清四郎!だいたい、おまえこそ、野梨子を好きなんじゃないかよ。なーにが一点も曇りなく、だ。自分で幸せにしてやったらどうだ」 「誰かさんを幸せにするのに、手一杯でね」 「悪いが、幸せにしてもらった覚えはないじょ。曇りまくってるじゃんか!」 たしかに、と口をはさめないまま、可憐は頷く。 しっかり法的にも破局しているのだから、悠理が幸せとは言い難いだろう。 離婚の原因は、仲間たちも聞いてはいない。 ただ、”性格の不一致”とは清四郎から報告を受けていた。 付き合いの長さを考えればいまさらとも思える理由だが、悠理と清四郎の性格が一致しているとは誰にも言えないところもまた事実。 彼らが友情から愛を育んだ末の結婚ではなく、腐れ縁の末の”ま、いっか”という結婚であることも、仲間たちは知っていた。 自分の両親や松竹梅夫妻のように熱愛夫を見慣れている悠理が、清四郎の冷たさに不満を持っていたことも。 「だいたい、政略結婚で幸せになれるわけないよな!おまえを後継者に欲しがったうちの親と剣菱目当てのおまえとの間で、あたいは人身御供になったようなもんじゃないか!でなけりゃ、オマケだろ!」 「とんでもないオマケですな。トラブルメーカーでジャジャ馬で、手がかかってしかたがない」 「な、なぬぅぅぅっ」 「いい加減にしろ、ふたりとも!」 にらみあうふたりに、ようやく魅録が割って入った。 悠理は涙目で、キッと魅録と野梨子に顔を向ける。 「清四郎はどうせ、あたいみたいなの好みじゃないもんな!野梨子が魅録のモンじゃなかったら、いくら手近だとはいえ、あたいと結婚なんかしてなかったんだろ!ほんとは野梨子が一番大切なんだ!」 魅録は悠理の剣幕に押され、心もち青ざめて恋人と清四郎に視線を向けた。 昔からそうであったように、野梨子と清四郎は似合いの一対。二人の間に恋愛感情がないことはわかっていても、強い信頼で結ばれた幼なじみ二人に魅録も心穏やかではいられない。 先程の、嫉妬めいた清四郎の姿を見てしまうと余計に。 「なにを言い出すやら」 野梨子は清四郎そっくりの口調で、ほぉ、とため息をついた。 「あなたがた、私が魅録とつきあうよりはるか以前に、結婚しましたでしょう。学生時代から婚約してましたし。人をダシに痴話喧嘩をするのはやめて下さいな!」 ピシリと言われ、悠理と清四郎はさすがに口をつぐむ。魅録も首をすくめた。 場の雰囲気は今度はシラケた。 とてもお祝いムードではない。 「・・・やっぱり、別れたばっかのふたりを同席させたの、マズかったんじゃないのぉ」 可憐が魅録にこそこそと耳打ちした。 それを聞きとがめ、清四郎は苦笑する。 「悪かったですな、気を遣わせて。でも気にしないで下さい。こんなの日常茶飯事ですから」 「そーだじょ。毎日、嫌味たらたら。性格悪いの治る薬を発明しろってんだ」 「バカにつける薬と同様、あればノーベル賞ものです」 また言い争いだしたふたりに、え、と可憐は目を丸くする。 「毎日・・・って。まだしょっちゅう顔あわせてるの?」 「そりゃそーだよ。家、一緒だもん」 「はぁ?!離婚したのに?!」 悠理と清四郎は顔を見合わせた。 「離婚はしましたが、別居はしてませんな、そういえば」 「そーだな。普通はするもんか?」 悠理の言葉に一瞬固まった可憐だが、無理に納得する。 「そ、そうよね、剣菱邸は尋常な広さじゃないものね。顔合わせたくなければ会わずにおれるわね」 「へ?」 悠理はきょとんと首を傾げる。 「さすがに一緒の部屋で顔合わさないってのは無理だじょ」 この言葉で、可憐は完全に凝固した。魅録と野梨子もあぜんと固まっている。 「そうかー、でもその手があったかー」 悠理はポンと手を打っている。 「部屋を分ければいいんだ。そしたら、毎日朝晩清四郎につき合わされずに済むもんな」 「どういう意味ですか」 清四郎が眉をひそめる。 悠理は両手で自分の肩を抱きしめ、もの憂げなため息をついた。 「結婚して以来、家にいるときは毎日だろ・・・あたい経験なかったのにさ」 悠理の言わんとするところを察して、清四郎はバツが悪そうな顔をする。 悠理は清四郎の胸に、人差し指を突きつけた。 「ちょっとは加減してくれよな。あたい、体がもたないよ」 悠理に突つかれ、清四郎は落ち着かなくそわそわしはじめた。 「悠理が嫌がってたなんて知りませんでしたよ。最初は痛がってたけれど、最近は・・・良くなったのが自分でもわかるでしょう」 「おまえが無茶しなきゃな。今朝みたく。あたいはもうちょっと寝たかったのに無理におまえがさ・・・。昨夜だってやったのに」 ちろんとにらまれ、清四郎は赤面した。 「そ、それはですな、おまえがようやく僕の相手ができるようになったのが嬉しくて・・・教えがいがありますからね。つい」 「つい、で痣つけられちゃたまんないよ。あんな激しくやられちゃ、足腰立たなくなるかと思ったじょ」 「・・・・。」 赤面した清四郎をつんつん突く悠理、というめずらしい光景が目前では展開されている。 しかし、可憐、魅録、野梨子は、口をきくこともできず、ほとんど石化状態。 「でもさ、あんなに仕事が忙しそうなのに・・・大丈夫なのか?」 悠理は少し心配そうに清四郎の顔をのぞきこんだ。 「なにがです?」 「ストレス、溜まってんじゃねー?」 自分の身を案じる悠理の言葉に、清四郎は言葉につまった。 瞳が揺れる。 「・・・ありがとう。たしかに溜まってるみたいですね、ストレス。おまえが原因ですが」 「へ?」 「僕だって、離婚したんだからストレスくらい感じます。でも週末遅かったのは、魅録と居たんですね。良かった・・・。最近、おまえの周りでうろちょろしてるアイツ(*)かと思った」 思わず口をついて出たような、最後の言葉は、ぽつりと。 悠理はポカンとしていたが、ゆっくりと顔色を変えた。ピンク色に。 「ば、バッカ!妬いてんじゃねーよ!」 ぷい、と顔をそらせたものの、赤面したままそわそわモジモジしている離婚カップル。 その前で、新婚の新妻と婚約カップルは置物と化していた。 頬を染め自分の肩を抱きしめている悠理は、かつては欠片もなかったはずの艶を醸し出している。 それを引き出したのは、まぎれもなく別れた夫。 しかし、当の本人は照れくさそうにコホンと咳をつき、口元を歪めた。 「だいたい、僕が妬くはずはないじゃありませんか。おまえの相手をできる男なんて早々いやしません。物好きなあの男(*)にしても、おまえの欲求に応えられるかどうか。知らぬが花ですよね」 なんとか自分を取り戻し、清四郎の真情はいつもの口調に隠される。 意地悪な物言いに、簡単に悠理は反応した。 「よ、欲求って、なんだよそれ!」 「おや、いつも僕が無理やりやってるとでも?おまえから誘うほうが多いように思いますが。僕だって疲れて帰った夜は早く寝かせて欲しいんですがね」 「あたいだって、朝はゆっくり寝たいのに、おまえが!」 「夜遊びをやめればいいんですよ」 「おまえが早く帰って来ないのが悪い!」 「朝型の僕と夜型のおまえでは、やはり相性は良くないようですな」 「やっぱ離婚して正解だよなっ」 今度は、ぷん、とむくれ顔で顔をそむけるふたり。 「まぁ、当分は僕しか相手がいないようなので、付き合いますがね」 顔をそむけたまま、清四郎はボソボソつぶやく。 「・・・なんだよ、結局あたいとしたいんじゃねぇか」 「おまえと、というわけではありませんが。一緒に住んでるんだし、仕方ないでしょう。利害の一致です。生理的欲求です」 「生理的って・・・」 悠理はむぅ、と口を尖らせた。 「自分の相手になる体力ある女がいなかったから、あたいを仕込んだんだろ?この悪党」 「別に僕は女を相手にしなくてもいいんですよ。男相手でも・・・」 「たしかに、おまえの相手をしたがってる男がいっぱいいることは知ってるけどさ」 自分で振っておきながら、清四郎は少し顔を歪めた。 「おまえは、僕相手では不満そうですがね」 「そ、そんなことないけどさ。ってか、他、知らないし・・・」 「本当ですか?その割には毎晩毎晩、盛り場をうろついているようじゃないですか」 清四郎は暗い笑みを浮かべる。 嫉妬と自嘲に歪んだ顔。 「そうだ、悠理。魅録に見せてやったらどうです?いや、週末の夜、もう魅録は気づいたかな・・・」 「なにを?」 「毎朝毎晩、僕とやった成果を、です」 「なに言ってんだよ。あたいと魅録はそーゆーんじゃないって、わかってるだろ!あたい、おまえ以外の男となんて・・・」 「おや、僕以外とは嫌なんですか?じゃ、なんで離婚したがったんです?」 「それとこれとは別だ!だいたい、魅録は経験ないじゃないか」 ビクンと、置物が動いた。 「な、な、な、な、・・・」 魅録が白目のまま赤面してドモった。 野梨子も蒼白。 思いを伝え合ったばかりの二人は、いまだ清い中。プラトニックラブなのだ。 清四郎は射すような眼光で、悠理を見つめる。 「魅録が経験者かどうか、どうして知ってるんです?」 「見ればわかるわい!おまえがそーゆー風に仕込んだくせに!」 「まだまだ甘いですな。たしかに魅録はちゃんとした経験はないかも知れないが、そこは男。それなりに見る目は養っているはずです。おまえの体を見れば、すぐに反応します」 清四郎は魅録に顔を向けた。 口を歪め、挑戦的な笑みを見せる。 「悠理はこう見えて、さすが野生の血。仕込みがいがあってね。その気にさせれば、僕でも圧倒される。もともと才能があったんですな。魅録も驚きますよ」 「や、やだなー、おだてるなよ」 悠理はヘラッと白い歯を見せた。 単純な彼女には、清四郎の嫉妬も鬱屈も通じていない。 言葉通りの賛辞ととり笑顔になった悠理に、清四郎も肩をすくめて表情を弛めた。 「・・・そんな顔してれば、ガキみたいですがね」 「む」 「脱いだら、スゴイんですよね」 「や、やーらしー言い方すんな、スケベ!」 清四郎の言葉に頬を染めながら、悠理は照れたように頭を掻いた。 「ま、実際あたいも清四郎としかしたことないしさー。わかんないんだよ。自分が変わったのが。色んな男とだってやってみてもいいかもな」 悠理が軽く言った言葉に、清四郎の笑みがひきつる。 「どうぞ、どうぞ。何事も経験」 しかし素直じゃない男は反対の言葉を言った。 「そうだよなー・・・」 悠理はちろんと魅録に視線を移す。 肉食獣のように、色の薄い瞳が光った。 白目の魅録はビクンと竦む。 「魅録・・・あたいとやってみる?初めてだったら、教えてやってもいいしさ・・・」 清四郎の顔色が変わった。笑顔のまま。 哀れな魅録は泡を吹かんばかり。 「ちょ、ちょっと待ってくださいな!」 さすがに、聞いてられなくなった野梨子がようやっと声を絞り出した。 「さっきから、なんの話をしてるんですの?!」 「なにって・・・」 元夫婦は顔を見合わせ、口を揃えた。 「「組み手」」 魅録はばったり畳に突っ伏した。 野梨子はへたりと座り込んだまま。 「悠理に拳法の型を教えたんですよ。もともと才能があったようで、朝晩の組み手では僕のいい稽古相手になってくれるようになりました」 「おかげでますます強くなったじょ」 悠理はVサイン。 「再婚しようにも、相手に困りますよね”自分より強い相手”を探すとなると」 清四郎はニヤリ。 「でも、まだ人に教えるほどではないですよ。手加減も知らないし。魅録が気の毒です。当分は僕相手で我慢することですな」 「おまえ、相手してくれるほど家にいないじゃないかー!」 「だから、早朝稽古は付き合ってやってるでしょ」 「朝は弱いんだって〜!」 そのまま延々エンドレスで言い争っていそうなふたりから目を逸らし。 可憐は大きくため息をついた。 「・・・び、びっくりした・・・てっきり、セックスの話かと思ったわよ」 その言葉に、野梨子が正座でぴょんと飛び上がる。 「ま、まぁ、可憐!はしたないですわよ!」 「あんただってそう思ったくせに、野梨子。まぁ、冷静に考えてみれば、いくらこいつらでも離婚したんだから、朝晩セックスするわけないわよねー」 あはは、と笑う可憐に、元夫婦は真っ赤に赤面した。 「え?し、しちゃダメなのか?フツーしないの?!」 悠理のその言葉に、ふたたび凝固する三人。 清四郎も赤面したまま、悠理に拳骨をぶつけた。 「・・・バカ」 その日の夜。 野梨子は夕食を、と友人たちを引き止めたが、皆は謝辞した。 可憐は新婚の夫に夕食を作るために急ぎ帰った。 清四郎と悠理は、久しぶりにここまで来たので清四郎の実家に顔を出す、と揃って玄関を出た。 肩を並べて隣家に向かう二つの影を見送り。 魅録はため息をついた。 「あいつら・・・離婚したって、なにがこれまでと違うんだ?」 野梨子は首を振る。 「呆れますわね。結婚しても離婚しても、あまりに昔と変わってませんでしょう」 「変わったらしいぜ。”脱いだらスゴイ”らしい」 「ま、魅録ってば」 野梨子はわずかに頬を染める。 まるで、子供のじゃれあいのままの幼なじみたちの姿は、それでも野梨子を安堵させた。 大人になり、自分達が失っていったはずのものだから。 (でも、あいつらHはしてるんだよな・・・) いまだ清い中の二人は、ちらりと視線を交わした。 頬を染め、コホンと野梨子は咳をつく。 「来年の私たちのお式の際には、招待状の宛名がまた変わっているかも知れませんわね」 予言じみた野梨子の言葉は――――やはり、真実となった。 しかしそれは、彼らの復縁の、最初の一度に過ぎなかったのだ。 タイトルは百恵ちゃんの歌。part1もあったんですね。知らなかったわ。(笑) 小説置場TOP |