嬉しいバレンタイン

BY ちなな様

 

 「気持ちは嬉しいのですが、頂くわけにはいきません」

今日何度目のセリフだろう。

 

毎年のように繰り返されるチョコレートの贈り物。

想いを寄せられて嬉しくないわけではない。

しかし、その想いに応えることができない僕は、想いのこもったチョコを受け取

らないようにしている。

 

知らない間に入っている分は、部室のおやつに提供している。(ほとんどが悠理

の胃袋に納まるのだが…)

毎年受け取り口にするチョコは、友人や家族など特別な気持ちの込められてない

…いわゆる義理チョコだけだ。

 

 

 

昼休みになり、うんざりするやり取りを繰り返し部室へと行くと、もう悠理がいた。

 

僕達に気付くと何か慌てて隠したようだったが、最初に部室に入った僕には紺色

の小さな包みが見えた。

 

(チョコレートか?)

悠理が貰ったチョコかとも思った。

でも、悠理の貰ったであろうチョコは、ソファーの上に山積みされている。

小さな包みを見つめていた悠理の切ない顔も、今までに見たことがない表情だった。

 

 

(悠理が…誰かのために準備した…?)

なぜだか急に胸が締め付けられた。

 

 

食事を終え、美童が部室から出て行き、可憐と野梨子もキッチンへと立っていった。

 

魅録も女生徒に呼ばれ部室のドアへと向かう。

テーブルには僕と悠理だけだ。

 

(今しかない)

悠理にさっきの箱のことを確かめたかった。

言葉を選んで声をかけようとした時…

 

「清四郎、お前に用があるって」

ドアの方から魅録の声がする。

仕方なく立ち上がり、呼ばれた方へと向かった。

 

女生徒に今日何度目かのセリフを告げテーブルに戻ったが、悠理のことが気になって仕方なかった。

どうしてこんなにも気になるのか…わからなかったが…

 

 

昼休みが終わり、自分の教室へと戻った。

次の授業の準備をしようと鞄を開けると…

 

カサッ

 

さっき悠理の手にあったものと、同じ包みの小さな箱が入っていた。

慌てて鞄に突っ込んだようで、白いリボンが曲がってしまっている。

カードの類も添えられていないようだ。

 

さっきの授業の後には入っていなかった。

昼休みには部室に持っていった。

その間に…

こんな乱暴な入れかたをするのは、一人しか知らない。

 

清四郎の頬が緩んだ。

(どうやら…嬉しいようです…ね)

 

すぐに悠理のところへ行って礼が言いたかった。

しかし、名前も書けずに鞄に入れた悠理の気持ちを考える。

はたして今の僕に、悠理の真剣な気持ちを受け止めることができるのか…

 

(バレンタインの返事はホワイトデーに…ですね)

自分の気持ちを確認してからでも遅くない。

はやる気持ちをグッとこらえる。

 

今まで悪しき風習だと思っていたこの風習。

今年はなんだか待ち遠しい。

 

 

 

 


White Dayに続く


 皆さんの作品を見て激しく興奮した私…

遠い昔の学生時代を思い出し…清悠で妄想してみました。

そのまま勢いに任せてフロ様にポチッと妄想をメールしてしまい…。

(翌日、事の重大さに気付いて冷汗が…)

なにがし文章力のない作ですが、初めて…ということでお許しください。

 

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