パパ

 

「またこんなところで寝てる。」
僕が部屋に戻ってくると、悠理はソファの上でうたた寝をしていた。
読みかけの雑誌がソファの下に落ちている。

悠理は絶対に否定するのだが、いつもこうやって僕の帰りを待っている。
遅くなるからちゃんとベッドで先に寝ていてくれて構わないのに。
だけど、うれしい事には変わりない。

悠理の傍には僕達の子供がひっついている。
こいつもこういう時はかわいいんだが。
・・・それにしても。
なんでこんなところにいるんだ。
例え子供といえども、その場所を譲る気は無いぞ。
お前にはちゃんと自分のベッドがあるだろう。
そこで寝なさい。
「ソファから落ちそうになってますよ。」
お前は昼間散々悠理をひとり占めにしているだろう。
これからは大人の時間だ。
とりあえずコイツをちゃんとベッドで寝かさなければ。
軽々と抱いて隣の子供部屋のベッドへ運ぶ。
様子がわかるように扉は閉めないでおいた。

「ン?」
今なにか悪寒が走ったような気がする、風邪か?
まぁいい。
子供部屋から戻ると悠理の眠るソファに腰かけた。
暫くその姿に見惚れた後、つい頬に触れてしまった。
うとうとしていただけだったのかあっさり目が覚めた。
「あ、清四郎。お帰り」
にっこり笑う悠理に「ただいま」とこちらも笑顔で返す。
悠理のこの笑顔を見るとどんなに疲れていても、1秒で笑顔になれる。

「今ここにアイツいなかったか?」
伊達に母親をやっているわけではないらしい。
アイツがここで寝ていたことに気付いていたのか。
「ベッドに連れて行きましたよ。」
二人してアイツのベッドに視線を送る。
なんだか妙な目つきでこちらを見ているな。
「最近アイツの目つき悪くないですか?」
「そうか?」
―――僕に対してだけですか。
ここは一つあいつに夫と子供の違いを教えておかなければ。
「悠理。」
悠理の顔を見つめる。
どちらからともなく顔が近づいて。

ふん。今はまだ子供だから許しますけどね。
悠理を渡すつもりはありませんよ。

rival

素材:ぷちっち