秋の味覚
BY お馬鹿シスターズ
〜九里よりうまい十三里♪編〜
「ははっ!うっまそ〜〜〜!」 悠理が歓声を上げた。
ここは聖プレジデント学園の校庭。 今年も有閑倶楽部主宰のヤキイモ大会が盛大に開かれていた。
「ささ、嬢ちゃん、、坊ちゃん、どんどん食べてくださいね」 「あっしらが今こうして暮らしていけるのも、皆さんのおかげですからねぇ」 「そーそ、嬢ちゃん達には感謝してもし足りませんよ。さぁ、どうぞどうぞ」
大量の芋をどんどんと焼き上げているのは、かつて身代金目的に悠理を誘拐した3人組、司、誉、千福である。 学校の芋畑の提供を受けてヤキイモの屋台を始めた3人だったが、司の堅実な商売ぶりと元板前である誉の絶妙な芋の焼き加減が評判を呼び、近々創作芋料理の店を開く運びになったという。
「ヤキイモって、おいしいよね〜。僕、日本に来て始めて食べた時さ、感動したもん」 「女としては、これをバクバク食べるのは気が退ける面もあるんだけど、今日は特別よね〜」 「可憐、サツマイモにはビタミンCが豊富に含まれておりますのよ。美容にいいですわ」 「そーね、野梨子のフン詰まりにも効くし…」 「か、可憐!」
「いや〜、うまいな。これ」 「僕が開発した、特別な手法で仕込みましたからね。その辺のとは一味違いますよ」
美童、可憐、野梨子の会話を聞きながら、清四郎と魅録は手ずから仕込んだ芋焼酎に舌鼓を打っていた。 普段はお堅い学園も、この日ばかりは無礼講である。(←そんなわけはない)
「あれ?悠理は」 可憐の声に、皆は首を回して悠理の姿を探した。
悠理は、誉が焼いている芋の「焼きたて、アツアツ」をいただこうと、石焼鍋の前に陣取っていた。 たった今、誉が鍋から取り出した芋に向かって手を伸ばしている。 「いっただき〜〜〜!わわっ、熱っ、熱っ!」
焼きたての芋を手の中で転がしながら、嬉しそうに笑う悠理を、清四郎はいとおしげに目を細めて見つめた。 彼の2.0の視力は恋人の仕草をはっきりと捉える。
悠理は彼女が選んだにしては、若干細めのヤキイモを両手で掴み、先端部分の皮をそっとむいた。 はむっ、かわいらしい唇が、根元までを一気に含む。
…既視感(デ・ジャヴ)。
既に5合は手製の芋焼酎を空けていた清四郎の脳内で、昨夜の光景が、走馬灯のように駆け抜けた。 ああ、悠理。 そんなに一気に根元まで含んだら……
ごくん。 清四郎はツバを飲み込むと持っていた一升瓶と盃を放り投げ、一直線に悠理へと駆け寄っていった。
「悠理!」 「あ、せーしろー。うまいぞ、これ♪」 「そんなもの!悠理にはもっとおいしい”芋”を食べさせてあげます!」 「え?もっとおいしい奴?」 「そうです。さぁ!」
清四郎は悠理を小脇に抱えると、生徒会室へと向かって走り出した。 目くるめく、愛の味覚の世界へと。
「なんだぁ、清四郎の奴。また、悠理抱えて…」 「ほんと。また悠理がお腹でも壊したのかしら?」 「それにしては、もぞもぞとした変な走り方ですわね。魅録?あら?どうしましたの?魅録?」
清四郎の投げた一升瓶と盃の直撃を受け、ひっくり返っている哀れな魅録であった。
ちゃんちゃん♪・・・お次は
栗に戻るかね?

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