秋の味覚

BY お馬鹿シスターズ

 

 

〜松茸編〜

 

 

「うちの山から今年も松茸が取れたんだ♪今夜食べに来いよ!」


庶民には夢のまた夢、秋の味覚の王者松茸(それも国産品)であるが、聖プレジデント学園の生徒達にはさしてめずらしいものではない。
が、松茸を山をごと所有している剣菱悠理は、さすがにスケールが違う。


「いいですわね」
「松茸かぁ。僕は土瓶蒸が好きだな」
「松茸ご飯でしょ、やっぱり」
「なに言ってんだい!焼いて丸ごと食う!あの食感がたまんないよなー!」
悠理はすでに舌なめずり。


「悠理はあれがなかなか手に入らない貴重な物だって、わかっていないんですよ」
「わかってるよぉ。香りマツタケ、味シメジ、だろ?あたいシメジも好きだ♪」
「パック100円のシメジと一緒にされればマツタケも甲斐がないわよぉ」
「じゃあ、今日はありがたがってよーく味わうさ。でもゆーっくり舐りながら食べるもんでもないだろ?」
「そりゃそうだけど、さすがに悠理くらいよね。見事な国産松茸を一本丸ごと頭からバクバク齧っちゃうのは」
まさに”庶民の敵”なその様を思い浮かべて、庶民ならぬお嬢お坊ぞろいの仲間達は微笑を浮かべた。

ひとり、魅録を除いて。

「あれ?どうしたんだ、魅録?」
悠理に問われ、魅録はびくりと身を震わせた。
「お、俺はいーわ。松茸は!」
魅録の顔は蒼ざめている。
「あれ?魅録、松茸苦手だったっけ?旨いよ〜、うちのは特に!」
「”
悠理の好物のマツタケ”なんざ、いらねーよ!」

シン―――。

叫んだ魅録の言葉に、一瞬、部室内が静まり返った。

魅録はそそくさと立ち上がる。
じゃ、と手を上げたピンクの頭に巻かれた包帯の白さが目に痛い。
腫れ上がった頬に大きなバンソコウを貼った魅録の片目は眼帯。
昨日の今日、まだ彼の傷は癒えてはいなかった。

美童はゲンナリ顔をゆがめる。可憐は頬を染め、眉を顰めた。
食欲減退もあからさまな二人が注視したのは、清四郎の体の一部。

「そこ、
卑猥な想像るんじゃない!」

ぶしつけな視線に、清四郎の怒声が飛んだ。
やっと意味の判った悠理が遅ればせながら赤面。

「卑猥・・・?なにがですの?」
もちろん、野梨子だけは判らなかった。

 

深く傷ついた魅録のPTSDも。
松茸の、形状も。




 

 

お次は♪

 

秋刀魚v

 

 

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