ＢＹ お馬鹿シスターズ
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〜聖夜の晩餐をきらめく夜景とともに〜 極上の材料から生まれるひと皿を、大切な方と美しい夜景と共にお楽しみ下さい。
悠理が見ていた雑誌を拾い上げた清四郎は、やれやれと溜息をもらした。 といっても、それは決して困ったような、うんざりしたようなものではない。 むしろ、“彼女らしい”と微笑ましく思う気持ちが込められ、吐き出す息に小さな笑いが混じるような幸福な溜息だった。
恋人となって、二人きりで過ごすはじめてのクリスマス。 先日から、イブの予定を二人で諸々相談してはいた。 だが、清四郎は、悠理の機嫌を若干損ねてしまう。 ブッシュドノエルもクリスマスキャンドルも、妙な方向へ行ってしまったからだ。
しかし、まだ二人きりの夜がキャンセルされたわけではない。 清四郎は気を取り直して、イブの夜が二人の美しい思い出となるよう、悠理の部屋で再度プランをねり直していた。
またまた床に散らばる数冊の雑誌。 広げてあるページは、もちろんすべてクリスマス特集だ。
が、その内容は、美しいオーナメントを探すページでもなければ、恋人へのプレゼントを探すページでもなく、かと言って二人きりで過ごすゴージャンスなホテルを探すページでもなかった。
「クリスマスディナー特集」
やはりと言おうか何と言おうか。 悠理にとって第一の関心は、本人曰く「恋人と楽しむおいしい食事」らしい。 まあ、頭に“恋人と楽しむ”がつくだけでも、山猿悠理にしてみればかなりの進歩なのだから、自称普通の彼氏清四郎としては御の字であった。もう少し別の方向にも関心を、と思わないではないが、そこは惚れた弱みと先日二度に渡って無理矢理己の欲望に付き合わせた後ろめたさに免じて追求しないことにする。
清四郎は拾い上げた雑誌を見て、イブにオーダーするクリスマスメニューを考え始めた。 滞在するホテルは、剣菱系列のエグゼクティブスウィート、と決めてあるので、レストランを予約する必要はない。悠理とともに気に入った料理をチョイスして、シェフにリクエストをするつもりであった。
清四郎は、聖夜の晩餐と記された各レストランのメニューを小声で読み上げていく。 フォアグラとプラムのテリーヌ、ロブスターのスチーム、キジのオレンジ風味、 真鱈のロースト、前沢牛フィレ肉のソテー・アスパラガスとベビーオニオン添え 、冷たいシーフード、ジンジャーブレッドのパルフェ・・・・・
「フム、前沢牛のフィレ肉はいいですね。しかし、悠理には味もさることながら、ボリュームも必要ですよねぇ」 清四郎の言葉を聞きつけ、寝転がって雑誌を見ていた悠理が床を這いながら傍に寄ってきた。 四つん這いの状態で、胡坐をかいて座る清四郎の膝元の雑誌を覗き込む。
「あたい、座布団ステーキだけはいらないからな」 「ん？」 どうやら、フィレ肉、ボリュームと続けて聞いて、ラスベガスへと向かった船旅を思い出したらしい。それだけで気分が悪くなったのか眉間にシワを寄せている。
「あれはお前が大男並みの量をオーダーしたからでしょう？」 清四郎がデコをパチンを叩くと、悠理は叩かれた場所を両手で押さえて睨み返した。 「いてっ、何すんだよ」 「あんな無茶な食べ方はさせませんよ。その後のお楽しみだってあるんですから」 にやり、と笑うと「ほらほら、真面目に前菜から二人で選びましょう」と叩いた額にキスをした。
「そういうお前の顔、すっごいスケベ」 自分の顔は鏡がない限り見えないが、ま、相当にスケベな顔をしているのだろう、と清四郎は思った。事実“その後”の方が自分にとっては大切なのだから。
「ねぇねぇ、清四郎、これすっごく美味しそう」 美しく美味しそうな前菜が悠理の目に留まる。 清四郎が彼女の指さす所を見れば、シュリンプカクテルが載っていた。 カクテルグラスの淵に数個の海老が掛けられ、美しく盛り付けられている。 まさに、ロマンティックな聖夜にはピッタリな前菜。
「うまそう・・・・・」 悠理は四つん這いの姿勢のままシュリンプカクテルに釘付けになった。
・・・・・が。 清四郎がそんな彼女に目が釘付けになってしまったことには気づかない悠理である。
美しい海老反り。 清四郎にとって美味しそうなのは、写真の海老ではなく、達する時に美しく肢体を反らせる海老反り悠理。
バサッっと膝の上から雑誌を叩き落とすと、清四郎は悠理の腰を掴み脇に抱えた。そのまま担ぎ上げてポイっと目の前にあったベッドに放り投げると、ドアへ駆けて行き鍵をかける。
「せ、せいしろうちゃん？何すんの？」 それに答える前に、清四郎はさっさと服を脱ぎ始めた。 「ちょ、ちょっと待て！今はクリスマスのめしを選んでるんだろう！」 「そんなの後でいいです」 あれよ、あれよ、と言う間に清四郎は悠理を跨いだ状態で上半身裸。 うぎゃーーーーー！
清四郎の行動はいつだって性急だ。服を脱がせるまでは。 だけど、愛しむように頭や頬を撫でる指、唇・うなじ・鎖骨の窪み・胸の頂を這うあたたかい舌は、ゆっくりと悠理の体を溶かしていく。
舌と指。しなやかな二つの動きが聖域に達する頃には、悠理の体は痺れるような感覚に覆われていた。体中が、清四郎の動きに敏感に反応する。
「せいしろぉ、もう限界・・・」 ぎゅっと瞼を閉じて眉を寄せる悠理の腰が自然と浮き立つ。
「やっぱり、お前が一番美味しそうだ」 清四郎は、顔を上げて軽く唇にキスをすると、すでにぼーっとしている悠理の両足を�校�型に持ち上げた。
これまでの優しい動きに連動するかのごとく、少しづつ押し入るように挿入し、清四郎はゆっくりと快感を高めていく。 大きく波がうねるような律動。
悠理の体は猫のように柔軟で、清四郎の生み出すリズムに合わせて揺れている。 「・・・悠理、悠理」 耳元で囁きながら、追いつめて行くと、悠理の喘ぎ声が途切れ始めた。
「あっ、あっ・・・・せ、せいしろ・・・」 名を叫ぼうとする声が、途中で消える。 清四郎が、深く腰を突き入れたからだ。 悠理は、清四郎の肩に手をかけたまま、背中を大きく反らせた。
悠理の白く美しい首筋が露になる。 それは清四郎に狂おしいまでの愛しさを沸き立たせた。 一層膨張したそれを合図に、清四郎は動きを激しく変化させる。 「神よ、極上の材料から生まれる一皿をありがとうございます」 清四郎は、悠理が高い悲鳴と共に反り返った姿に微笑んでから果てた。
「むにゅにゅにゅ〜、お腹すいた〜ごはん〜・・・・・」 自分の寝言で目覚めた悠理は、現状を把握するのにたっぷり１分かかった。 背後からかかる清四郎の吐息。大きな腕の中にすっぽりと包まれた裸の自分。 まぎれもなく情交の後。 それはいいのだが、視線を少しばかり遠くへ走らせると床に散らばる雑誌が目に入った。
「あー、清四郎の阿呆！明日はイブだってのに今日もまた何にも決めてないじゃん！」 清四郎の方へ向きを変えながら、悠理はぶーたれた。 「は？決めましたよ。前菜はシュリンプカクテルでいいでしょう。悠理も気に入ってたじゃないですか」 気に入りはしたが、問題はそこではない。
「そりゃ気に入ってたけどさー。その後いきなりエッチでそれ以上何にも決めてないじゃん。だいたいお前のエッチは何でいっつも唐突なんだよ」 「唐突・・・でもないんですけどね。物事には必ず原因とそれに伴う結果という物があるんですよ」 「はぁ？」 「それは、セックスでも同じです。今のこの状況も、そそられ、煽られるような原因があっての結果」
理屈でまとめようとするが、こいつの行動は時に悠理に理解不能だ。 髪を梳いてくれる優しい手の動きにまどろみそうになりながら悠理は聞いてみた。 「じゃ、この原因は何だってんだよ？」 「シュリンプ」 「はい？」 「海老反り悠理が見たいなーと。四つん這いも魅力的でしたから、バックスタイルもやってみたかったですけど」
バキッっと振り下ろされた拳は、見事清四郎の手の平でブロックされた。 「まぁまぁ。その内僕の海老反りも見せてあげますから」 「はぃぃい？」 「金の鯱と言ってね・・・・・むにょむにょむにょ・・・・」
股間に入れられた足蹴りをかわせたかどうかは、神のみぞ知る。
聖夜に万歳。
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